映画情報どっとこむ ralph 昨年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で『万引き家族』とともに見えざる人々へ光を当てたレバノン映画『存在の ない子供たち』の日本公開を控え、ナディーン・ラバキー監督が初来日。日本ユニセフ協会のユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」の 一環として行われた本作の上映会後、トークイベントが行われました。

ユニセフ・シアター・シリーズ『存在のない子供たち』特別試写会 ナディーン・ラバキー監督トークイベント
日時:7 月 5 日(金)
場所:ユニセフハウス 1F ホール
登壇:ナディーン・ラバキー監督、ハーレド・ムザンナル(プロデューサー・音楽)、ワリードくん、メイルーンちゃん
MC:伊藤さとり

映画情報どっとこむ ralph 上映会終了後、余韻がまだ冷めやらぬ中、ナディーン・ラバキー監督とパートナーであり音楽・プロデューサーを務めたハーレド・ムザンナル、そして 急遽、「子どもの権利条約30周年」を迎える節目ということもあり、一緒に日本に来ていたワリードくん(10歳)、メイルーンちゃん(3歳)の 家族4人で登壇!

会場は温かい拍手に包まれ、穏やかな雰囲気でイベントがスタートした。

ラバキー監督:こうやって初めて来日できたこと、家族で作った、ホームメイドのような作品が はるばる日本という国に届いたことをとてもうれしく思っています。この作品が日本の観客にどう のように受け入れられるのかわくわくしています。おそらく感情面で何か通じ合える作品になっ ているのでは、そんな風に感じていただけたらと思います。

ムザンナルさん:こうやってここに来ら れたことを幸せに思っています。彼女も言っていたように本当に親密な作品です。それを皆さ んと分かち合えることうれしく思っています。涙を流された方もいると思うのですが、泣かせてし まって申し訳ありません。(笑)

とそれぞれひと言挨拶。

劇中では子どもの権利条約への無関心さ、不法移民、人種差別といった世界中に不当に 扱われている子供たちが中心に描かれている。なぜ本作を作ろうと思ったのか、ストリートキャ スティングにこだわって作った経緯について、

ラバキー監督:レバノンに住んでいると、劇中に 出てきたような仕事をしている子供たちの光景を日々目にします。レバノンは150万人の難 民の受け入れをしているのですが、その影響もあり経済状況が悪化しており、それが最も色 濃く、いちばんに影響を受けてしまうのが子供たちなのです。その事実はショッキングで責任を 感じましたし、どうにかしなければと思いました。何もしないということはそれに加担していること と同じです。子供たちがそんな世界に生きなければならない状況を私たちは作っている。その 状況に適応してしまってはいけないんです。最近の統計によると10億人以上の子供たちが 世界中で何かの権利を奪われています、発展途上国に限らず先進国でも同じ状況です。 私にできることは映画を作ること。映画というツールは真に物事の見方を変えられる力を持っ ていると信じています。この作品を観て、皆さんの心の中に子供たちが安心して暮らせる状 況を作らねばいけない、このままではいけないという気持ちを持っていただけたら少しずつ変わ ることができるのではないか。すべては子供たちから始まると私は思っています。負の連鎖を 断ち切らなければならない、この現状があることに驚いてはいけない、これは私たちが作りだしていることなのだから。

と真摯に語った。

続いて、主人公を演じた少年ゼインの希望溢れる印象的なシーンについて、ラバキー 監督へ質問を投げかけると・・・・・、まだ3歳のメイルーンちゃんが突如マイクを奪う?!ハプニングが。

その愛らしい姿に会場は釘付けになるが

ラバキー監督:失礼しました。

とことわりつつ回答。

ラバキー監督:ゼインが笑顔を向けるシーンは“僕はここにいる”“もう無 視はしないで欲しい”そういう訴えが観客へストレートに伝わるシーンだと思います。同 時に僕たちには希望を持って生きていける、という思いを感じ私も感情的になってしま うのですが、じつは映画の外でもその笑顔は続いているんです。

と、現在のゼインはノ ルウェイに移住し、学校に通い、家族と共に笑顔で暮らしていることを報告。

ハーレドは音楽を担当するとともに本作で初めてプロデュースをしたのは

ムザンナルさん:誰もこの企画 を受けないことが分かっていたから。厳しいことが分かっていたから、全て自分 たちでやろうと決めました。この作品ではリアリティとの一線を超えてしまうような瞬間が あり、子供たちの現実を伝えることを目的としていたので音楽で観客の感情を操るよう なことは一切したくないという思いもあり、とても難しかったです。2つの考え方で進めました。リアルな街のノイズを使うこと。もう一つは詩情的なス コアを作ることでバランスを取っています。それでも、最後の方は自分たちの感情を止めることができなくて、かなり音楽が強い存在感を放っている のではないかなと思います。

会場からの質疑応答の時間へうつると、沢山の挙手が。

監督へ日本の少子化についてアイデアを聞かせてほしい、ゼインとの最初の出会いは、 など質問が飛ぶ中、質問者が感極まり言葉を詰まらせる一幕も。メイルーンちゃんがラバキー監督に話しかけ、会話を止めてしまうことがしばしば 起きたが、家族が温かくみつめる中で彼女に話しかけ、時には膝に乗せながら、撮影現場さなからに母親として、監督として子供たちと向き合う 姿が印象的なトークイベントとなった。

映画情報どっとこむ ralph 『存在のない子供たち』

7月20日(土)よりシネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国公開。

存在のない子供たち

両親を告訴する。僕を産んだ罪で。 わずか 12 歳で裁判を起こしたゼイン。訴えた相手は、自分の両親だ。裁判長から、「何の罪 で?」と聞かれたゼインは、まっすぐ前を見つめて「僕を産んだ罪」と答えた。中東の貧民窟に 生まれたゼインは、両親が出生届を出さなかったために、自分の誕生日も知らないし、法的に は社会に存在すらしていない。学校へ通うこともなく、兄妹たちと路上で物を売るなど、朝から 晩まで両親に働かされている。唯一の支えだった大切な妹が 11 歳で強制結婚させられ、怒 りと悲しみから家を飛び出したゼインを待っていたのは、さらに過酷な“現実”だった。果たしてゼ インの未来とは―。

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監督・脚本・出演:ナディーン・ラバキー 『キャラメル』
出演:ゼイン・アル=ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ、ボルワティフ・トレジャー・バンコレ
2018/レバノン、フランス/カラー/アラビア語/125 分/シネマスコープ/5.1ch/PG12
字幕翻訳:高部義之
配給:キノフィルムズ/木下グループ
(C)2018MoozFilms

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