日本ホラー映画大賞登壇株式会社KADOKAWAは、新たにホラージャンルに特化させたフィルムコンペティション『日本ホラー映画大賞』を開催し、令和の新しいホラー映像作家の発掘・支援を目指しています。 そして、“ホラー”ジャンルに絞った一般公募のフィルムコンペティションは日本初の取り組み。今年8月に賞の立ち上げを告知、応募を募って来た「日本ホラー映画大賞」ですが、応募総数は最終的に104本に上り、実写映画はもちろん、クレイアニメやCGアニメまで、また一部海外を舞台としたものもあり、多種多様な応募作が集まりました。その中から一次選考を経た作品はいずれも力作ぞろいで、最終選考会では選考委員の激論が交わされました。 いよいよ第1回授賞式が12月26日(日)EJアニメシアター新宿にて行われ、名誉ある初代の受賞作品が発表されました。 |
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「受賞者の皆様、誠におめでとうございます。年末お忙しい中、お集まりいただきましたホラー好きのエリートの皆様、ありがとうございます。本賞を立ち上げた経緯に関しましてお話しさせていただきます。KADOKAWAのホラーの歴史というと小説、というところでホラーの小説の賞は長らくやってきましたが、映像でホラーの賞を立ち上げたいということで、2年ほど準備をして参りまして、本日に漕ぎ着けました。ホラーは、人間が持つ根源的な感情、闇や未知なるものへの畏れ、そして誕生して以来持っている原初的な感覚に広く訴えかけることができるジャンルですから、あらゆる人に届けることのできる作品だと理解しております。新しい才能と出会いながら、KADOKAWAの映像部門としても共に成長していきたいという思いで立ち上げた賞であります。諸般の事情によりまして、賞の立ち上げの発表から応募の締め切りまでが短期間でありましたが、100本強の募集を頂きまして、時代のニーズが高いのだなと思いました。選りすぐりの7作品をご覧いただきますが、大きく共に育てていただければと思います。」と、株式会社KADOKAWAアニメ事業局局長 工藤大丈の挨拶から始まった授賞式。
続いて、株式会社KADOKAWA エグゼクティブ・フェロー 井上伸一郎より「私は無類のホラー小説・映画好きでして、このホラー映画大賞開催をできるのを楽しみにしておりました。本当にクオリティが高く、この短期間でこんなに質の良い作品が集まったのが驚きでした。職業柄ホラー映画を観ても、怖くないように、耐性ができてきますが、今回の応募作の中には本当に驚きを与えてくれる作品が何本かありました。皆様のご活躍がこの賞の格、そして未来を決めていきます。最後に、ホラー映画大賞の2回目が決まりましたことを発表しまして、あいさつとさせていただきます。」とサプライズも発表もありつつ、コンペティションの総括がされました。 選考委員長:清水崇挨拶その後、選考委員5名の紹介がなされ、選考委員長を務めた清水崇より「まずは審査員の皆さん大変でしたが、お疲れ様でした。この企画に乗ってくださった企業の皆様、集まってくださった皆様、小林プロデューサーにも感謝をしております。100本を超える企画が集まったことを嬉しく思っております。この期間で集まるかなという話をしていたのですが、驚きました。また来年もあるということで、分母も上がれば、分子も上がって、すごい作品が集まる賞になってくれればなと思います。子供の頃は何で怖い映画を観る人がいるのだろう、おかしな人がいるな、と思っていたのですが、振り返ればすっかりおかしな大人になってしまいました。(笑)最初に観たホラー映画は『死霊のはらわた』という作品だったのですが、15年後にそのサム・ライミ監督に呼ばれて一緒に作品を作ったりして、そこから20年以上ホラー映画を作り続けています。ここにいる皆さんが、今後ゾッとする機会を与えてくれればと思います。」と挨拶がありました。 |
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受賞作品の発表へ。
受賞した『私にふれたもの』の監督・藤岡晋介が「この作品は元々長編として2年前から脚本を考えていて、チャンスを考えていたところにこの賞があり、長編のエッセンスを100パーセントいれて、全力でやりました。大賞でなかったのは悔しかったですが、長編化することを目指していきたいです。」と監督・武田真悟は「第一回の賞に選んでいただきましてありがとうございました。霊は視えるか、視えないか、というのがあると思うのですが、コロナで“触れる”というのが新しいエッセンスとなりましてこの作品を作成いたしました。長編化を目指していきたいと思います。ありがとうございました。」と今の気持ちを話しました。 映画プラットフォームならではの視点で、観る者が怖さを「楽しめる」、映画ファンに広く愛される作品を選出した「MOVIE WALKER PRESS賞」には『その音がきこえたら』が選ばれました。プレゼンターの宇野維正よりトロフィーが渡され、株式会社MOVIE WALKER PRESS・下田より「MOVIEWWALKERPRESSではホラー映画の情報にも力を入れている媒体なのですが、応募作品は力作ばかりで意見も割れたのですが、議論を重ねていく中で満場一致で選ばせていただいたのがこの作品でした。緊張感が持続する演出、キャラクターに対して説得力のあるキャスティングであったことも選考のポイントとなりました。MOVIEWALKERRESSで監督にインタビューをさせていただきたいと思います。」と選考のポイントと、賞金10万円が授与されました。 受賞した『その音がきこえたら』の監督・近藤亮太は「先ほど清水監督がサム・ライム監督との話をされていましたが、僕は清水監督の『呪怨』を見てホラー映画を作りたいと思い、ホラー映画を作りたいと思った結果、こういったかたちで賞をいただけたので嬉しく思っております。この賞をきっかけに、より怖くて面白い作品を作っていきたいとおもいます。」と喜びの声を上げました。 心霊スポット探索・怪談を体当たりで取材するYouTubeチャンネル『オカルト部』により選考・配信され、「配信動画で見たい!!短編作品」に贈られる「オカルト部門賞」には『傘カラカサ』が選出。プレゼンターの小出祐介よりトロフィーが渡され、オカルト部・吉岡より「今回の作品の中にはJホラーやサイコスリラー、スラッシャーなどありましたが、心霊スポット巡りや怪談紹介をおこなっているオカルト部からは、“心霊”を描いた作品に焦点を絞りました。荒削りと感じられる部分もありましたが、それがかえって監督のホラーへの衝動や欲望を強く表しているのではないかと思いました。」と選考のポイントと、賞金10万円が授与されました。 受賞した『傘カラカサ』の監督・ヤマモトケンジは「この作品は江戸時代から続く妖怪の“カラカサ”からきています。きっかけは、ホラー映画大賞のホームページで清水監督とFROGMANさんが、“日本は古来から妖怪や怪異というコンテンツがある”というコメントがありまして、そこを現代の我々の恐怖にするためにはどうしたら良いのか、というところで、妖怪そのものをもってきても怖がるのは子供なので、それを怖がらせるためにはと思ったところ、妖怪を怨霊的なものにしました。妖怪はカラカサ以外にもありますので、まだまだ豊富に控えています。興味のあるプロデューサーの方々宜しくお願い致します。」と話し、受賞を噛み締めました。 前例のないアプローチに果敢に挑み、新しいホラー体験を与える作品に贈られる「株式会社闇賞」は『招待』が受賞。プレゼンターの堀未央奈よりトロフィーが渡され、株式会社闇・頓花より「僕たちは新しいホラーの未来をつくっていこうとしている会社なのですが、『招待』という作品はホラーの演出が美しい作品です。素晴らしい段取りをつくるために、お手本のようにホラー演出を積み重ねた作品となっています。未知のものが脳みそに“招待”されていくという感覚を味わえる作品です。お化けの表現も単なる怨霊でも、ゾンビでもない新しいもので、新しいものを観させていただいたというところでこの賞を選ばせていただきました。」と選考のポイントと、賞金10万円が授与されました。 受賞した『招待』の三重野広帆監督は「10代の頃からホラー映画を見るのも、つくるのも好きで、この賞を見て、絶対賞を取りたいと思っていたので嬉しく思います。ホラーはニッチな、変わり種な扱いをされるジャンルだと思うのですが、こんなにたくさんの人がいて、ホラー好きな孤独感が和らいだのがあって、このコンテストの存在自体が素敵だな、というのと、来年も開催されるということで、来年こそはグランプリ撮りたいと思います。」と受賞の喜びを語りました。 “オトナ”になる前の荒削りで、尖った、最新の感性とセンスを持つ原石に対して贈られる「ニューホープ賞」には『closet』が。FROGMANよりトロフィーが渡され、株式会社ディー・エル・イー、山口より「中野さんはほぼ一人で撮影もし、出演し、編集して、完成されたとのことです。いろいろな“怖がらせ”を考えていて、荒削りながら怖さを演出できている、というのを感じました。日常にある怖さだけではなくて、おかしみも演出の中から感じまして、新しい才能として、コメディホラーであるようなものや、新しいジャンルを切り開いていってくれるんじゃないかなと思いました。」と選考のポイントと、賞金10万円が授与されました。受賞した『closet』の中野滉人監督は「普段は趣味で動画をつくっている大学生でして、YouTubeチャンネルもやっていて、動画を作るのが好きです。こんなに大きなスクリーンで上映していただける機会を持てることが嬉しく思います。」と話しました。 続いて、該当作なしとなったアニメ部門賞でしたが、これからの可能性を感じさせる作品としてアニメーション作品『炬燵』に奨励賞が贈られることに。今後の活躍が期待される結果となりました。 将来性を感じさせる作品に贈られる審査委員特別賞は『父さん』が受賞。選考委員長・清水崇監督が「自分でもホラー映画作っていますし、撮影現場も心得ているので、洋画邦画問わず、ゾッとすることがなくなっているのですが、この作品にはゾッとさせられました。怖い空気が捉えられている作品ってなかなかないのですが、本当にゾッとしました。そして今トロフィーを渡して気づいたのですが、監督が知り合いだったということにも、ゾッとしました。(笑)」とコメントし、トロフィーと賞金15万円が授与されました。受賞した『父さん』の平岡亜紀監督は「普段は役者をやっていまして、清水監督とは私が出演していた舞台などで、お会いしたことがありました。ホラー映画が大好きで、仕事から帰ってきて疲れてビールを飲んでホラー映画を観ることが人生の楽しみのひとつです。今回は2本応募させていただき、このような賞を取ることができて、光栄です。この賞を糧に、人々を縮みあがらせるような、ゾッとする作品を作っていければと思います。」と話しました。 |
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大賞は『みなに幸あれ』そして、最後に大賞を『みなに幸あれ』が受賞することが発表になりました。 全ての賞が発表となり、清水選考委員長より「同業者なので、他の監督の他の作品を言うのは辛い部分がありまして、悪く言えば自分に返ってくるので辛いこともありました。ホラーばっかり撮り続けている監督でもありますので、斜に構えた見方もしたかもしれません。」と、堀未央奈も「一ホラー映画好きで、お芝居もやらせていただいているので、いろいろな面で楽しめたなと思いました。ドラマの撮影の合間に見たのですが、深夜や朝の4時、ホラーが熟す時間に観ました。日本のホラーにあまりない、グロテスクな描写のある作品だったり、人間の心理をついている作品で、作人によって色が全く違って、1日でこんなに楽しんでいいのか思いました。」と、小出祐介が「楽しんで全作品見ましたし、審査の会合で皆さんと意見を交わすのがめちゃめちゃ楽しくて、2回目も是非呼んでいただければと思います。」と、FROGMANが「スマホが普及して、映像をつくることが日常になりつつも、ホラーの演出ってめちゃめちゃ難しいですよね。みなさんレベルの高いことをされているなと思いました。怖く作るのは僕自身も苦労しているので、そういう人間が審査員の立場でやらせていただくのは、苦しみながらも楽しませていただきました。」と、宇野維正も「“日本”ホラー映画大賞と大きな名前が出ていますが、日本がグローバルと戦えるのは“アニメ”と“ホラー”と言ってもいいと思いますし、そのタイミングでこの賞が立ち上がるのが意義があるなと思います。自分の観方が固定されている中で、みなさんの意見を交わすことがためになりました。」と、それぞれ今回の賞を振り返りました。 さらに、選考会の様子を尋ねられると、「最初にどうやって決めていくかも決まっていなかったし、重なりつつも、1位2位は全員異なりましたね。それくらい観方が違うというか、小出さんから理由を聞かれたりもしましたね。」と振り返る清水監督。「僕も堀さんから言われましたね。」と宇野からの言葉に、堀も「どこを引き込まれたのはすごく知りたくて、聞いちゃいました。観方を吸収できるのが面白かったですね。」と振り返ります。 最後に清水が「僕もホラーをつくってきまして、こういうふうに撮ってあんな感じで、思ったより上手くいかなかったら音楽さえかければうまくいくというのがあるのですが、そこをあえて、音楽で怖がらせないようにしてるものだったり、深夜のドラマでよくあることから外したものを見つけたいという思いで参加しました。昔は今みたいに便利じゃなくて、VHSの2台のデッキをダビング状態で編集していたのですが、そこから見出してくれる先輩がいました。この賞はプロデューサー自体がホラーが好きな人が始めているので、長続きして欲しいですし、第二のウェーブが生まれる土壌になればなと思います。応募した作品以上に僕たちを驚かせる作品を作っていただければなと思います。」と受賞者を奨励し、イベントは幕を閉じました。 |
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冨安由真(とみやす ゆま) 「Girl without Features」 ©Yuma Tomiyasu, by courtesy of Art Front Gallery |