昨日11月12日(月)にFCCJ(日本外国特派員協会)にて第25回東京国際映画祭(以下TIFF)、「日本映画・ある視点」部門作品賞受賞作品『GFP BUNNY ―タリウム少女のプログラムー』(公開タイトル:『タリウム少女の毒殺日記』)の特別上映会と記者会見が行なわれました。

■日時:11 月12 日(月)16:30~18:50
■場所:(社)日本外国特派員協会
■登壇者: 土屋 豊 監督

土屋 豊 監督記者会見@日本外国特派員協会
『GFP BUNNY ―タリウム少女のプログラムー』
(公開タイトル:『タリウム少女の毒殺日記』)
(c)TIFF2012
先ずは上映前、矢田部吉彦作品統括ディレクター挨拶から矢田部吉彦PD:
「日本映画・ある視点」部門は4年前より、日本映画のインディペンデント作品を応援する部門となりました。若いインディペンデント作家の作品をより多くの海外の方に見てもらうため、金銭的な応援としては、出品時に作品の英語字幕制作の助成として50万円、作品賞を受賞したら100万円をお渡ししています。また今回の上映会のように海外プレスの方へ作品を積極的に紹介し、この部門を足掛かりに世界各国の映画祭へ羽ばたけるよう支援していきたいと思っています。

そして、
記者会見前、依田チェアマンの挨拶が続きます。

依田チェアマン:
第25回東京国際映画祭は皆様のご協力によって無事、盛況のうちに終えることができました。昨年の「東京 サクラ グランプリ」受賞作『最強のふたり』も今年の劇場公開で大ヒットを記録し、「日本映画・ある視点」部門受賞作も、一昨年の『歓待』、昨年の『ももいろそらを』の例にみるように、TIFFでの受賞をきっかけにサンダンス、ロッテルダムなど多数の海外映画祭で上映されています。TIFFもインディペンデント映画を発掘・応援しようという試みをつづけていますが、今回の受賞作も非常に面白い、意表をついた素晴らしい作品であり、土屋監督の独創性に我々は驚愕させられました。こうした作品が公開され、世界に出ていくことはきわめて大事だと考えます。TIFFは来年26回目を迎えます。より多くの作品を集め、優れた作品を選び出しながらさらに飛躍していくだろうと考えます。皆様、ぜひ今後の東京国際映画祭にご期待ください。そしてひきつづき皆さんのご協力をお願い致します。

そして、土屋 豊 監督の記者会見が行われました。
Q: 受賞おめでとうございます。大変エネルギッシュな作品で楽しく拝見しました。現在、クラウド・ファンディングで資金の半分ほど調達できていますが、クラウド・ファンディングに頼らなければならない状況を監督はどう受け止めていますか?

土屋豊監督(以下土屋監督): クラウド・ファンディングという新しい方法を用い、個別にカンパを募るのではなく、小額の資金を不特定多数から集めることをポジティブに考えています。ただし、これが全てではなく、たとえば200万の資金の半分はこの方法で集めて、もう半分は助成金などから調達し、さらに別の助成金を求めるなど、いろんな支援の仕組みをパズルのように組み合わせて成立させるのが、資金調達の健全なやり方ではないかと思います。

Q: 前作『PEEP“TV”SHOW』(2003)でも、技術や科学の進歩が人間にどんな影響を与えているのかを取り扱っていました。あれから10 年近い歳月が流れて、今どんな変化を感じていますか。

土屋監督: 大きく変わったのは、やはり、インターネットの普及とSNS の発展ですね。『PEEP“TV”SHOW』の時は監視社会をテーマに描きましたが、今は自ら情報発信し、居場所や個人情報を披露して、私と友だちになって下さいとアピールする。そうやってネットワークの中に入っていく時代になりました。

Q: 少女のモノローグに監督の声が介入する場面がいくつかあります。こうした興味深い演出はどこから着想を得たのでしょう?

土屋監督: 最初、「NEW HELLO」という脚本を書いて、2010年の東京国際映画祭の企画マーケットに出しました。その時は、しっかりとしたドラマ性のある物語を書いたのですが、なかなか思うように資金が集まらない。そのうち、これはやりたいものと違うんじゃないかと思うようになりました。資金を集めるには、無理をしてでも、既存の映画フォーマットに則った作品を作るべきだと思い込んでいたのです。でもお金が集まらずムカムカしているうちに、最初に映画を作ろうと思ったとき、自分はファーマットを壊すことに興味があったと思い至りました。そこで初心に立ち戻りガチャガチャと壊し、ありえないやり方でミックスすることにしました。

Q: どこまでがフィクションで、どこまでが事実に基づく内容だったのでしょう。実際の少女も統合失調症だったのですか。またゲノムについても実際に日記で言及していたのですか?

土屋監督: メディアで語られていることを要素として取り入れていますが、それが事実かどうかはわかりません。2005 年に事件を起こした少女のブログ(日記)はアーカイブになっていて、今もインターネットで読むことができます。それを読んだ印象をもとに彼女の考え方や世界観を想像し、事件当時ではなく今だったら、彼女はどんなふうに世界を見るのかと考えて、フィクションにしました。
映画の中で紹介される言葉の7〜8 割は、実際の日記から引用していますが、ゲノムについての言及はありません。あの部分は僕が想像して、2011 年のタリウム少女に言わせた言葉です。

Q: 実際の少女は生物学よりも化学を好み、1960 年代にイギリスで継母を殺したグレアム・ヤングという少年を敬愛していたと聞きました。IPS 細胞やヒトゲノムなど映画が捉えている科学的側面とは裏腹に、彼女の存在はサイコ・パスのような異質な印象を受けます。逆に、彼女に重点をおいてみた場合、登場する科学者が、マッド・サイエンティストのように見られやしないかという危惧を感じます。監督はそのあたりをどんな風にお考えになりますか?

土屋監督: 登場して下さった科学者については、その考えや行動をカッコイイと思って描いたつもりです。今観てもカッコイイなと思えるほどで、マッドな感じに観られなければいいのですが(笑)。
僕は少女の日記を読んだとき、観察者の視点が強調されていることに興味を覚えました。愛のねじれや憎しみではなく、アリやハムスターを観察するのと等価に母親を観察している。
そんな観察者が今の世の中をどう見るのか、現代社会の仕組みをどんなふうに眺めるのかを描こうとしたのです。その点、2005 年のタリウム少女にインスパイアされた僕の想像力の産物であり、実際の少女の存在とは異なります。今のデータ社会はマーケティング理論による数値的判断から導き出されていて、たとえばアマゾンは何をクリックしたかというデータをもとに、当人へのお薦めの本を、より精度の高いかたちでセレクトしたりする。
どんな思想の持ち主でもクリック回数によって等価に扱う訳ですが、それは母親もアリも等価に観察するタリウム少女の視点と多分に重なるところがある。そこでこの2つをミックスさせたら面白いと考えました。

土屋監督は、外国人プレスから寄せられる熱心な質問に答える一方で、今週11 月16 日(金)に期限を迎えるクラウド・ファンディングによる配給宣伝費調達についても、改めて呼びかけを行い、協力を求めていました。

お金に自由のある方、是非是非サポートお願いします。
http://motion-gallery.net/projects/GFP_BUNNY

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『GFP BUNNY ―タリウム少女のプログラムー』
(公開タイトル:『タリウム少女の毒殺日記』)

作品情報
2005 年にタリウムによる母親毒殺未遂事件を起こして世間を騒がせた「タリウム少女」。
彼女をモチーフとした16 歳の少女が主人公のメタフィクション。鋭くクールな視点で現実を問う、超問題作!

監督:土屋 豊 出演:倉持由香、渡辺真起子、古舘寛治
(2013 年春、渋谷アップリンクにて公開決定)

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