イスラエル映画『オオカミは嘘をつく』は11月22日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町にて公開が決定しておりますが、このたび、2人組の新進気鋭の映画監督アハロン・ケシャレスとナヴォット・パプシャドの来日に際し、映画監督を目指す映画美学校の生徒たちに向けた授業の一環として、以下の試写付き登壇イベントを行いました。
アハロン監督とナヴォット監督は、かつてテルアビブ大学の講師と生徒という師弟関係だったこともあり、なつかしい学生時代を思い出しながら、日本の著名な映画人と未来の映画人候補たちに囲まれて映画についてつっこんだQ&Aが繰り広げられたことに大興奮。国を越えていろんな映画のタイトルが飛び出す、ワールドワイドな映画談義の渦に飲み込まれる一時間でした。 左から、高橋洋さん、アハロン・ケシャレス監督、ナヴォット・パブシャド監督です。 |
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【イベント概要】 日時:10月9日(木) 21:00〜22:00 場所:映画美学校(渋谷) 講師:高橋洋(『リング』シリーズ脚本家・『恐怖』監督) ゲスト講師:高橋ヨシキさん(『冷たい熱帯魚』脚本家、映画評論家、アートディレクター) ゲスト:アハロン・ケシャレス監督(39)、ナヴォット・パブシャド監督(34) |
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講義内容
※高橋洋さん(以下H)、高橋ヨシキさん(以下Y)、アハロン監督(以下A)、ナヴォット監督(以下N) で記載 Q:映画を観た感想 H…『ユージュアル・サスペクツ』のように、「世の中を騙してやろう」という意欲を感じる非常に作り込まれた映画だと感じた。また、食べ物を美味しそうに撮るというのは実は難しいが、それをとても魅力的に撮っている。 Y…最初から引き込まれ、非常に良く出来た構造。マーケットでも有利だろう。イスラエル独自の状況も描かれているが他の国でもリメイクもすぐに出来そうだし、バイオレンスの抑制がとれているから、幅広い映画ファンをとりこめると思う。冒頭10分しか観ないバイヤー対策もとられていて、戦略的でないと言われたら信じられないほど。 Q:映画について A…イスラエルではジャンル映画はほとんど作られていない。国内の映画賞では特殊メイク部門がなかったから、僕たちの第一作(『ザ・マッドネス N…スコセッシやデパルマ、タランティーノやコーエン兄弟のような作品が自分の国にはない。だから本作は「自分たちが観たい映画」を作りたいと思った。しばらく観たあと考えてしまうような、サスペンス、アクション、ホラー、コメディのすべてが入りなおかつひねりのある作品になったと思う。 |
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★質疑応答
Q1.被害者の父親と祖父が食べているスープがとっても美味しそうでした。何スープなのかずっと気になって。 N…チキンスープだよ、イスラエルでは風邪をひいたら母親が作ってくれるんだ。 Q2.ホラーなのかコメディなのか、自分のテンションが落ち着かなかったが。 A…スリリングなシーンで邪魔が入る部分はコメディタッチなので復讐を遠目で観ているような気になるはずだ。そこは正に我々が意図したところでもある。『レザボア・ドッグス』で有名な「耳そぎシーン」でポップチューンがかかるが、観ている側は曲による効果で面白いものを観ている気になるが、実際にそこで起こっていることは拷問なわけだよね。後でそれに気づく。そして楽しい気分になった自分を恐ろしく思う。それに通ずる喜劇的なつくりを心がけた。 Q3.本作はR18+だが、イスラエルでは性的な表現はどこまで許されているのか? A…見せすぎなければ大丈夫。R18+がつけられた映画は僕たちの初監督作品まではポルノ映画だけだった(笑)。 イスラエルでは、性器を喰われる『ピラニア3D』がR14+で、バイオレンス描写がすごい『キック・アス』がR12+なのに、自分たちのレイティングはおかしい、と検閲機関と交渉したが聞いてくれなかったよ。 |
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Q4.映画を観るとイスラエル社会にはまだまだ男尊女卑があるように感じるが?
A…少しずつ改善されているが、僕たちの世代までは父親が有名な戦争に行った経験を持ち、いかに国の為に命を捧げたかを武勇伝としている男社会だから、マッチョな精神があるのは間違いない。実際にクレイジーな経験をした男たちが理性の或る女性のいない場所で集まって尋問をする、その不条理を描きたかったんだ。 Q5.イスラエルではアラブ諸国、韓国では北朝鮮のように、地続きの敵が存在しない日本で社会状勢を反映するキャラクターを作るにはどうしたらいいか? N…リメイクしたらいいんじゃないかな(笑) A…深作欣二監督の『バトルロワイヤル』だって、社会的な考察が入っているように感じた。だから自分にとって一番ストレスを感じる何か、日本で君が何に対して居心地が悪くなるのかという要素に注目して作ったらいい。この作品は男社会というマッチョな遺産がインスピレーションになっている。日本なら小林正樹や黒澤明のように日本独自のルール、サムライスピリットを必ずしも讃えるだけではないだろ? Q6.容疑者が刑事に捕まるシーン、今まで観た映画の中ではかなり間抜けなつかまり方でしたが。 A…一番「バカバカしい捕まり方」を考えた結果さ(笑)。ハリウッド映画みたいに『ハート・ブルー』のキアヌ・リーヴスや、走るのが大好きなトム・クルーズのような体験を誰もがしているわけではないし、呼吸を整えるシーンが入ったりする方がリアルじゃないか。 Q7.次回作の構想は? N…まだ言えないんだ。ビックニュースになる企画があるんだけどね!うまくいけば『オオカミは嘘をつく』の公開までには発表できると思うよ。 |
監督・脚本:アハロン・ケシャレス&ナヴォット・パプシャド『ザ・マッドネス 狂乱の森』
出演:リオール・アシュケナズィ、ロテム・ケイナン、ツァヒ・グラッド
2013/イスラエル/スコープサイズ/110分
原題:Big Bad Wolves/R-18 HP:http://www.bigbadwolves.jp
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