3月5日公開の『幸せをつかむ歌』。 メリル・ストリープがロックミュージシャン役として生歌を披露し、実娘と親子役で共演することも話題の本作公開を記念して、ミュージシャンでもあり俳優としても活躍する世良公則さんが登壇するトークイベント付き特別試写会が行われました。 すべての楽器を弾きこなす天才ロック・アーティストから見たメリルのギターの腕前や歌唱力、メリル・ストリープが演じたロックミュージシャンの演技を超えた自然さや、自身の演技論などについて熱く語りました! 世良公則『幸せをつかむ歌』公開直前イベント |
|
アメリカン・エキスプレス・カード主催の会員限定の会として実施されたこのトークショーに登場したのは、自身が関わった作品を除き、トークショーのような機会で本格的に人前で話をするのは今回が初めてだという世良公則さん。初めての機会にも関わらず、観客を気遣い笑いも取りながら和やかにトークショーはスタート。
メリル・ストリープがロックミュージシャンを演じ、実際に歌っていることについて、 世良さん:我々がミュージシャンのような役柄を演じようとするとどうしても硬くなって、それを演じようとしてしまうけど、メリルはまるで息を吸って吐くようにプレイしていることが伝わってくる。それに驚きました。普通にミュージシャンのPVなどを観ているように、自然なものとして伝わってきましたね。 とメリルのそのナチュラルさを賞賛。さらに、 世良さん:キャロル・キングやノラ・ジョーンズといった女性ミュージシャンと比べても全く遜色ないぐらいにギターを弾いて、ステップを踏み、芝居に見えない自然さがあってさすが大女優です。そのいでたちから“私がやってるから、さあ撮りなさい”というものを感じる。どの瞬間を捉えてもそこにリッキーという人間がいて、どんな角度からでも、どの場面を切り取ったり編集したりしても、“どこを使ってもらっても結構よ”というような… 演じているんじゃなくて、彼女自身楽しんでいるからじゃないかと思います。 |
|
世良さん自身の俳優としての役作りや流儀について話が及ぶと、
世良さん:もともと僕はミュージシャンだから、演じる時は、俳優の席をひとつ取ってしまっていることに対して責任を取るという考え方でやっています。事前に、台本に書かれていないバックボーンまで徹底的に考えて、その人として現場に立つ。掘り下げて掘り下げて、それを現場で放つんです。 「下町ロケット」での役作りに話が及ぶと、 世良さん:絶えず左の指をこするように動かすようにしていました。利き腕じゃない方の感覚を常に磨いておくというキャラクター造形を僕なりに考えてのことだったんですが、撮影の終わり頃に、医療指導をしてくれた本職の外科の先生が、“あれは我々もやってるんです”と言ってくれて。あながち僕のアプローチも間違いじゃなかったんだなと、自分を褒めてあげました(笑)芝居をやっていて怖いのは、本職の人が見てあざとく思われることなんです。 そんなミュージシャンの本職として見ても、メリルが演じたリッキーは自然だと。続けて、リッキーたちが繰り広げる人間ドラマについて、 世良さん:リッキーと(バンドメンバーの)グレッグがステージ上で見せる心の葛藤、ふたりがお互いの表情をくみ取って心が揺れる感じが、リッキーの演奏にちゃんと反映されているんです。感情がプレイや歌声に反映されている。我々だってずっと同じ感情で演奏している訳じゃなくて、その瞬間瞬間が反映されている。リッキーのプレイを見てて、“あ、拗ねてるな”とか“心が揺れてるな”とか、演奏自体にすごく感情移入できて、こなれているというのはこういうことなんだなと思いました。 続けて、 世良さん:観客とのキャッチボール、あふれる音楽のエネルギー、メンバーや観客が皆でグルーヴしているところを監督が切り取っていって、まるで“台本なんてあるのかな?”とまで思えてくるし、スタッフたちも皆体を揺らしながら撮影してたんじゃないですかね? とグルーヴ感を手放しで賞賛する。男性目線で言うと、 世良さん:リック・スプリングフィールドが演じたグレッグが、ステージ上でリッキーを心配しているところ、目線、視線がすごく魅力的です。男性というと“男らしい”とか“かっこよさ”とか言うけど、優しさや包容力、人を支える力、そういうものを持つグレッグを観て、“ああ、かっこいいな・・・”と勉強になりました。
|
|
世良さんのロックとの出会いについては、
世良さん:ローリングストーンズがきっかけで13歳の時にロックに目覚めたけど、いまもその情熱は全く変わらないし、息を吸って吐くように自分の人生に向かい合ってきました。僕と同じようにロックを貫いているリッキーですが、彼女は革ジャンの使い方がキーポイントになっています。ロックミュージックと皮のジャケットが隣り合わせになっていて、どう使っているのか見てほしいです。 と語りつつ、自身は最近、そういったロックアイテムやアクセサリーには頼らなくなってきたという。 世良さん:以前はまだ未熟な自分を補うアイテムとして着けていたけど、僕の理想はありのままにステージにただ立っているだけなんです。ミュージシャンとして、しあわせを感じるのは、アイテムや肩書きに頼らない今の自分、ありのままを受け止めて、すべてのことにしあわせを感じている。感謝し、それが次の自分をつくる要素になっていて、60歳になった今が一番かもしれないですね。 |
|
最後に・・・
世良さん:母でもなくロックミュージシャンでもなく一人の女性と、その周りを描いているんです。その日常がすごくかっこよくて、それは本当にささいな日常なんだけど、どんな大作映画よりもシンプルにストレートに伝わってくる映画になっています。 と映画の見どころをメッセージとして伝えてくれた。 『幸せをつかむ歌』 3月5日(土)、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開 公式HP:http://www.shiawase-uta.jp/ 物語・・・ |
監督:ジョナサン・デミ
脚本・製作:ディアブロ・コディ
出演:メリル・ストリープ、ケビン・クライン、メイミー・ガマー、リック・スプリングフィールド セバスチャン・スタン
2015年/アメリカ/101分