『わたしの家』。
東京藝術大学大学院で黒沢清、諏訪敦彦両監督に師事した清原惟監督の劇場デビュー作となる本作は、同大学院修了作品として制作され、本年度 PFF アワードにて「グランプリ」を受賞致しました。 そして、2018 年 1 月 13 日から始まるユーロスペースでの公開を目前に、第 69 回ベルリン国際映画祭フォーラム部門への正式出品も決定しました。 この度、既存の予告編とは別に、劇場公開用に新たなテロップやコメントを入れ込んだ劇場公開用予告編が到着しました。 |
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併せて、映画・文学・音楽・テレビ業界など、各界からの絶賛コメントが多数到着!
一方が現実なら、もう一方はマボロシで、そっちが現在なら、あっちは過去だということになるのだが、いやひょ っとすると全員が幽霊!?… 一軒の日本家屋を舞台にして、目もくらむような物語の迷宮が展開される。まる でヨーロッパの前衛小説を読んでいるようだ。 1+1が2になるのではなく、互いに依存することも葛藤することもなく、ただ1と1としてあることで世界を開いて ゆく。その「開かれ」に風が吹き込むとき、ふたつの淡い物語の旋律はやがてひとつの響きとなって、世界をみ ずみずしく息づかせるのだ。 「わたしたちの家」は、言葉と映像と音の張り詰めた連鎖と交錯で、わたしたちを、どこでもないどこかへ連れ出 してくれる。 そのどこかは、この作品を見た人の数だけある気がする。でも、見ないとわからない。 この映画には、家には、二つが住んでいて、どちらが表でも裏でもなく、どちらが主でも副でもなく、映画の原理 と、人生の原理が住んでいて、私の映画、が見ることで生きていたので、私は映画、を見ながら暮らした。 女たちはこの家では何度でも出会うことができる。見えるものと見えないもの、そこにいる人といない人のあい だに、この映画は誘い出してくれる。これから出会うかかもしれないわたしたちに、その場所を開いてくれる。 清原惟監督は「それ」にかたちをあたえず映画にした。「それ」は「それ」としか言えないからこそ「それ」であり続 けることができる。名付けられる前の風景が『わたしたちの家』だ。 どのカットも凛々しく、何も起こらない奇跡を見ているよう。 音や衣服の不思議な色気。 舞台となるひとつの/ふたつの家の、無人の間にさす光と陰。 何かは起こっているのだけれど、それは見えない。 そこに誰もいないというのは、いったい、どういうことなのか。 そこに誰もいない、と誰かが思う時、そこに本当に誰もいないなんてことがありえるのか。 この家には部屋があり、窓があり、障子があり、境界がある。並行する2つの世界は1つの場所で共振してい く。複数の時間が流れながら、物語は2つの喪失からはじまる。創作に対する真摯な姿勢が作品から表れて います。 その薄氷を踏んでしまうことへの勇気と慎み。 私しかいない青春のおぞましさと他者への畏怖を込めた闇の描写、 その切り結びは一見の価値あり。 本当は怖いことに、初々しさと野心でもって触れている。 美しい映像と構成の妙はもちろん、どうやって思いついたの?と聞きたくなる数々のカット、どうやって撮った の!?と聞かずにはいられないカメラワーク。静かでささやかな革命が『わたしたちの家』では起きている。 地味そうで不思議・・・ どこにでも居そうでどこにもいない・・・ 不思議な可能性に満ちた普段着のスリラー 清々しい傑作。 一見して平凡な日常に穿たれた穴を少女たちはいとも簡単に発見し、 どこでもない場所へ軽々とすり抜けてゆく。 この少女たちがどこへ行くのか、まったく予想がつかない。 サスペンス映画の最良の伝統を想起させつつ、 (『レベッカ』、『セリーヌとジュリーは舟で行く』、 『マルホランド・ドライブ』等々……)、 よく見ればどれにも似ておらず、捕らわれていない。 この映画を見て、自分までとても身軽になった気がした。 |
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2018 年 1 月 13 日(土)より、 渋谷ユーロスペースほか全国順次公開! 第 39 回ぴあフィルムフェスティバル 「 PFF アワード 2017 」グランプリ受賞! 第 69 回ベルリン国際映画祭正式出 品作品 父親を失った少女と、記憶を失った女性の、 まったく別々の物語が、ひとつの「家」の中で交錯する セリはもうすぐ 14 歳。父親が失踪して以来、母親の桐子と二人暮らし。 最近、お母さんに新しい恋人ができて複雑な気持ちになっている。 さなは目覚めるとフェリーに乗っており、自分にかんする記憶がなくなっていた。 彼女は船内で出会った女性、透子の家に住まわせてもらうことになる。 二つのストーリーは独特な構造を持つ一軒の同じ「家」の中で進行する。 これはいったいどういうことなのか? |
出演:河西和香 安野由記子 大沢まりを 藤原芽生 菊沢将憲 古屋利雄 吉田明花音 北村海歩 平川玲奈 大石貴也 小田篤 律子 伏見陵 タカラマハヤ
脚本:清原惟 加藤法子
プロデューサー:池本凌太郎 佐野大
撮影:千田瞭太
照明:諸橋和希
美術:加藤瑶子
衣装:青木悠里
サウンドデザイン:伊藤泰信、三好悠介
編集:Kambaraliev Janybek
助監督:廣田耕平 山本英 川上知来
音楽:杉本佳一 配給:HEADZ
配給:HEADZ
宣伝:佐々木瑠郁 2017 年/80 分/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー/DCP
©東京藝術大学大学院映像研究科