12月15日(土)10時から、“映画を語る”「活弁シネマ倶楽部」第5回が放送されました。 本番組は、“映画を語る”楽しさを提供し、映画業界を新たな側面から盛り上げていこう!という若手制作の番組。 今回取り上げた作品は、塚本晋也監督が挑む初の時代劇『斬、』。 世界中に熱狂的なファンを持つ塚本晋也監督が、監督、出演、脚本、撮影、編集、製作を務めた完全オリジナル作品。池松壮亮、蒼井優ら豪華キャストが出演した本作は、江戸末期の時代を生きた一人の侍を通して、生と暴力を描いた衝撃作。塚本晋也監督は、『鉄男 THE BULLET MAN』(09)、『野火』(14)に続き、本作で三度目のヴェネチア国際映画祭コンペティション部門の出品を果たしています。 |
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番組冒頭、塚本監督は本作のアイディアについて話した。元々『斬、』のアイディア(「人間を一瞬にしてモノに変えてしまう刀という兵器を過剰に見つめる若い浪人の話」)は、24年近く前に雑誌のコラムで書いた内容で、時代劇はいつかやってみたいと思っていた映画だと語った。
また、『斬、』が製作に至る経緯について、自身が手がけた『野火』に絡めて振り返った。戦後70年が経ち、戦争の痛みを知る方がいなくなるにつれて、戦争に近づいていると感じた塚本監督は、その恐怖から『野火』の製作に踏み切ったと語った。そして、『野火』を多くの観客に見てもらい、世の中が好転したかと思えば、実は何も好転していないことに気づいたという。 冒頭の、ハンマーで鉄を叩く印象的なシーンにも言及した。このシーンについて塚本監督は『野火』のラストシーンとのつながりを意識したとして、 塚本監督:(『野火』の)たくさんある兵器が、時間を逆行して、(『斬、』の)1本の刀にキューッとシンプルになる」と過去作との関連を明言した。世界中にいる塚本晋也ファンは、この言葉を聞いて、さぞ腑に落ちたのではないだろうか。加えて、塚本監督は刀について「人間と鉄は、最初に知り合った瞬間から恋愛関係が始まっていると思う。鉄が変形していくのが技術の進化でもありますから、みんなそのことに関しては一番興味がある。一番原型的な道具であり、暴力のシンボル。 と表現した。これも過去作の『鉄男』との関連性を感じさせるものであった。 MCの森さんは、『斬、』を 森さん:世界を覆っている現代の暴力の縮図であり、普遍的な暴力の法則を最もミニマムな形で描いている。 と評し、それに対して 時代考証をしたという。時代考証をすればするほど、 塚本監督:その時代(江戸末期)と今が似ていることにますます気付いた。ミニマムな農村の中だけで行なわれるような話に、縮図のようにしたかった。 と語った。 本作において、塚本監督は監督でありながら、俳優としても出演している。 塚本監督:本当ですね。教えてください。 と森さんの正確な分析に驚いたようだった。 さらに、番組終盤では、 塚本さん:すごい深い。こういう番組なんですね。最初少し油断してました。こんなに掘り下げていただいて、いつも森さんにお話していただく時、自分で気が付かなかったり、忘れちゃったりとかしたところを、もう一回ギュッと掘り起こしてもらったりとか、気づかせていただいて。 と嬉しく思うと興奮気味であった。 『斬、』 公式サイト: 太平の世が揺らぎはじめた幕末。人を斬ることに苦悩する一人の侍。生と暴力の本質を問う。 |
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「活弁シネマ倶楽部」とは、
様々な切り口で、様々な人が“映画を語る”ことで、映画の新たな楽しさを発信するトーク番組。番組タイトルにもなっている「活動弁士」は、映画の上映中、映画を自由闊達に語り、表現し、解説をすることを生業とする人たちである。本番組では、活動弁士の精神をそのまま受け継ぎ、映画に関わる様々な人をゲストに迎え、制作陣の想いや映画の知られざる一面など、様々な角度から映画を掘り下げていく。 FRESH LIVE:こちら
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