映画情報どっとこむ ralph

遺作2本を同時公開

2023年2月10日、スペインを代表する映画監督、カルロス・サウラが91歳で亡くなりました。
自宅で家族に囲まれながら「充実したよい人生だった」という言葉を残したそうです。翌日の2月11日、スペインのゴヤ賞で栄誉賞を受賞。サウラ監督自身が書いた手紙を家族が代読しました。

この度、カルロス・サウラ監督の最後に作り上げた映画2本を「VIVA SAURA!」と題して公開する運びとなりました。

『情熱の王国』

1本目は、『地獄の黙示録』などで知られる撮影監督、名匠ヴィットリオ・ストラーロと最後のタッグを組み、メキシコを舞台に撮ったフィクション『情熱の王国』。
メキシコ音楽がふんだんに流れる音楽劇を作り上げる様を描き、演出家や振付師の葛藤、オーディションに挑む若者たちの競争と、そこから頭角を現す男女3人の美しい肉体とダンス、光と影を瑞々しく捉えた作品。悲劇と虚構と現実が交錯する舞台が生まれます。
情熱の王国
監督・脚本:カルロス・サウラ 
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ 
出演:アナ・デ・ラ・レゲラ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、グレタ・エリソンド、イサーク・アラトーレ、
イサーク・エルナンデス
2021年|スペイン=メキシコ|DCP|95分|カラー
 
 
 
 

『壁は語る』

2本目は本当の遺作となるドキュメンタリー『壁は語る』。
先史時代に描かれた洞窟の壁画から、現代のグラフィティまでを、サウラ監督自らが旅して探求する作品。「なぜ、人は壁に描くのか」というシンプルな問いを追い求めていきます。現代アートを代表するアーティスト、ミケル・バルセロや、グラフィティを描くZeta、Musa71、アーバン・クリエイターのSuso33などが出演。スペインの洞窟から街中に至るまで、あらゆる“壁画”を堪能できるアート・ドキュメンタリーとなっています。
壁は語る
監督・出演:カルロス・サウラ 
撮影:フアナ・ヒメネス, リタ・ノリエガ
出演:ミケル・バルセロ、Suso33、Zeta、Musa71、Cucoほか
2022年|スペイン|DCP|75分|カラー

映画情報どっとこむ ralph

『VIVA SAURA!』

6月1日(土)より、ユーロスペースほかにて追悼ロードショー

@saura

情熱の王国x壁は語る
カルロス・サウラ監督は生涯で50本あまりの映画を作っていますが、日本では“フラメンコ映画の監督”としての一面が知られており、フランコ政権下の作品は殆ど公開されていません。
監督は「過去を反芻するより、次のことを考えることに時間を使いたい」と言い続けていました。最後まで自分の好奇心のおもむくままに、芸術と向きあい続けてきたのではないでしょうか。生涯を終えても、サウラ監督が残した映画が無くなることはありません。最後のフィクション『情熱の王国』と、遺作『壁は語る』の公開を通して、“未来を生きるシネアスタ”、カルロス・サウラ監督の映画的軌跡を再発見して頂きたいと思います。

※「シネアスタ」とは、スペイン語で「映画人」の意味。

カルロス・サウラ監督 Profile

 
Carlos Saura
本名:カルロス・サウラ・アタレス

1932年1月4日 ウエスカ生まれ。2023年2月10日にマドリードにて死去。
4歳の時にスペイン内戦(1936-39)がはじまり、共和国派地域のマドリード、バルセ ロナ、バレンシアを転々とする。ピアニストの母と画家の兄の影響で芸術に興味を示し、高校の頃から写真に興味を持ち、プロのカメラマンとして活躍。1950年からは16mmで映像を撮り始める。1952年、IIEC(現在の国立映画学校)に入学。57年に卒業制作として『La Tarde del Domingo』(日曜日の午後)を制作、監督として卒業。1958年からIIECで映画美術の教鞭に立つがフランコ政権の検閲に反対して 1963年に解任される。
1958年に短編ドキュメンタリー『Cuenca』(クエンカ)でサンセバスチャン映画祭の短編部門特別賞を受賞。長編デビュー作は1959年制作の『Los Golfos』(ならず者たち)で、ネオリアリズムの手法でマドリード郊外の貧困地区の若者たちのフラストレーションと友情を描き、検閲官の怒りを買いながらも、1960年のカンヌ映画祭でコンペティションに正式出品。
1965年、『La Caza』(狩り)が、ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。スペイン国外で初の最高賞を取ったことから、小さくとも信頼できる座組みができるようになる。
1975年にフランコ政権が終わりを迎え、ビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』から2年後のアナ・トレントが主演した『カラスの飼育』(1976)では、カンヌ映画祭審査員グランプリを受賞、ゴールデン・グローブやフランスのセザール賞 にもノミネートされ、『ママは百歳』(1979)が⽶国アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたことで、世界に名が知られることになった。
フラメンコの名ダンサー、アントニオ・ガデスとのコラボレーションやフランスの ジャン・クロード=カリエールの小説を元にイザベル・アジャーニとハンナ・シグラ主演でメキシコ女性の物語を描いた『アントニエッタ』(1982)や、スペイン内戦を舞台にした『歌姫カルメーラ』(1990)など物語から音楽映画まで描くジャンルは多岐に渡る。
1991年からオペラや舞台の演出も手がけてきた。2017年にはカルロス・サウラと子供たちを取り上げたドキュメンタリー『サウラ家の人々』も制作された。2023年、舞台「サウラによるロルカ」の稽古中に体調を崩し2月10日、呼吸不全で家族に見守られながら息を引き取った。最後に「充実したよい⼈生だった」とつぶやいたという。翌日の 2月11日のゴヤ賞で栄誉賞を受賞した。一生で50本あまりの映画を作り上げ、現役のまま、91歳で生涯を閉じた。

***********************************

配給:Action Inc.

関連記事:




良かったらランキングUPにご協力ください。
  にほんブログ村 映画ブログ 映画情報へ    にほんブログ村 アニメブログ アニメ情報へ