大根仁監督 × 藤えりか 登壇 TIFF特別上映『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』

映画情報どっとこむ ralph 大根監督「脚本の妙、構成・編集の妙、実はテクニックに溢れた映画」

藤記者「“赤狩り”が今起きないようにするにはどうすればいいのか?」

10月28日(月)より開催されている第32回東京国際映画祭で、幅広い映画ファンに向け世界中の「未知の作品との出会い」「良作を発掘する喜び」を提供する特別上映企画「STAR CHANNEL MOVIES セレクション」を開催中。スターチャンネルの映画レーベルである「STAR CHANNEL MOVIES」を代表する個性的なフィルムメイカーたちの作品をセレクト上映するこの企画にて、2015年の公開された『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』が上映され、『モテキ』『バクマン』を手掛けた演出家・映像ディレクターの大根仁監督と、朝日新聞経済部兼GLOBE記者の藤えりかがトークゲストとして登壇した。
TIFF2019「STAR CHANNEL MOVIES セレクション」

日付:11月2日
登壇:
演出家・映像ディレクター:大根仁監督
朝日新聞経済部兼GLOBE記者:藤えりか

映画情報どっとこむ ralph 朝日新聞紙面にてトランボに纏わる記事を掲載した過去を持つ籐記者は

籐記者:元々トランボさんのファンだったこともありますが、当時ハリウッドで行われた“赤狩り”をもう一度辿って見たかったんです。当時の“赤狩り”が今のトランプ政権に再来する危険があるという指摘も増えてきているので、今“赤狩り”がどのような受けとめられ方をしているのか、それによって追われた人たち、そのご遺族の方がどんな暮らしをしているのか、辿ってみたいと思いまして取材しました。
TIFF2019「STAR CHANNEL MOVIES セレクション」
と自身の執筆経緯を語る。

大根監督:公開当時、アカデミー賞関連の番組出演のため見ました。本当に良く出来た作品で、下手したら社会派の教科書に載っているような話になってしまうところをちゃんとエンターテイメントとして消化させていて、なおかつ家族の話にもなっていたり、“お仕事ムービー”としても楽しめる作品でした。アカデミー主演男優賞を受賞したブライアン・クランストンがイイ演技していて、大作ではないが凄く心に残る映画。
TIFF2019「STAR CHANNEL MOVIES セレクション」
と当時を振り返る。

本編で描かれる時代背景を含めて

藤記者:“赤狩り”というと共産主義者の人たちが追われたイメージだと思いますが、第二次世界大戦前の“リベラル”な人たちはほとんどアメリカでは共産党に入るという流れがあったんです。今イメージする共産党ではなく、それがかなり大きな違い。それが反ナチスの位置づけにもなっていたので、労働者を守るという立場からハリウッドも脚本家のストライキする権利を守るため共産党に入ったという背景があるんです。戦後にいきなり米ソの冷戦が勃発して、共産主義に傾倒した人としていきなり“敵”扱いになったんです。それが当時売れっ子脚本家だったトランボだったり、監督だったり脚本家の人だったりがやり玉に挙がった。

と当時の“赤狩り”を解説。

藤記者:中でもハリウッドでは脚本家や監督が多く挙がりました。彼らが描くものがベースに映画は作られますので、左派的なメッセージが入ったら共産主義的な映画が作られるんではないか、プロバガンダに使われるんじゃないか

と弾圧の実態を語った。また

藤記者:取材中さまざまな裏付けとなる書類を探したんですが『ローマの休日』の脚本を手掛けた証拠は自身で燃やしてしまったそうで、そのくらい隠さないといけなかった時代だったんだと思います。おそらくトランボさんも無念だったと思う。

取材を敢行する中で体験した苦労も合わせて語った。
TIFF2019「STAR CHANNEL MOVIES セレクション」

本作の原作は、小説家のブルース・クックが書いたもの。
原作からの脚色について

大根監督:劇中のトランボの台詞が上手いですよね。脚本家から発する台詞なので、喋る台詞すべて皮肉が効いていてイイですね。家族と話す時だけは本音になるとか、台詞の塩梅が上手だなと思います。『オースティン・パワーズ』のジェイ・ローチ監督なので、同じ監督とは思えませんが(笑)、ユーモアが凄く上手い。台詞で言えば、B級映画ばかり作っているキング・ブラザーズのプロダクションの社長役で出てくるジョン・グッドマンの役が一番感情移入しました。僕も娯楽映画しか作りたくないと思っている人間なので、彼がある啖呵を切るシーンが本作の屈指の名シーン・名台詞なんです。これが上映前なので言えないのがもどかしいですが・・・(笑)

と上映前のお客さんを気遣う場面も。

脚本家は自宅で書くことで隠れることが出来たが、監督や役者は当然表に出ないといけない職業。

大根監督:今やっている仕事でけっこう叩かれているので(笑)、感情移入はしやすいですね。本編にも、ある俳優が仕方なく仲間を売ってしまいトランボに責められるところで「お前は脚本家だからいいよ。こっちは顔で食っているんだ」という好いシーンもありますね。登場人物が、トランボも含め多層的なキャラクターに描かれていて、良いところもあれば悪いところもある。トランボだってヒーロー前としていない酷いシーンもある(笑)

と登場人物の造形についても指摘した。
TIFF2019「STAR CHANNEL MOVIES セレクション」
最後に、

大根監督:名脚本家の映画というのは難しいと思いますが、メタ的な視点にもなりますが、この映画の脚本も優れていると思います。緩急の付け方が上手い。専門的な話にもなりますが、編集が凄く上手い映画で、シーンとシーンの跨ぎが素晴らしいのであっという間に全部見ることが出来る映画でまったく退屈しない。こんなに困難な題材なのに、劇中劇もあったりするので、脚本の妙、構成・編集の妙、実はテクニックに溢れた映画です。

藤記者:ハリウッド映画で育って、ハリウッドに幻想を描いてきた人間なので、そんなハリウッドのもこんな歴史があったのか、と思います。書く場所を奪われるということが突然起きてしまうんだということを、今起きたらどうなってしまうんだろう、と製作の方は思って作ったそうです。当時のような集団ヒステリーが起きないようにするにはどうすればいいのか、と思いながら見て頂ければと思います。

とそれぞれの立場から本作の見どころを語った。

映画情報どっとこむ ralph 映画エンターテインメントサービス「BS10スターチャンネル」の、映画レーベルであるSTAR CHANNEL MOVIES。

今後も、STAR CHANNEL MOVIESは、感動や衝撃、忘れられない余韻が残る、私たちの“心が求める”作品を、スターチャンネルならではの視点で世界中からセレクトし、映画ファンの皆様にお届けします。

映画情報どっとこむ ralph <第32回東京国際映画祭 開催概要>
開催期間:2019 年 10 月 28 日(月)~11 月 5 日(火)
会場: 六本木ヒルズ、EX シアター六本木(港区)、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区)ほか都内の各劇場及び施設・ホールを使用

公式サイト:
http://www.tiff-jp.net

©TIFF
東京国際映画祭

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