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2度の立ち退きに遭った元住民と監督登壇

ドキュメンタリー映画『東京オリンピック2017』監督・撮影・編集は、本作が劇場作品初監督となる青山真也。

東京ドキュメンタリー映画祭2020 特別賞受賞を経て、アップリンク吉祥寺及びアップリンク京都にて公開が開始。8月14日(土)に、青山真也監督と人生二度目の立ち退きにあった元住民の甚野公平さんが登壇し、史上最多のメダル獲得数の裏で強いられた立ち退きについて、今後も行われるであろうメジャーイベントの裏で苦しむ方々の想いを語りました。
東京オリンピック2017甚野公平、青山真也監督
日時: 8月14日(土) 
場所:アップリンク吉祥寺
登壇:青山真也監督、甚野公平(元霞ヶ丘アパート住民)

映画情報どっとこむ ralph 冒頭、甚野さんは、「1964年、そして今年と2度に渡りまして、住み慣れた霞ヶ丘町、ふるさとから、転居せざるをえなくされてしまった者でございます。」と挨拶。年齢を聞かれると、「まだ87歳と9ヶ月でございます」と冗談を言い、観客の笑いを誘った。

青山監督は、「ちょうどオリンピックが終わり、パラリンピックが控えているわけですが、政治家の方はコロナの感染者数の増加はオリンピックに関係ないと言っているけれど、私はそうは思っていなくて、コロナ禍でオリンピックが開催され、パラリンピックが開催されようとしているというのは、国民の生活を無視した形で突き進んでいるなと思っているのですが、『きちんと生活があった霞ヶ丘アパートがオリンピックによって立ち退きになる』という映画をこのタイミングで公開できて、皆さんに見に来ていただいて、感謝しています」と挨拶した。

本作のタイトル『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』に込めた想いに関して、監督は、「オリンピックは、”参加するもの”、”参加することに意義がある”、と”参加”みたいなキーワードと結びつきがあると思うんですけれど、甚野さんさん始め住居を追われてしまった方々の引っ越しの様子がとてもとても悲しい”オリンピックへの参加”のように見えてくる場面が多かったので、まず”オリンピック”と名付けたかったんです。2017というのは、霞ヶ丘アパートが解体された年になります。”東京オリンピックの霞ヶ丘アパートの会場”と名付けると、色々気づきもあるのではないかと思ってこのタイトルをつけました」と説明。

監督は、オリンピックが終わった今、どういう思いか聞かれ、「このコロナの感染者数でパラリンピックを開催するのだろうかという強い疑問と不安があります。”オリンピックが終わった”と言われて納得がいかないのは、名古屋入管でスリランカ人の女性が亡くなったニュースが最近報道されていますが、オリンピックを契機に、オリンピックを開催するために、日本の安心安全を守るために、外国人の取り締まりや入管施設の取り締まり強化が行われた結果、スリランカ人の女性が亡くなったと私は見ています。ですので、”オリンピックは終わっていない”と思っていますし、入管施設の取り締まりも改善されるべきだと思っています。」と新たな課題に言及した。

映画情報どっとこむ ralph 甚野さんは、1964年の東京オリンピックの再開発で立ち退きを要求されて、このアパートに移り住み、また今回のオリンピックで立ち退きに遭った。「二度の立ち退き。率直な話、もっときつく言いますと、”強制立ち退き。”そんな風に今回は感じました。というのも、最初のオリンピックの時は、丁寧な挨拶がありました。知事から手紙が来たりしました。ところが今回は、間近になってから、”オリンピックだからどいてくれよ。”という感じで、私どもへの連絡があったので、二度を通じて考えてみますと、今回のオリンピックは、なんとおそまつな手順で進めてくれたんだ、我々に対する理解する気持ちが何も感じられなかったな、という風に感じるオリンピックでした」と総括。

「1964年のオリンピックの時は、日本も復興期という雰囲気で、『これから日本、東京、焼け跡に残った我々もこれから幸せになる。立ち上がるのには協力が何よりも必要だ。喜んで協力しよう。成功してほしい』という気持ちで、最初のオリンピックを迎えました。ゆとりを持って私どもに接してくださっていました。直接関係ある役所の方も、我々に対する配慮、思いやりの気持ちを持って接してきてくれたなと十分に感じられました。何の苦痛も感じませんでした。今回の取り壊しの話が出た時は、『なんだ、我々何もそういうこと知らないよ。居住者は困るじゃないか。ここに来てやっと落ち着いたばかりなのに、またどかなくちゃいけないのか。なんでまたオリンピックをやらなくてはいけないんだ。』という気持ちでおりました。今回のオリンピックについては、快く迎えることはできませんでした。不愉快でした。納得いきませんでした」と率直な思いを語った。

監督は本作のどういう点に注目して見てもらいたいか聞かれ、「住んでいる方々の生活を撮影させていただいた映画ですので、生活風景をしっかり見ていただければと思います。」と話し、受付で販売しているパンフレットについて、「130ページ以上のボリュームになりました。すばらしい寄稿でした。立ち退きをお願いするために霞ヶ丘アパートに届いた資料もふんだんに入っています。64年の時のオリンピックの立ち退きの際に東京都から送られてきた資料もあります。」と説明した。

甚野さんより、この映画を通して、「オリンピックをやるということは確かに平和の大切な行事の一つだと思います。しかし、それを行うことによって、その陰で、悩み、悲しみ、辛い想いをしている者がいるということも気がついてほしいと思います。」とメッセージが送られ、舞台挨拶は終了した。

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ドキュメンタリー映画『東京オリンピック2017』

アップリンク吉祥寺&アップリンク京都にて公開中 全国順次公開

公式サイト:
https://tokyo2017film.com 
公式ツイッター:
@TOKYO2017film

東京オリンピック2017_ポスタービジュアル
明治神宮外苑にある国立競技場に隣接した都営霞ヶ丘アパートは、10棟からなる都営住宅。
1964年のオリンピック開発の一環で建てられ、東京2020オリンピックに伴う再開発により2016年から2017年にかけて取り壊された。本ドキュメンタリーは、オリンピックに翻弄されたアパートの住民と、五輪によって繰り返される排除の歴史を追った。

平均年齢が65歳以上の高齢者団地であるこの住宅には、パートナーに先立たれて単身で暮らす人や身体障害を持つ人など様々な人たちが生活していた。団地内には小さな商店があり、足の悪い住民の部屋まで食料を届けるなど、何十年ものあいだ助け合いながら共生してきたコミュニティであったが、2012年7月、このアパートに東京都から一方的な移転の通達が来た。

2014年から2017年の住民たちを追った本作では、五輪ファーストの政策によって奪われた住民たちの慎ましい生活の様子や団地のコミュニティの有り様が収められている。また移転住民有志による東京都や五輪担当大臣への要望書提出や記者会見の様子も記録されている。

【あらすじ】
都営霞ヶ丘アパートは1964年のオリンピック開発の一環で建てられた。国立競技場に隣接し、住民の平均年齢65歳以上の高齢者団地であった。単身で暮らす者が多く、住民同士で支えあいながら生活していたが、2012年7月、東京都から「移転のお願い」が届く。2020東京オリンピックの開催、そして国立競技場の建て替えにより、移転を強いられた公営住宅の2014年から2017年の記録。

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監督・撮影・編集:青山真也
劇中8mmフィルム映写協力:AHA! [Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]
音楽:大友良英  整音:藤口諒太
配給:アルミード
2020 / 日本 / カラー / 16:9 / DCP / 80min
©Shinya Aoyama

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