映画情報どっとこむ ralph ミニシアター、映画好きのためのオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」では毎回様々なゲストをお迎えして映画、映画館にまつわる様々なお話をしていただく企画。

今回のゲストは、家族で大阪から鳥取県湯梨浜町に移住し新しいミニシアター「ジグシアター」を先日オープンさせた柴田修兵氏を迎え、設立の経緯からオープンの反響、今後の未来像までお話を聞いています。
「ミニシアタークラブ」柴田修兵_北條誠人
ミニシアタークラブ対談 柴田修兵(ジグシアター)×北條誠人(ユーロスペース)
取材実施日:2021年7月20日(火)
場所:Zoom ミーティング
★対談動画フル尺は、ミニシアタークラブに入会後、閲覧可能です。
こちらからどうぞ

映画情報どっとこむ ralph −大阪から鳥取への移住

青木基晃(ミニシアタークラブ) 「元々は大阪で生活をされてたんですよね?」柴田修兵(ジグシアター)「はい。大阪から今年の2月に鳥取県湯梨浜町に移住してきました。18か19歳の頃から音楽イベントのオーガナイザーをやってきました。そのほか自分でも作品を作ったり、自主制作映画の上映会に顔を出したりしていました。」青木「その後、濱口竜介監督のワークショップに参加されましたがその目的は?」柴田「濱口さんが一体どんな風に作品を作るのかに興味がありました。神戸でワークショップを開催されるということで、これは参加するしかないなと思いました。」青木「鳥取に移住して映画館を作るきっかけをお聞かせください。」柴田「まず、子供が生まれたことが大きな転機になり、地方での暮らしを模索しはじめました。最初は移住するなら離島だろうと西表島に行ったりしましたが、結果的には、大阪時代からの友人が鳥取県湯梨浜町でゲストハウスをしていたこともあって、なんども遊びに来ているうちに移住を決めました。この町には「汽水空港」という素敵な本屋さんがあったりと、文化の土壌が非常に耕されているなと感じました。」

青木「自分の周りにはあまり地方へ移住している知り合いがいないんですが、聞いてるとものすごく楽し そうですね。」柴田「めちゃくちゃ楽しいですよ!普通に歩いていると同じように移住してきている人たちにも会いますし、「こんにちは」って言って、1日の最後は最高の夕日を見て終わるという。湯梨浜は本当に夕日が綺麗で、1日のエンドロールとしてみんな集まってきます(笑)」

−新しいミニシアターオープンまでの経緯

青木「そして移住した後ですが、なぜ映画館だったんですか?」柴田「移住したら何か場所を持ちたいなと思ってたところ、妻が「映画館がいいんじゃない?」と 言い出しまして。ただ最初は映画館って難しいんじゃないかなと思ってたんですが、大阪の第七藝術劇場さんやシネ・ヌーヴォさんなどいくつかの映画館にヒアリングをしたら、規模がそんなに大きくなければいけるのではないか、というアドバイスをもらい後押ししてもらいました。それからまだ場所も決まってなかったのですが、鳥取にミニシアターを作るつもりだと言うと、みんなものすごく喜んでくれました。反応がすごく良くて驚きました。潜在的に鳥取の方々は、各地にシネマクラブもあって映画好きの方が多い地域だと分かってきました。」青木「ジグシアターという名称の由来は?」柴田「大工さんが使う、治具というものがありまして加工や組み立ての時に、作業しやすいように補助した り誘導したりする器具の総称です。映画館の名称ということで考えると映画を下支えするものとしての映 画館ということで治具=ジグが相応しいなと思いました。」青木「新しい道を切り拓いで素晴らしいと思いますが、実際どうやりくりされているんでしょうか?柴田家 は?」柴田「うちは、実際ものすごく大変です!私に関しては移住したら何かスキルをつけたいと思いまして、今は職業訓練校に通って木造建築、大工について学んでます。今年度のジグシアターについては、ひと月に1回ほどのペースで上映をやっていくつもりです。」

ー上映作品のセレクトと劇場コンセプト「戸惑い」について

青木「今回の柿落としは、ホン・サンス監督の『逃げた女』でしたが、なぜこの作品を選んだのでしょうか ?」柴田「都市部では話題になるようなアートハウス作品が地方ではなかなか見る機会がない、そういった文化格差をなんとかしたいので、新作をかけようと思っていました。タイミングよくホン・サンス監督の新作が公開される時期で、配給のミモザフィルムさんに相談しました。大変よくしていただいて試写も拝見して、「とまどう体験」を提供したい自分の考えにぴったりだと思い上映させていただくことになりました。「戸惑い」については、黒沢清監督の『CURE』をみた時に、日常が変貌することを目の当たりにしまして、映画ってこんな力があるんだと。そういうとまどう体験を提供したいと思っています。」
青木「実際に、上映されてお客さんの反応はいかがでしたか?」柴田「逆に、自分がとまどうほど反応が良かったです(笑)。非常に素晴らしいお客さんに巡り会えたというか、地元でのホン・サンス観た率がものすごく高くて、お互いの映画の解釈や意見の交換を通じてリテラシーがすごく高まったんじゃないかという驚きがありました。経済という意味では、町にある本屋の汽水空港やカフェのLibrarie(リブラリエ)というお店も賑わっていたと聞き、町全体で盛り上げることができたことが嬉しかったです。元々「たみ」というゲストハウスがあったからこそ、そこを中心にこういった広がりも生まれていったんだと思いますが。
青木「劇場について少し教えてください。」柴田「劇場設計については、プレ上映の際に奥泉理佐子さんという建築をやっている方にお願いしました。費用を抑えながらも、居心地がよくて、段差をつけて観やすくして欲しいという要望に対して、木製のパレットを積んで段差をつけました。それに背もたれをつけ、クッション材を入れ、布を敷いて簡易のソファにしようということでこのような形になりました。今回はその設計を引き継ぎつつ、少しアレンジしながら新たな空間を作っています。」

−今後について

柴田「10月くらいに湯梨浜町の隣の倉吉市にあるシネマエポックさんをお借りして、ジグシアタープレゼンツで上映会+トークショーをやる予定です。通常の映画館とはちょっと違った動きや活動をしていければと。」北條誠人(ユーロスペース)「ご自身の映画館を今後どうされていきたいかと、今後映画というものはどうなっていくだろうと思 われますか?配信で見ることや先ほどおっしゃられた文化格差など色々とあると思いますが。」柴田「大きな質問ですね(笑)。自分の映画館については、やっと立ち上がったのでこれからも上映していき定着させていきたいです。将来的な野望としては、せっかく大工の学校に行ってるので、映画館を自分で建てられればなとも思ってます。かなり将来的な話ですが。映画の今後については、僕自身、スマホでサブスクの映画を観ることもありますが、映画館で映画を上映をするとそれが町全体の盛り上がりになったり、そのことに町の人たちが感動してくれていることも感じられて。今回の上映では、映画作品自体を観に来た人も、もちろんいるんですが、映画館ができたから行ってみようという感じの方も多かったように思います。そういうことがきっかけで、ひとつの映画について意見が交わされることに非常に希望を持ちました。文化っていうのは本当にタフなもので、耕せば耕すほど芽生えてくるものなんだと実感できました。」

ジグシアター

Twitter:
@jig_theater
HP:
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ミニシアター「ジグシアター」

ミニシアター「ジグシアター」

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ミニシアタークラブ

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い変化を余儀なくされている映画業界において、全国のミニシアター文化の盛り上げを、映画を届ける側と観客の相互コミュニケーションによって推進するオンラインコミュニティとして設立された。映画に携わる様々な人たちによるリアルな現場の話題を提供し、ミニシアター支配人によるおすすめ作品トーク、ミニシアターの歴史講座、国内外映画祭事情・買付け、邦画製作秘話、配給宣伝、ポスターデザイントークなどを予定している。

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