映画情報どっとこむ ralph 現在公開中で、ロンドン国際映画祭での5部門ノミネートをはじめ、多くの映画祭を席巻している映画『ひとくず』の主演・監督の上西雄大が、映画を語るWEB番組「活弁シネマ倶楽部」にゲスト出演。MCの映画ライター・月永理絵とともに、映画制作の意図や、子役に虐待の疑似体験は絶対にさせたくなかったという、上西監督の細かい演出方法について語られた。
ひとくず/活弁シネマ倶楽部
自らも、実の父親が母親に日常的に手をあげているのを見て育った経験を持つ上西雄大が、主演・監督・脚本・編集・プロデューサーを務め、児童虐待を“する側”と“される側”双方の視点から現代日本の現状に一石を投じた本作。
番組冒頭で上西は、虐待について調べている時期があったと脚本執筆時のことを思い返し、「今の法律だと子供自身が、“虐待を受けている。助けてください”と明確に意思表示しないと助けることができない。虐待を受けている子の家を訪ねて、明らかに、この後、虐待を受けるとわかっていても、そこに置いて帰らなければいけない。」というショッキングな日本の現状について触れた。「じゃあ、虐待にあっている子供を、端的に救う者がいたとしたらどういう人間かなと想像したんです。」と主人公設定の素になった考えを明かしながら「そこに浮かんできたのが、世の中のルールを無視して、謂わば、社会にとっては破綻しているような人間だったら自分の感情だけで動くんじゃないかなと。それは良いことか悪いことかは別として、子供にとっては虐待を終わらせるきっかけになる。」と、自らが演じた主人公について説明し、“子供を救う”というヒーローのような立ち位置に、社会のルールを無視する無法者を設定した意図を語る。一方で、社会のはぐれ者が子供を救うこともイメージできなかったことから、子供と同じつらい過去を共通項としてもたせることで、虐待が終わるストーリーに結びつけたのだという。使命感とも思える創作意欲に駆られた上西は、この物語を虐待の現状を聞いたその日に、たったの一晩で書き上げた。

また、上西は虐待というテーマの伝え方については「おしつけるように映像を渡したところで、逆に目を背けられる。」と話し、あくまでもドラマとしての作品にこだわり、人間の“愛”と“救い”を作品に込め、「人間の心をみせる映画にしようと思って。虐待の(現状をおしつける)映画では逆効果だと思った。」と強く語る。作中では、虐待の現状を伝えるシーンはありつつも、「演じる子供が虐待の疑似体験をするようなものには絶対にしたくなかった」と、演者も含め、全ての子供に対する“愛”と“救い”に務めていた。

育児放棄される子供・鞠役を演じ、熱海国際映画祭で最優秀俳優賞を受賞した小南希良梨(こみなみ・きらり)については、「表現力で言えば、オーディションの時からズバ抜けていた。」と絶賛し、センシティブなテーマの作品の中で、監督の演出の意味を自ら汲み取り表現してくれたと撮影当時を回顧して「(僕が)ビールを飲むシーンで、(小南に対して)『お酒を飲んだ大人は、酷いことをすることがあるから、「お酒飲まないでほしいな」と思って見て』と伝えた。」と、小南のスキルに信頼を置く上西は、些細な1シーンでも、非常に細かな演出を加えていたことを明かした。

映画情報どっとこむ ralph 「活弁シネマ倶楽部」では、タイトルに込められた本当の意味や、映画の隅々にまで行き渡る上西監督のこだわりや配慮を垣間見ることができる。多くの子供が今も苦しむ現状に、ドラマ作品として気づきを与え、一つの“救い”を届ける本作。本日の公開に伴い、番組での裏話もチェックしてみては如何だろうか。

■活弁シネマ倶楽部■


公式HP:
https://katsuben-cinema.com/
公式ツイッター:
@katsuben_cinema

映画情報どっとこむ ralph ひとくず

3月14日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

https://hitokuzu.com/

Twitter:@hitokuzu_movie

ひとくず

あらすじ
生まれてからずっと虐待される日々が続く少女・鞠。食べる物もなく、電気もガスも止められている家に置き去りにされた鞠のもとへ、犯罪を重ねる破綻者の男・金田が空巣に入る。
幼い頃に虐待を受けていた金田は、鞠の姿に、自分を重ね、社会からは外れた方法で彼女を救おうと動き出す。そして、鞠の母である凜の恋人から鞠が虐待を受けていることを知る。
虐待されつつも母親を愛する鞠。鞠が虐待されていると確信した担任教諭は、児童相談所職員を連れてやって来るが、鞠は母の元を離れようとせず、保護する事ができずにいた。
金田は鞠を救うため虐待をする凜の恋人を殺してしまう。凜を力ずくで、母親にさせようとする金田。しかし、凜もまた、虐待の過去を持ち、子供の愛し方が分からないでいた。そんな3人が不器用ながらも共に暮らし、「家族」の温かさを感じ本物の「家族」へと近付いていくが、、、

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キャスト:
上西雄大 小南希良梨 古川藍 徳竹未夏
城明男 税所篤彦 川合敏之 椿鮒子 空田浩志
中里ひろみ 谷しげる 星川桂 美咲 西川莉子 中谷昌代 上村ゆきえ
工藤俊作 堀田眞三 飯島大介 田中要次 木下ほうか

監督・脚本・編集・プロデューサー:上西雄大
エグゼクティブ・プロデューサー:平野剛 中田徹  監修:楠部知子
撮影・照明:前田智広 川路哲也
録音:仁山裕斗 中谷昌代  音楽プロデューサー:Na Seung Chul
主題歌:吉村ビソー「Hitokuzu」
制作:テンアンツ
配給・宣伝:渋谷プロダクション
協賛:㈱リゾートライフ ドリームクロス㈱ 串カツだるま カンサイ建装工業㈱ 高橋鋭一
平野マタニティクリニック ㈱エフアンドエム ㈱中島食品 ALEMO㈱ ㈱USK ㈱ラフト
2019/STEREO/JAPAN/DCP/117min
©上西雄大
(c) YUDAI UENISHI

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