日本が大切にしてきた“もったいない”について考える珠玉のドキュメンタリー映画『もったいないキッチン』が、8月、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国にて公開します。
本作の完成披露試写会を4月2日に予定されていましたが、新型コロウィルス感染症拡大防止のために、オンライン試写会へ切り替えて開催しました。オンライン会議アプリ「ZOOM」を活し、100 名近くの人がオンライン上に集まり映画とトークイベントに参加しました。 |
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まず、映画上映前にはダーヴィド・グロス監督のメッセージ動画が上映され
「なぜ日本を舞台に食品ロスに関する映画を作ったのか」とよく聞かれるという監督は、その理由を次のように答えました。 「日本では大量に食品ロスがあることはとてもショッキングですが、同時にたくさんのサステブルな解決方法があることに興味を持ちました。そのすべてが“もったいない精神”に基づいていました」。そのもったいない精神とは何なのかを突き詰めるうち、「食べ物にも命、魂が宿っていることに気づいた」という。「命や魂が宿っているなら、捨てずに料理すべきです」と映画のメッセージをえました。 続いて映画『もったいないキッチン』の上映がスタート。参加者100名が遠隔で映画を楽しみました。 映画上映後にはオンライン舞台挨拶が実現!出演者が次々にオンライン上で挨拶をしました。 まず、ダーヴィドの旅のパートーとなった塚本ニキさんが登壇。実は当初この旅の通訳をお願いされていたところ、ダーヴィドと意気投合したことで旅のパートーに大抜擢されたニキさんは次のように映画を振り返りました。 「毎日が発見と気づきの連続で明日は何が起こるんだろうというワクワクを感じながらの旅でした。完成した映画を観ていると、いろんな場所で食べた味が蘇ってきます。一番美味しかったのは若杉おばあちゃんの野草のてんぷら。葉っぱを食べてる~!でも美味しい!という感動体験でした。目隠しをしながら精進料理を食べた「暗闇ごはん」も印象深いです。恐る恐る食べた料理には茄子のヘタも食材として使われていて、ヘタも食べられると知らなかった私はとても驚きました。目隠しされていると他の感性を研ぎ澄ませながら味わうことになるので、改めて食事をするということを考えるきっかけになりました。 次は、食品ロス問題専門家でジャーリストの井出留美さんがオンライン上に登壇。 また日本の食品ロスの現状について「日本では1年間に 643 万トンものまだ食べられる食べ物を捨ててしまっています。これは都民が一年間に食べる量と同じ量。そして今、「備蓄」についても注目が集まっていますが、実はこの「備蓄の廃棄」も非常に多い。しかしそれはこの 643 万トンにカウントされていません。もうひとつ、畑や海で切り捨てられる基準外の野菜や魚類もカウントされていません。ですから、実際の廃棄量はもっと多いと思います。ダーヴィドも言っている通り、「食べ物は命」なんです。私は常にそう思ってきましたが、映画を観て改めてこの映画も「食べ物は命」というテーマになっていて驚きました。加工食品はモノにみえるけれど、それも命。命あるものだと思えば捨てることはできないと思います。食べ物はモノだと思っている人に是非この映画を観て欲しいです」 と語りました。 続いて登壇したのは、大阪の元ホームレスの方々に廃棄食材を使った創作料理を作り振る舞った、Salon deAManTO のオーナー天人純さん。 「本当にすばらしい体験をさせてもらいました。うちのカフェはホームレスの人や難民の方の受け入れをしています。地域の人にとって、町内の人にとって不安なこと。けれども彼らの体験を聞いたりすると興味深かったりするんです。食べ物を通して人とのつながりができる。今、私たちはコロのせいで立ち止まざるを得ない状況に直面しています。それは今までいかに勝手をやってきた か思い知るきっかけになるでしょう。命が脅かされている今だからこそ、‟命を捨てる“という食品ロスに向き合う、 そんな時なのかもしれません」 と語りました。 食品を包装するプラスチックのリサイクルは食品ロスと同様に重要な課題として、映画には革新的なリサイクル工場が登場します。 運営する日本環境設計の岩元美智彦会長は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場する“ごみを燃料に走る車”デロリアンに感動し、デロリアンをアメリカで購入したと言います。 「ごみで走るデロリアンはまさにリサイクルの象徴。資源を再利していくのは今後循環型の社会を作っていくには大切なことです。不要になった携帯電話をリサイクルして東京2020オリンピックメダル制作を NTT ドコモの技術サポート(連携)させて頂きました。オリンピックは平和の祭典ですから、戦争の元になる地下資源を使わずに作るべきと考え、今回世界で初めてこういった方法で作ることになったのです」 映画のハイライトのひとつに、一般家庭にダーヴィドが突撃し、冷蔵庫を抜き打ちチェックするシーンがあります。オンライン舞台上には、ダーヴィドが抜き打ちチェックで救出した冷蔵庫で眠っている食材を料理してくれた、たかはしかよこシェフが登壇し次のように語りました。 「撮影のあとからずっと「もったいない」について考えながら生活してきました。今日映画を観て改めて、もったいないエネルギーがどんどんつながっている感じがしました」 最後に、撮影クルー久保田徹さんが登壇し、撮影を振り返りました。 「食べ物、環境、植物、動物がつながっているのと同じように、撮影しながら、ダーヴィドとニキ、また人々の思いがひとつの道としてつながっていくという感覚がありました。撮影は大変でしたが、そんな素晴らしい感覚を思い出しました」 最後に・・・ 「『もったいない精神』発祥の地、日本でも大量の食料廃棄が行われていることを知りました。この状況を変えるために、日本を舞台にした本作『もったいないキッチン』の制作を決めました。ところが、当初は制作資金を募るために立ち上げたクラウドファンディングも集まらず、半分諦めかけました。しかし決意新たに再び呼びかけを始めたところ、予想を大幅に上回る 2300 万円近い金額が集まり、最終的には約 2900 万円もの制作資金が集まりました。最年少スポンサーは当時、小学6年生。貯めていたお年玉から 3 万円を出してくれました。その後、6歳の男の子が「僕、欲しいものそんなにないから、いいよ。無駄遣いせんように」と 1000 円を提供してくれました。彼らのためにも出せる全ての力を出して、「もったいない」を解決する、世の中に必ず役に立つ映画を生み出そうという強い想いで完成したのがこの映画です。完成させる道のりも平坦ではありませんでしたが、完成披露試写会も新型コロウイルス感染症の影響で、オンライン開催となりました。しかし、『もったいないキッチン』は、<コロ後の世界の道しるべ>となるのではないかと、思い始めています。 大量生産、大量消費、大量廃棄という自然も、私達も傷つける世界から、今一度、自然との関係性、生きとし生けるものへの感謝の気持ち、生かされている感覚を思い出すきっかけに。そして、サステブルな世界への転換を。食品ロスを入り口に、再び自然とのつながりを取り戻し、自然の恵みに感謝し、料理して、皆で楽しむ。そんな、世界へ!」。 食材を余すことなく使い、和気あいあいと食事を楽しむシーンが印象的な本作。参加者からは「一日でも早くみんなと楽しく食卓を囲みたい!」という声もあるなかオンライン完成披露試写会は閉会しました。 。 |
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映画「もったいない」
無駄をなくすということだけではなく、命あるものに対する畏敬の念が 込められた日本独自の美しい言葉だ。 そんなもったいない精神に魅せられ日本にやってきたのは、映画監督のダーヴィド・グロス。食材救済人の異名も持つダーヴィドは、前作『0 円キッチン』(1)でヨーロッパ5カ国を キッチンカーで巡り、捨てられる運命の食材を美味しい料理に変身させてきた。数々のド キュメンタリー映画賞に輝いた前作から舞台を日本に移し、本作『もったいないキッチン』 では通訳・旅のパートー ニキと共に福島から鹿児島まで 1600km を旅する。 実は日本の食品ロスは世界トップクラスなのだ。2 人はコンビニエンスストアや一般家庭を 突撃し、次々食材を救済。日本のシェフや生産者たちの助けを得て、廃棄食材を美味しい料 理に変身させるもったいないキッチンを各地でオープンする。次第に 2 人は“もったいな い”がもたらす多くの恵みに気づいていく―――。 |
監督・脚本:ダーヴィド・グロス
出演:ダーヴィド・グロス、塚本ニキ、井出留美 他
プロデューサー:関根健次 2020 年/日本/日本語・英語・ドイツ語 /95 分/カラー/16:9/制作・配給:ユナイテッドピープル
提供:クックパッド株式会社
配給協力・宣伝:クレストインターナショナル