映画情報どっとこむ ralph 近代建築の巨匠ル・コルビュジエと、彼が生涯で唯一才能を羨んだと言われる女性建築家アイリーン・グレイの間に隠された波乱万丈のストーリーを美しき映像で描く極上のドラマ『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』が、10/14(土)よりBunkamuraル・シネマ他にて全国順次公開。

このたび、アイリーン故郷であるアイルランドから、世界的なアイリーン・グレイ研究者である、アイルランド国立博物館キュレーターのジェニファー・ゴフさんが来日。今年がアイルランドと日本外交関係樹立60周年であることを記念し、アイルランド大使館のご招待を受けての来日となりました。そうして、ル・コルビュジエが手がけ、昨年世界遺産に登録された国立西洋美術館で、ジェニファーさんと建築史・建築批評家の五十嵐太郎さんを招いての特別トークショーを開催いたしました。

近代建築の巨匠ル・コルビュジエが手がけ、昨年世界遺産に登録された国立西洋美術館で豪華なトークショーと映画を楽しむために、会場では開場前から多くの人が列を作り、当日券はすぐに配布終了となったイベントです。

日時:9月29日(金)
会場:国立西洋美術館
登壇者:ジェニファー・ゴフ(アイルランド国立博物館キュレーター)
五十嵐太郎(東北大学教授/建築史・建築批評家)

ジェニファー・ゴフ Jeniffer Goff プロフィール
ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンで文化政策、芸術学の博士号を取得。国内で大学講師やギャラリーのキュレーターを務め、2007年よりアイルランド国立博物館のキュレーターとして活動。世界有数のアイリーン・グレイ研究の専門家であり、同館ではアイリーン・グレイのコレクションを担当している。2014年に出版された研究書「Eileen Grey Her Work and Her World」がアイルランドの権威ある文学賞アイリッシュ・ブック・アワードにノミネートされ、アイリーン以外にも、様々な芸術家の研究論文を発表している。

五十嵐太郎 プロフィール
1967 年、パリ生まれ。1990 年、東京大学工学部建築学科卒業。1992 年、東京大学大学院修士課程修了。博士(工学)。現在、東北大学大学院教授。あいちトリエンナーレ 2013 芸術監督、第 11 回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。第 64 回芸術選奨文部科学大臣新人賞。『被災地を歩きながら考えたこと』(みすず書房)、『窓へ 社会と文化を映しだすもの』(日刊建設通信新聞社)、『窓と建築の格言学』(フィルムアート社) ほか著書多数。

映画情報どっとこむ ralph 今年は日本とアイルランドの外交関係樹立60周年。

これを記念し、世界有数のアイリーン研究者でありアイルランド国立博物館のキュレーターでもあるジェニファー・ゴフさんが、アイルランド大使館の招待により初来日。本作の字幕監修を務めた建築史・建築批評家の五十嵐太郎さんと共に、トークショーに登壇しました。

ジェニファーさん:このような機会をいただけて非常に光栄です。でも、少し緊張しています。

五十嵐氏さん:アイリーン・グレイにはずっと興味を持っていましたが、今回この映画によって、彼女の作った“空間”への理解が深まりました。

と述べイベントはスタート。

アイリーンの故郷でもあるアイルランドからやって来たジェニファーさんは、アドバイザーとして本作に携わっていた。

ジェニファーさん:関わることとなった経緯としては、まず、監督であるメアリー・マクガキアンの誘いを受け、彼女に会いました。監督は、アイリーン・グレイとル・コルビュジエについて、(アイリーン・グレイが手掛けた建築で、南仏カップ・マルタンにあり、本作の舞台となる)<E.1027>について話を聞きたいと言いました。正直、初めは“事実を過度に脚色した、ハリウッドによくあるタイプの映画を作るのかな”と思ったんです。でも、話を聞いたら、彼女はすごく真摯にアイリーンのことを考えていました。既にたくさんの専門家に話を聞いて詳しく調査していて、“皆に議論してもらえるような映画を撮りたい”と語りました。彼女の強く訴えかける目を見て、“この人は本当に真剣なんだ!”と胸を打たれたんです。とはいっても、アイリーン・グレイの映画を撮りたいと言われただけで、すごく興味を持ってはいたんですけどね(笑)。

E.1027外観画像『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』より
映画情報どっとこむ ralph この話からは、本作が入念なリサーチに基づいて作られていたことも分かる。どこまで史実に忠実なのかという話になると、

ジェニファーさん:人間ドラマの部分に関しては、観客を彼らの物語に惹きこむためにフィクションを付与した箇所もありますが、基本的にかなり史実に基づいています。

と、ジェニファー氏は綿密な調査の積み重ねによって生まれた本作の完成度の高さに唸った。

さらに

五十嵐さん:ル・コルビュジエの描き方も非常に印象的でした。ル・コルビュジエが嫉妬する様子とか、すごく人間くさい側面が描かれている。彼がこういう風に、俳優が演じた生々しいかたちで見せられることってないから、すごくインパクトがありました。映画ならではの、上手い構成でしたね」と楽しそうに語った。神格化された巨匠ではなく、一人の人間として描かれる、本作のル・コルビュジエ。劇中では、彼がアイリーンに無断で<E.1027>に壁画を描き、アイリーンを激怒させたという有名な“壁画事件”のことも描かれる。そんなル・コルビュジエについて、ジェニファー氏は「それでも、この壁画があったからこそ<E.1027>は現在まで生き残ってきたとも言えます。アイリーンの死後、<E.1027>は売りに出されました。“20世紀最大の海運王”と呼ばれる実業家アリストテレス・オナシスが競り落としそうになったところを、ル・コルビュジエは“歴史的に偉大な作品だから”と説得して知り合いの女性に購入させた。彼女は、家の中にあったアイリーンがデザインしたインテリアの数々が気に入らなくて、捨てようとしました。でも、ル・コルビュジエがそれを止めたんです。

と、ル・コルビュジエの<E.1027>への貢献についても触れ、

五十嵐さん:アイリーンのインテリアが<E.1027>に今もあるのは、彼のおかげなんです。

と、アイリーンの才能を嫉妬したと言われるル・コルビュジエの、嫉妬ではない、彼女への深い尊敬と愛情が伝わるエピソードを紹介した。

映画情報どっとこむ ralph 最後に

ジェニファーさんは、長年アイリーンを研究し続けてきた彼女ならではの力強いメッセージを伝えた。

「アイリーンがデザインした最も有名な家具の一つであるアジャスタブル・テーブルは、第1弾のデザインは、実は大失敗でした。それは私の博物館にあるから、分かるんです(笑)。でも、彼女は常により良い表現を追求しつづけていった。98歳で亡くなるまでずっと、働き続けました。生涯現役です。彼女にはこんなモットーがありました。“何かを創造するためには、全てに疑問を呈し続けなければならない”と。彼女はまさに、自分でそのモットーを一生涯貫き続けたのです。

E.1027室内画像『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』より

情熱の炎を燃やし続けたアイリーンの凛とした強さに、場内の誰もが心を震わされる言葉で、トークは幕を閉じました。

『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』
原題:THE PRICE OF DESIRE

10/14(土)Bunkamuraル・シネマほか、全国順次公開

物語・・・
モダニズム華やかなりし1920年代、のちの近代建築の巨匠ル・コルビュジエは、気鋭の家具デザイナーとして活躍していたアイリーン・グレイに出会う。彼女は恋人である建築評論家のジャン・バドヴィッチとコンビを組み、建築デビュー作である海辺のヴィラ<E.1027>を手掛けていた。陽光煌めく南フランスのカップ=マルタンに完成したその家はル・コルビュジエが提唱してきた「近代建築の5原則」を具現化し、モダニズムの記念碑といえる完成度の高い傑作として生みだされた。当初はアイリーンに惹かれ絶賛していたル・コルビュジエだが、称賛の想いは徐々に嫉妬へと変化していく。そして1938年、事件は起こる。ル・コルビュジエは、アイリーンの不在時に何の断わりもなく、邸内に卑猥なフレスコ画を描いてしまう。これを知った彼女はル・コルビュジエの行為を「野蛮な行為」として糾弾し、彼らの亀裂は決定的なものになった。その後、大戦とともに、<E.1027>は人々から忘れられ、打ち捨てられてしまう。戦後、すっかり荒れ果てた物件は、競売にかけられる。海運王アリストテレス・オナシスも参加したこの物件を買い戻すために奔走したのは、他でもない――ル・コルビュジエだった。

公式サイト:lecorbusier.eileen/ 

Twitter:
@lceg_e1027

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監督・脚本:メアリー・マクガキアン
音楽:ブライアン・バーン
撮影:ステファン・フォン・ビョルン
美術:エマ・プッチ
出演:オーラ・ブラディ / ヴァンサン・ペレーズ / ドミニク・ピノン / アラニス・モリセット
2015年 / ベルギー・アイルランド / 英語 / 108分 / カラー / シネスコ / 5.1ch
配給:トランスフォーマー
提供:トランスフォーマー+シネマライズ 
© 2014 EG Film Productions / Saga Film
© Julian Lennon 2014. All rights reserved.
後援:アイルランド大使館、ベルギー大使館、スイス大使館 
協力:国立西洋美術館、hhstyle

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