映画情報どっとこむ ralph 『いつだってやめられる 10 人の怒れる教授たち』のシドニー・シビリア監督来日を記念し、インタビュアーに荻上チキさんを 迎えスペシャルトーク付き試写会が行われました。

「これはある意味、アベンジャーズだ!」 荻上チキと注目のイタリア人監督が読み解く “才能の無駄遣い問題”を描く痛快コメディとは!

開催スペシャルトーク付き試写会
日程:4月26日(木)
会場:日比谷図書文化館
登壇:シドニー・シビリア監督、 荻上チキ評論家/TBS ラジオ「荻上チキ Session-22」パーソナリティ

映画情報どっとこむ ralph 観客の前に大きな拍手で迎えられると、

シドニー・シビリア監督:ありがとう!こんなにたくさんの方にお集まりいただいてとても嬉しいです。

荻上チキさん:一緒に監督の話、映画を堪能できればと思います。

との挨拶でトークが開始。

まず

荻上さん:本作は、全 3 作品のシリーズの中の第 2 作目となるのですが、欧州危機の 影響で研究者としての職にありつけなかった天才学者たちが社会に増え続ける麻薬の撲滅チームを作るという、ある意味彼らの知識が無駄遣いされているとても痛快なコメディとなっています。普段どのように映画の着想を得ているのか、また、ポスドク問題(=研究者が博士号を 取得したのに、正規の職に就けない事態)に着目したのはどんなタイミングだったのでしょう か?

という問いに対し、

シビリア監督:映画の企画を構成していた当時、ローマ大学のそばに 住んでいて、大学の研究費の多くが削減されることがマスコミに大きく報道されたんです。それを 受けて研究員たちがデモを繰り広げていました。今でもそれは実を結んでいないのですが、最高 の頭脳が収入としては最底辺にあるというパラドックスが、ある種のコメディを語るのに最適な素材なのではないかなと考えたのがそもそ もの出発でした。

と作品を作る経緯を語ってくれました。

さらに

荻上さん:日本でも大ヒットした『ハングオーバー!』シリーズもそうですが、大きなことをやらかし てしまうギャップ、しかしそこから謎を解いていくというスリリングさ、その両方がこの作品に詰められていると思います。しかしとってもシリアスな問題とコメディを結びつける手法、その二つの要 因は監督の中でどのように接点を持ったのでしょうか?

シビリア監督:コメディは出発点が悲惨であればあるほど面白いんですよね。これはイタ リアの映画界伝統の手法でもあって、イタリアの良質なコメディは第 2 次世界大戦後に 次々と生まれています。その時の世の中がどうだったかというと、圧倒的な貧困があった。 そこにコメディが生まれたというのがイタリア映画の強みでもあります。その系譜に連なるよ うな映画なのかなと思います。過酷な状況や悲惨な現状を笑いに変える、それがイタリア のコメディの本質だと思います。

映画情報どっとこむ ralph 荻上さん:第 1 作目『いつだってやめられる 7 人の危ない教授たち』がイタリアをはじめ世界中でスマッシュヒットしたわけですが、その感想と本 作をつくるプレッシャーはいかがでしたでしょうか?

シビリア監督:実は 1 作目が出る前までは、僕は監督として全くの無名で広告のフィルムや短編を作っていました。予算を含め、規模の小 さい映画がここまで大きな反響を得ることは全く予想していませんでした。しかもイタリアだけでなく、海外でも反響を得たことで色々なプロデュ ーサーから次回作のオファーを受けるわけです。そこで続編を作ってくれないかと言われたのですが、イタリア人の監督にとっては手を出したくな いところがあるんです。というのも、コメディでも作家性や、芸術性の高い映画が主流なんです。でも続編ができるメジャーな映画は小さいアイ ディアを膨らませてできる映画というようなイメージがあったので、続編ではなくあえて 3 部作にしたいとプロデューサーに言いました。絶対こんなの受けてくれないだろうなと思っていたら、GOサインがでたのでやむを得ず撮ることになりました!(笑)1作目の続きを見せるのでは なくて、“1 作目で語られていたのはある視点でしかない”というような、一歩引いてみるとまた別の視点で同じものが見えてくるという手 法が面白いと思っていました。

荻上さん:ある意味アベンジャーズだなと思いました。1 作目、2 作目で別の ヒーローが加わってきて、それぞれの才能を生かして悪と立ち向かっていくという王道な物語があるけれど、インテリジェンスと貧困というある種のギャップ が悲哀なユーモアに変えていますね。映画の中に様々な社会現象が出てき ますが、映画を作るにあたって情報収集はどのようにしていましたか?

シビリア監督:専門的なテーマを選んだということでリサーチは欠かせなかったのですが、研究者に合って話を聞いても彼らの話がちんぷんかんぷんでした。一 番大変だったのがラテン語でした。今は使われていないラテン語を母国語のように俳優に話させる必要があり、俳優を“3 週間通えばラテン語が話せるようになる!”と宣伝文句が掲げられていたローマ郊外のラテン語学校に送り込みました(笑)

映画情報どっとこむ ralph 最後に・・・

シビリア監督:メッセージは映画の中に込めました。映画こそが僕からのメッセージです!

とこれから観る日本の観客に向けてコメントし、トークを締めくくった。

『いつだってやめられる 10 人の怒れる教授たち』

5 月 26 日(土)、Bunkamura ル・シネマ他全国ロードショー

http://www.synca.jp/itsudatte/

大学を追われた神経生物学者のピエトロ・ズィンニ(エドアルド・レオ)は、仲間と合法ドラッグ製造でひと儲けを企むも逮捕され服役していた。世間では新しいドラッグが蔓延 し、摘発に手を焼いていたパオラ・コレッティ警部(グレタ・スカラーノ)は犯罪履歴の帳消しと引き換えに彼に捜査の協力を持ちかける。かくしてピエトロは国内外ばらばらに なった研究者仲間を再び結集し、事件解決のため奔走するが―。

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監督・原案・脚本:シドニー・シビリア
出演:エドアルド・レオ(『おとなの事情』)、ルイジ・ロ・カーショ(『夜よ、こんにちは』、『人間の値打ち』)、ステファノ・フレージ、グレタ・スカラーノ、ヴァレリア・ソラリーノ
原題:Smetto quando voglio-Masterclass
/2017 年/イタリア/イタリア語/119分/シネスコ/カラー/字幕翻訳:山田香苗
配給:シンカ
提供:シンカ、樂舎、朝日新聞社
特別協力:イタリア文化会館
©2017 groenlandia srl /fandango srl

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