新潟国際アニメーション映画祭4日目開催4日目を迎えた第1回新潟国際アニメーション映画祭。 |
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「鼠小僧次郎吉」』のワールドプレミア
そして山中貞雄でどうか?という話になって、手探り状態から絵コンテまで作ろうと思って始めたのがこの作品です」と制作の経緯を明かす。 「今の若い人たちにとってサイレント映画は、お呼びでないのかもしれないですけど、ヒッチコックも“映画はサイレントから全てが始まった”と言っていて、僕もサイレントを見ると、ほとんどあの時代に頑張った監督たちの作品がそのあと進化しながら変わっていったように思います」 「浦島太郎みたいに、久しぶりに何かやろうとした時に、どうせなら反時代的アニメをやろうということで、僕的にも満足のいく形ができました。こうやって丸山と2人でサイレント映画を作れて、山中貞雄は“ちと寂しい”と言ったけど、こっちは 作れて“ちと嬉しい”ですね。紙風船のところだけパートカラーにしたんですが、自分でも流れてくる映像を観て泣きました」 と感慨もひとしおだった。 企画を担当したスタジオM2の丸山正雄は「僕自身非常に残念なことに、我々は日本の文化をちゃんと丁寧に拾っていないという自覚がありまして。山中さんのすごさ、この人のことを残していきたい」と語る。そして「アニメーションで何ができるか、何を残せるかを考えると、僕やりんたろうがやるしかないという発想がありました」「山中貞雄はハートウォーミングで、小市民を丁寧に優しく描いていている。彼はまだ28歳で戦争の中で死んでいって、遺作となったのは『人情紙風船』で、“ちと寂しい”という言葉を残して亡くなったんです」と述べ「僕はこの言葉がすごく好きで、この言葉を文化的にわかってくれる世代という意味でも、りんたろうが一番。なんとかりんたろうのアニメを見たい。何を言えばわかってくれるだろう、“よし、山中貞雄だ”って。いま僕らが山中貞雄をやらないとずっとできないかもしれない。無理してでもやろうよと、これまででも一番大変な血の出るような思いで、無理難題の中で、やっとできあがった映画です。山中貞雄をいろいろな意味で日本文化の大事なものとして、僕らの心の中でちゃんと残していきたいという思いをみなさんにわかっていただけるといいなと思います」 本作では弁士役として出演、「Dr.スランプ」アラレちゃん役としても知られる声優の小山茉美は、<ドラえもん>しずかちゃん、<サザエさん>磯野ワカメの声優などの日本の国民的キャラクターの声優を長く務めた野村道子さんに頂いたという美しい着物姿で登壇。 「無声映画(の弁士役)ですから普通の芝居とは違うので、悩みました」と告白。 本作ではキャラクターデザインを担当、サプライズ登壇した大友克洋。 元々「江戸物は好き」だという大友。 そして、“次は監督として新潟国際アニメーション映画祭に来たい”とも語った大友克洋は、発売される自身の全集のステッカーを会場のファンに手配りし、詰めかけた観客たちが大いに沸く一幕もありました。 最後には共同制作者としてフランスから来たMiyuプロダクションのエマニュエル=アラン・レナール、ピエール・ボサロンが登場し、山中貞雄の3作品とともに本作がフランスで上映されることを報告。制作スタッフの兼森義則、野口征恒、丸山真太郎らも登壇し、丸山は「去年9月に制作がスタートし完成までの6ケ月間は、毎日ジェットコースターだったが、現場が大変になると監督が元気になり、強いリーダーシップで現場を引っ張ってくれた。充実した6ヶ月が映像になっていると思う」と語りました。 |
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スカイ・クロラ 上映夜には本映画祭の第1回審査委員長も努める押井守監督の『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』も上映され、フェスティバル・ディレクターの井上伸一郎と、アニメ特撮研究家の氷川竜介とともにトークに登壇。 そして「(今新潟では)アニメ業界の連中があちこちうろついてるから、毎晩違うプロデューサーと酒を飲んでる。東京にいるとこういう機会が無かったりして、つくづく思ったけど、この業界は狭いな」と笑い「こういう所、人と人が出会う場は、仕事を掴むチャンスでもある。そういった意味では、若い人にとっては、訳の分からないジジィに喧嘩を売るチャンスでもあるから、そういう風になったらいいなとも思ったけどね」とエールを送った。 コンペティション部門に出品された作品にも触れ「(第1回目の本映画祭に)意外にもいい作品が集まった」と喜ぶ。 「審査をしていていい作品が集まると嬉しいんですよ。どうしよう、困ったぞ、逃げちゃおうかな?<何をどうしたらいいのか手も足も出ません>というコンテストもあるけど、今回は、(ほかの審査員の)お二方がどう考えるか予想がつかないけど、僕の頭の中ではもう固まってるんです。観た瞬間“これしかない”、と思ったから。だけど(自分以外の審査員の)お二方がどう判断するかで、審査会が夕方に終わるか夜までかかるのか、予測がつかない。ただ僕の頭の中では、もうほぼ決まっている」と明かす。 「コンテストは映画祭のコア(核)として必要なんですよ、誰がグランプリを獲るかというのは、お祭りだから。だけど映画に1等賞、2等賞つけることはないんですよ、当たり前の話だけど。ある人にとっての1等賞がゴミだなってことになりかねないので、もともとグランプリやナントカ賞はそういうものだと思っていただきたい」「監督だって、自分が頑張って作った作品というのは世界のどこに出しても恥ずかしくないんだという思いで作ってる。あくまで1等賞、2等賞は言ってみれば参考程度。(順位を)つけないと盛り上がらないからつけるだけだと思っていただければいいと思います。選ばれる人にとったら大事かも知れないけど、実際にはひとつの景気づけみたいな。その証拠に私は大きな賞をもらったことは1回もないですから(笑)」と押井監督らしい言葉で締めくくりました。 コンペティションに参加している監督たちのサロン会見には『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』からアマンディーヌ・フルドン、バンジャマン・マスブル監督2人が登壇。フランスでは小学校の教科書にも載っている国民的キャラクター、プチ・ニコラの誕生秘話。 この作品を観た人が、ポジティブで元気な気持ちになってくれるようにとタイトルに込めた思いを語りました。日本のアニメーションに多大な影響を受けたという2人は、コロナ禍で、誰にも会えなかった時期に2年かけて制作した本作を、本映画祭で多くの人に観てもらえること、日本の観客のリアクションが直接感じられる喜びも語りました。 シネ・ウインドでは、新海誠監督の初期の3作品を集めたオールナイト上映が開催され、アニメ特撮研究家氷川竜介と本映画祭のプログラム・ディレクターの数土直志による“新海誠談義”の対談も組まれました。 |
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【第1回新潟国際アニメーション映画祭】英語表記:Niigata International Animation Film Festival主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会 公式サイト: |