2月1日(金)21:00から、“映画を語る”番組「活弁シネマ倶楽部」第10回が放送され、ゲストに『飢えたライオン』の緒方貴臣監督が登場した。MCには映画評論家の森直人さんが登場し、トークを盛り上げた。
『飢えたライオン』は一人の少女がフェイクニュースやネットの噂によって追い込まれていく姿を映し出す、現代のデジタル社会における集団心理をあぶり出したような作品だ。予告映画の特報では“この映画が不快なのは、社会の剥き出しの“悪”が描かれているからではない。その“悪”があなたの中にも見つかるからだ“と訴えかけられている。 『飢えたライオン」に移る際にこれを踏まえて、近年のメディアの在り方への問題提起として、 緒方監督:報道の仕方とかを批判する単純なものじゃなくて、自分自身へも突きつけるような、自己批判的なところも含めた映画にしたいと思った。 とコメントし、映画を作っている自分も間違った情報を拡散してしまう立場になりかねないという想いを明かした。 |
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また、映画の内容へとトークが展開され、松林うらら演じる主人公について、あらすじではポルノ動画の当事者ではなく、嘘の情報によって苦しめられた被害者として描かれているが、“その動画には最後までモザイクがかかっており、実際のところはわからないようにしている”と話した。また、“主人公が当事者であるという噂を流した犯人も最後まで誰なのかわからないが、登場人物にはそれぞれに犯人足り得る要素をもたせている”と明かして、MCの森さんに「この隙のなさ」と感嘆させた。これらの仕掛けによって、映画を見る人でさえ嘘の情報と本当の情報の区別がつかなくなり、真実を見分けることの難しさを感じさせる。こういった“ネタバレ”ありきのトーク展開は、公開後ならではの貴重なものである。 森さん:それだけ緻密に考えておきながら、緒方さんのやり方って理に落ちたように見えない。解釈の余地を常に残しながら緻密に編んでいくやり方なのかな。 と問われると、 緒方監督:そこは結構、重要なところで、こういう特に社会問題を描いているみたいな感じの作品になると、作者・作り手の感情なり考え方を全面的に押し出してる作品って正直言うと押し付けがましいなって僕は思うんです。自由な解釈の余地がないと僕は楽しめない。 と自論を展開した。 番組内では、緒方監督の驚きの経歴にも焦点が当てられた。緒方監督は映画を撮る度に前作の影響を受けて成長していると語り、その背景には自身が映画学校を3ヶ月で辞めた、というエピソードがある。 と話すと MCの森氏も思わず「天才じゃないですか!」と反応する一幕でスタジオを沸かせた。 本番組は、“映画を語る”楽しさを提供し、映画業界を新たな側面から盛り上げていくことをテーマに、映画作品に携わる様々な方がざっくばらんに喋り倒すものであり、制作の裏側や作り手のこだわりについてほぼノーカットでトーク展開されている。 ■活弁シネマ倶楽部■ 「活弁シネマ倶楽部」公式ツイッター: |
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『飢えたライオン』
http://hungrylion.paranoidkitchen.com/ 出演者 監督・脚本 :緒方貴臣 イントロダクション |
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緒方貴臣 監督プロフィール
1981年福岡市生まれ。2009年より独学で映画制作を始め、初監督作品『終わらない青』(11年)が沖縄映像祭で準グランプリを受賞し、劇場公開される。続く『体温』(13年)では、2年連続でゆうばり国際映画祭コンペ部門に選出され、国内外7つの映画祭で正式招待。 前作『子宮に沈める』(13年)は、大阪2児放置死事件を基に制作され、児童虐待のない社会を目指す「オレンジリボン運動」の推薦映画となり、厚生労働省の定める「児童虐待防止推進月間」である11月に劇場公開。社会問題を独自の視点と洞察力で鋭く切り取り、作品を通して世の中への問題提起を続けている。本作『飢えたライオン』で4作目となる。現在、次回作を準備中。 |