あの名作『スタンド・バイ・ミー』のロブ・ライナー監督が1984年に手がけた初監督作『スパイナル・タップ』が、6月16日(土)より新宿武蔵野館 他 全国順次公開となりました。
モキュメンタリーというジャンルにおいては『食人族』(80)と共に草分け的存在として知られ、ロック映画というくくりにおいては映画史上に残る金字塔的作品。 このたび、新宿武蔵野館にて音楽評論家・伊藤政則さんによるトークショーが行われました。 |
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上映直後の興奮冷めやらぬ観客に迎えられた伊藤さん。1984年当時、イギリスに行っていたことがきっかけですでに本作の存在を知っていた伊藤さんは、本作の印象を
伊藤さん:面白いけど日本では公開できないだろうなと思いました。84 年当時、アメリカではMTVは登場していたけどロックが成熟してくるのは更に1~2年後なんです。この映画が目指したのはサタデー・ナイト・ライブとかブルース・ブラザーズのような”ロックを笑う”ということ。ロック・ビジネスやロック好きな観客を引っ張り出して笑う、というだったのです。1984年のアメリカのロック・シーンはヴァン・ヘイレンがやっと出始めたくらい。まだロック・ビジネスはそこまで成熟してなかった。すでにロックが成熟しているイギリスのバンドと、アメリカのまだ成熟していないロック・ビジネスを描いてるところが面白い作品なんです。僕が当時の日本で公開してもどうかなって思ったのは、まだ当時の日本のロック・シーンがそこまでいってないから。そうゆう文化が根付いていない日本人が観ても、わからない部分が沢山あっただろうなって思います。 この映画の面白さについては 伊藤さん:この映画には真実が沢山描かれています。ストーンヘンジのシーンはブラック・サバスから持ってきているネタ。ブラック・サバスは巨大なストーン・ヘンジをステージに登場させたのですが、その揶揄で劇中に小さいストーンヘンジが出てきてるんです。当時のブラック・サバスはダメなバンドになっていたので、そうゆうところでイギリス人は大笑いしたんです。あと、インタビューのシーンでナイジェルのギターに値段のタグがついている。あれは当時、楽器メーカーから提供されたギターやベースをこっそり売却しちゃうミュージシャンがいたんです。だから彼のギターに値札がついたままになっているのはとってもリアルだったんです。そうゆう笑いは当時の日本人にはわからないですよね。 と語った。 また、目盛り11のマーシャルのアンプについては 伊藤さん:マーシャルはとても高価だったんだけど、マーシャルを使うというのがロックミュージシャンの夢だったんです。音がデカいのはロックの目的の一つ。演奏は2の次だったんです。だからマーシャルの目盛りが11まであるなんて、バカバカしくて欧米人は笑えたんです。 と語った。多くのミュージシャンと接してきて『スパイナル・タップ』のような珍エピソードがあるか聞いたところ、 伊藤さん:マリリン・マンソンがサマソニに来た時に大阪のペットショップに行きたいと言われたので連れて行ったそうです。それで彼はハムスターとカブトムシを買ったんですけどね。いよいよライブが始まるっていう時にホテルから電話がかかってきて、”マンソンの部屋をどうにかしてくれ”と言われたらしくて。こっちはライブが始まるのにそんな場合じゃないんだけど、どうしてもと頼まれたのでホテルに行ってみたら、ハムスターが部屋に放し飼いになっていたそうですよ。 と嘘のような話を披露してくれた。 |
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最後に・・・
30年の時を超えて公開した本作に一言お願いすると 伊藤さん:やっと日本もロックやヘヴィ・メタルで笑えるようになりましたね。当時、日本でヘヴィ・メタルは一つの特定ジャンルにすぎなくて、いつか消え去るものだとみられていたんです。やっと日本のファンの方々もこういう映画を愉しむことができるようになったという気がします。 と語りました。 新たに生まれ変わり、再起をかけた 『スパイナル・タップ』 6月16日より新宿武蔵野館にて日本劇場初公開。 物語・・・ |
監督:ロブ・ライナー
製作:カレン・マーフィ
出演:ロブ・ライナー、マイケル・マッキーン、クリストファー・ゲスト
1984年/アメリカ/83分/ビスタ
提供:キングレコード
配給:アンプラグド
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