「私の恋人は兄だ」衝撃的な告白から始まる映画

ナゴシノハラエ』。

今回、大原監督にインタビューさせていただき、『ナゴシノハラエ』についてから次回作構想までお聞きしましたのでご紹介します。

大原とき緒監督インタビュー

先ずはお知らせ!
監督の大原とき緒さんは精力的に上映&イベントを行っていて、今回は関西(大阪・兵庫)連続上映が決定しています。

大阪・シアターセブン共催★上映+トークショー
日時:2016年1月23日(土)19時上映開始(18時50分開場)
トークゲスト:濱口竜介(映画監督)、大原とき緒監督

兵庫・イベント上映 in 楽や~with 切り絵ライブ
日時:2016年1月24日(日)17時よりイベント開始
会場:昔ごはん と おやつの時間 楽や 神河店

それでは、インタビュー内容をどうぞ!

Q:「私の恋人は兄だ」という衝撃的な告白から始まるこの映画。女性目線での兄と妹の近親相姦を女性の目から映した作品ですが、タイトルの『ナゴシノハラエ』は、どういう意味ですか?

大原監督:「夏越の祓」からいただきました。夏越の祓は、神社などで六月の晦日に、茅草で作った輪っかを8の字にくぐったり、形代(かたしろ)という人型の和紙に息を吹きかけて、半年分のたまった穢れや罪をうつし身代わりにして、川に流すという神事です。

Q:衝撃的な題材を自身最初の長編にもってきた経緯をお聞かせいただけますか?

大原監督:衝撃的な題材を選んだというよりは、その時に描きたいと思っていた題材が兄妹の恋愛の話だったということになります。物心ついた頃から、本や漫画を読んでいて、疑問に思っていた、どうして近親相姦はいけないのか?ということを大人になって考えた時に、ひとつに子供の問題があるということなら、子供を産むことが出来ない他の恋愛はいけないのかなど、気になりました。同性愛とか、子供を産めなくなった人の恋愛はどうなのかとか。夢野久作さんの短編『瓶詰の地獄』を読んで、この小説は兄の視点(一部、妹のという説もありますが)で描かれていますが、この時、妹は本当はどういう気持ちだったのだろうということが気になりました。それで、妹の視線で描いた近親相姦を描こうと考えました。

Q:撮影の期間はどれくらいでしたか? また、ご苦労やエピソードなどがあればお教えください。

大原監督:撮影自体は、2010年の7月31日から9月18日までの土日をメインに行いました。風景や音撮り、アフレコなどは、その1年前や、二か月後位まで行っていました。
苦労と言えば、2010年の夏は猛暑で、朝から30℃を超すような日々でしたので、役者さんが倒れないか、日焼けしないかとかいうことが、心配でした。ヒロイン役を公募した際に、「色白で丈夫な人」と募集をかけたおかげで、市川翠役を演じてくれた薬袋いづみさんが、精神的にも肉体的にも、とてもタフな女優さんでしたので、助けられました。途中からは、私と役者さん達だけで撮影していたので、彼らは、とても大変だったと思います。

Q:人物や映像が重なりを重視しているように脚本がかかれていますが。

大原監督:冒頭の源氏物語の詩「見し人の形代ならば身に添へて 恋しき瀬々のなでものにせむ」(その人がなくなった恋人の身代わりになるのなら、手元に置いて慈しもう)の形代や身代わりがこの作品のテーマでもあるので、登場人物は皆、誰かの身代わりを演じたり、演じさせられたりしています。
意識的、無意識的に、人は誰かの身代わりを演じたり、人を身代わりにしながら生きているところもあるんじゃないかという想いで描きました。脚本段階でも意識していましたが、撮影現場でも、同じ名前や同じ魂(役割)を持つものは、仕草などを似せて演じてもらったりもしました。また、編集の時にも意識して、重なっていくように編集をしました。

Q:鏡や水に映し出されことに意味を持たせているのですか?

大原監督:『ナゴシノハラエ』は、川の映画であり、水の話でもあります。水は、その人の、主人公の翠(すい)の心を映す鏡でもあります。そのことを意識しました。それから、双子や同じ名前を持つ者たちが複数出てきますので、相手が自分自身でもあるし、分身、身代わりの存在を表すという意味でも、使っています。

Q:カメラワークが手持ちだったり固定だったりわりと大胆ですし、長回しが多い意図は?

大原監督:元々、ジャック・リヴェットや溝口健二監督が好きなこともあって、これまでの短編・中編も長回しが多いのです。『ナゴシノハラエ』は、最初、カットを割って撮ろうと考えていたのですが、リハーサルをしているうちに、割らずにいこうと決めました。
ラストまでは、瓶の中・狭い世界に閉じ込められた設定ですので、閉塞感のある撮り方をすることにこだわって撮りました。長回しや固定は、次に何が起こるかわからないところや、画面は動かなくても、外から不意に、声や物や人が入ってきたりするので、どきどきするというか、閉塞感があるようにも、画面の外に世界が開けているようにも創れるので、この作品にあっていると思うし、好きなんです。

Q:俳優さんたちの選び方で、今回、特に気を配ったところなどありますか?

大原監督:声、でしょうか。声のトーンや良さに気を配ったように思います。後は、その役として、その場に立っていてくれることを重視しました。
今回、舞台をメインにしている役者さんが多かったのですが、映画の舞台が、稽古場や劇場だったり、誰かが誰かの身代わりを演じている話なので、演技が舞台っぽいと言われても構わないと思って、選ばせていただきました。

Q:かなり、精力的に各地で上映を行っていますが、ご苦労などございますか?

大原監督:これまで上映させていただいた場所は、ほとんどの会場の方が作品の世界観を大事にしてくださって、一緒に上映しようと言ってくださった所でしたので、とても、協力していただけて助かりました。
苦労と言えば、作品も監督も無名なので、集客には苦労しました。宣伝費もほとんど無い中、2014年9月に1年間限定で集まってくれた8名の宣伝・応援チーム=チーム☆ナゴシのメンバーに、本当に助けられましたし、学ばせていただきました。アップリンクをはじめ、満席の上映が続いたのも、彼らのおかげだと思っています。2015年9月でチームは解散してしまったので、今は新たに助っ人を募集中です。
苦労ではないですが、ひとつの場所での上映が、他の場所に繋がっていっているのが、面白いし、ありがたいなあと思っています。

Q:次回作の構想などを話せる範囲でお願いいたします。

大原監督:女性が好きな所へ行って、見たいものを見て、好きなものを好きと言える世界を願って作品を創っているので、次回作も女性の心に寄り添うような作品が創れたらと、思っています。
次回は、閉じられた地域で、女性が親族が決めた以外の男性と恋に落ちたり、婚前交渉をしたりした場合、親族の男性が女性を殺すという「名誉の殺人」についての映画を撮りたいと考えています。撮ることや、言葉に出すことで「名誉の殺人」というものが、この時代に存在しているということをより多くの方に知っていただけたらと願っています。

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出演
ナゴシノハラエ市川 翠(スイ):薬袋(みない)いづみ(『さよなら渓谷』『水の声を聞く』)/市川 舜・淳:土山壮也/瑞穂・妹役B:神月叶/浜田 真:小口美緒/彗(スイ):大久保千晴/濱田 惇:横田創/市川 絢子:大原とき緒/毛利浩秋/劇中劇『ビンヅメノジゴク』キャスト:こもだまり(兄役)、野口有紀(妹役A)

スタッフ
監督/脚本:大原とき緒/Co-プロデューサー:土山壮也/衣裳アドバイザー:丸山恵美/ミキサー:大谷勝巳(有限会社プロフェッショナルクラフト)/テクニカルアドバイザー・機材協力:中村元洋/ロケ場所協力:神楽坂die-pratze/作品引用:『瓶詰の地獄』夢野久作 著/音楽:ezoshika label『Je te veux(あなたが欲しい)』エリック・サティ
英語字幕製作:KAZ YOKOYAMA&ROSH PERERA
予告編制作:花田まり子
制作:movies label will☆
  

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