2016年10月9日急逝した、アンジェイ・ワイダ監督の最新作であり、遺作となった映画『残像』が6月10日(土)に岩波ホールほか全国順次公開となります。 アンジェイ・ワイダはワルシャワ蜂起など史実に材を取った作品を撮り続け、レジスタンスの体験を基にした『世代』(54)、対ソ連の地下抵抗運動を描いた『地下水道』(56)、第2次大戦前後のポーランド社会の流転を描いた『灰とダイヤモンド』(58)など、「抵抗3部作」で国際的な評価を獲得。カンヌ国際映画祭で1981年、最高賞パルムドールを受賞し、2000年には米アカデミー賞名誉賞を受賞したポーランド映画の巨匠。 |
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そんなアンジェイ・ワイダが長年映画にしたいと願い続けてきたのが、ポーランド史に残る芸術家の一人であり、社会主義政権の弾圧により、人々の記憶から消し去られてしまった画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ。1939年代から、ポーランド構成主義の前衛画家として国内外で高く評価されたほか、非常に優れた教師として学生たちに慕われ、ウッチに世界で2番目となる近代美術館を設立するなど、美術教育に貢献した。人々の生活のあらゆる面を支配しようと目論む全体主義国家が、最も過激な形をとった1949年からの4年間を舞台に、自分の決断を信じ、芸術にすべてをささげた、不屈の男の気高い信念と理想は、いまの不確かな時代にも鮮烈な光を残していく。本作はワイダ監督の死の一か月前、トロント映画祭で世界初上映され、2017年アカデミー外国語映画賞ポーランド代表作品に選ばれている。
解禁された予告編は、ストゥシェミンスキが巻き込まれていった、社会主義政権の過酷な時代背景を映し出す。
冒頭、ウッチ造形大の教え子たちに“残像”の概念を説くストゥシェミンスキの姿は、活力とカリスマ性に溢れるが、スターリン主義はアトリエの窓を覆い尽くす垂れ幕のように、画家の人生に不気味な影を落としていく。 大学では、文化大臣が「イデオロギーの欠如した芸術は労働者の敵だ」と声高な演説が行われ、ひとり立ち上がったストゥシェミンスキが敢然と芸術表現の自由を主張し、ますます学生たちから尊敬を集めていく。しかし、共産党上層部の圧力により大学の教授職を追放され、美術館に飾られた作品は破棄され、学生たちと開催しようとした展覧会も無残なまでに破壊されてしまう。幼い娘・ニカは時代の激流にあらがう術もなく、皮肉にもメーデーの群衆の中を颯爽と行進していくシーンも切り取られる。配給切符が支給されず、無認可のために画材すら買えず困窮していく中、彫刻家だった亡き妻カタジナ・コブロの墓に青い花をたむける画家の心情とは。 |
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最後のメッセージとなった本作が世界に投げかける透徹したまなざしは厳しく、しかしまさに遺言というべき人間愛に満ちた傑作。
映画『残像』 は6月10日(土)、岩波ホールほか全国順次公開。 |
監督:アンジェイ・ワイダ
脚本:アンジェイ・ワイダ、アンジェイ・ムラルチク
撮影:パヴェウ・エデルマン
出演:ボグスワフ・リンダ、ゾフィア・ヴィフラチュ
配給:アルバトロス・フィルム
提供:ニューセレクト
2016年/ポーランド/ポーランド語/98分/カラー/シネスコ/ドルビー5.1ch/DCP
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