『世界の果ての通学路』(4/12(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開)は、地球上の全く異なる4つの地域の通学路に密着し、数十キロの危険な道のりを通して、未来を切り開こうとする子供たちの姿をとらえた驚きと感動のドキュメンタリー。

公式HP:www.sekai-tsugakuro.com

その公開に先立ち、本作の監督パスカル・プリッソン氏と片道15km2時間かけて学校に通うケニアの兄妹、ジャクソンとサロメが来日。小児科医でもある榊原洋一教授(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科)と共に、子供の生育環境とその発達への影響、何より危険に晒されながらも勉強したいという意欲度の高さがどこから来るものなのか、日本のタダで安全に教育を受けられる環境と対比しながらティーチインを行いました。

『世界の果ての通学路』トーク付試写会 概要
■3月22日(土)@シネマート六本木
■登壇:
パスカル・プリッソン監督
本編に登場するケニアの兄妹(ジャクソン・サロメ)
榊原洋一教授(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授)

「世界の果ての通学路」0322トーク試写 サロメ、ジャクソン、パスカル・プリッソン監督、榊原洋一教授
「世界の果ての通学路」0322トーク試写
サロメ、ジャクソン、パスカル・プリッソン監督、榊原洋一教授
Q:まず榊原先生は、この映画をご覧になっていかがでしたでしょうか。
A:榊原先生。学校に行くのが嫌な子供たちをたくさん観ていますので、大きな感銘を受けました。日本の子供たちなら親が行かせないような危険な場所に子供を信じて送り出していることにびっくりしましたし、それに子供たちが応えている、その達成感が顔に表れている。そういう子供たちに学ぶことがあるというのが第一印象です。

パスカル監督今回の子供たちにはわたしも驚かされました。あの年にしては成熟していますよね、欧米の子供たちよりずっと。初めて会ったのは9歳のとき。なのに、すでに自分を分かっていたのです。学習することが、自分のためだけではなく家族、地域、国のためになるということが。

Q:監督には、13歳と14歳の娘さんがいらして、学校が嫌いらしいですね

監督:ひとりはフランス人の女の子で、もうひとりはちょっと貧しい地域のケニアに住んでいてこちらのほうが学校は好きだと言っています。フランスで観た子たちのあいだではジャクソンやサミュエルのことを「ヒーロー」と言っているそうです。先進国の子供たちは学校に失望しているところがあるので、学びたいという思いをかき立ててくれるといいなと思います。ジャクソンに会ったときは「いま苦労しても、勉強はやっておいたほうがいい」という考えを持っていると感じました。

Q:日本の子供たちの学校嫌いに対する先生のお考えは

榊原教授:日本の子供たちも、ジャクソンのように勉強したいという思いは根っこにあるのかもしれないが、周りの大人がそこをひっぱりすぎてしまう、やる気を待たずに誘導しすぎてしまうために、一部の子供は疲れてしまい、学校へ行くのが嫌になってしまうのかもしれない。日本は象が襲ってくることもないし人さらいがいるわけでもない。日本の子供たちがこの映画を観て、自分のやりたいことを考えるきっかけになればと思います。

Qフランスではこの映画が大ヒットしましたね。

監督:この映画はフランスで感動を呼び起こしました。世代を超えて観てもらいヒットにつながったことが、我ながら素晴らしいことです。フランスでこの作品が教材として使われることも誇らしい。世界中に向けて作られているからでしょうか。

Q:映画の子供たちはいまどうしているのか?

監督:自分の子供のように思っているので、いまでもケアをしています。出会って一緒に撮影して知ることもなかったような世界に目を向けさせた私たちは、そのままサヨウナラというわけではなく、連携してより良い生活ができるように手助けをしています。お金持ちになるように、というのではなく、もう少し生活レベルが向上するようにと。この映画は、彼らがいなければ成り立たなかったのですから。

Q:先生も、世界における「子供への支援」の実体をご存知だと思うのですが

教授:様々な国で支援活動をしてきましたが、日本と違うことを目の当たりにする経験をして、カルチャーショックを受けました。やはり親御さんに言いたいのは、子供には外国に行くことを経験させて欲しいです。この映画では、観た大人は分かり易く奮起させられると思いますが、子供はまずは経験だと思うのです。(映画に出てくるインドの子供の)サミュエルもそうですが、大人の目で見るよりずっと感受性が豊かです。日本の自尊感情が低いことが、学習意欲の低下につながっているかもしれないと言いましたが、それは大人のせいかもしれない。経験をさせたら、ジャクソンやサロメのようにもっと大きな野望を持てるかもしれない。できるだけ自分の目で見る経験をさせてあげたい。この映画でますますその念を強く感じます。

監督:これを観ながら自分たちに欠けているのは何か考えてくれたらと思います。刺激になってくれたらと。フランスの子供たちも考えさせられたわけですし、おそらくたくさんの子供たちが「自分たちはなんて恵まれているのか」と気づくと思います。この映画を通して、サミュエルが車いすでも頑張って通学していることや、ジャクソンの毎日の努力に驚くのではないか。私はそれを願っています。

「世界の果ての通学路」0322トーク試写②

ここで、ジャクソンとサロメ登場

ジャクソン:皆さん今晩は、ジャクソンです、13歳です/こちらでいえば中学生/プライマリースクールの1年生になったところです/さらに上を目指しています。

アフリカの東の方からやってきたサロメ:皆さん今晩は、私の名前はサロメ・サコン10歳です、ケニアからきました。

教授:日本に来たときの第一印象は?/サロメの夢は何?

ジャクソン:日本に降り立って感じたのはまず、とにかく人が多い!通りにもあちこち、忙しそうに歩いている。でも人が礼儀正しいです。車も多いし、建物が高い。また、お辞儀をすることに尊敬の念を感じる

サロメ:教育の博士になりたいです。

Q:両親に対してどんな思いを持っていますか?

ジャクソン:いろんな方々の助けでこの映画が実現したと思います。両親はその中の二人でしょう。いろんな面で感謝しています。こういう映画に出させてもらうのは僕の住んでいる地域では僕が初めてです。両親は僕のことを誇りに思っていると思います。両親のサポートなしでは学校に行けなかったですし、当初は両親から学校に行けと言われました、学校はいいところだと両親は考えていましたから。そして、すぐに自分でも、学校がどんな状況の場所でも何が何でもいかなければと強い思いでいました

サロメ:私の両親はすごく誇りに思っていると思います。彼らは飛行機にも乗ったことがありません。学校に行かせてくれた、それを実現させてくれた両親に感謝しています。将来そのことで彼らを助けたいし、国にも貢献したいと思う。

Q:世界中にいろんな国があるのにこの4カ国を選んだ理由

監督:幸いなことに、今までドキュメンタリーをたくさん撮っていたので、たくさんの人に出会ってきたので、国々に友達がいます。そういう友人たちに、リサーチを頼んだ結果、浮かび上がって来た中のひとつがケニア。これは当然の選択でした。なぜならケニアには12年住んでいて、北部は通学が大変なことも知っていました。世界中で60通りの子供たちのストーリーが浮かんでいました。ケニアの子供たちの中でジャクソンを選んだ理由は彼の瞳が特別だったからです。まるで彼が僕を選んだように思いました。彼は助けを求めていたんです。貧困から脱出するには厳しい試練があると知っていて、奨学金を得られれば大学に行けることも分かっていた。そういう知性にひかれたのです。

Q:同級生も、通学がたいへんな場所に住んでいるの?

ジャクソン:映画に出て来る友達も、長距離を旅して学校に通っている子供が多いです。周りに村がたくさんあって皆でグループを作って学校に通っている子もいる。小さな村もたくさん存在していて僕より遠い道のりを通っている子もいます。

Q:危ない道のりなのに、どうしてあんなに遠くの学校まで行きたいのか?

ジャクソン:リスクのある旅をしている理由は、両親が行けと言ってくれたからというのもあるけど、段々自覚が出て来たんだ。学校というのは将来への源であり、行動を起こす場所だ。すばらしいことがたくさんある。違う考えの子たちと交流を持てる場所であり、違う国々について勉強できる場所なんだ。もっと明るく未来のある明日にむけて、色々なことを学ぶ場所だから。

監督:あの距離をジャクソンについていくだけでもサロメは勇気がある。あの地域の普通の女の子は家にいるものだし、そう言う意味でもブラボーだ。これを機に女子も外に出て行って欲しい、サロメが女性としてケニアで成功を収めてくれることを祈っている。

Q:最後に、ジャクソンから日本へメッセージを。

ジャクソン:今回、多くの人から学校に行くのが嫌だと思っている人が多いと聞きました。学校というのは素晴らしい人生への道のり、行かないのは間違っているよ。嫌いだと言う子には、ハイテクが日本のいいところだと思うが、そのハイテク技術がなぜあるのかということから説得して欲しい。学校に行かないことで日本の素晴らしい技術が廃れて存続できなくなってしまうことをわかってほしい。親は強制的にでも学びの大切さを言い聞かせた方がいい。そうしなければ将来必ず苦労するし、不幸せになる。いい仕事につくために喉から手が出る程教育を必要としている人がいるんだ。だからこそ学べる機会を大切にして欲しい。学びたくても学べない人たちに手を差し伸べて欲しいと思うよ。ありがとうございました!

『世界の果ての通学路』(4/12(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開)は、地球上の全く異なる4つの地域の通学路に密着し、数十キロの危険な道のりを通して、未来を切り開こうとする子供たちの姿をとらえた驚きと感動のドキュメンタリー。自然と調和する人間の姿を追ってきた監督が、人はなぜどんな環境でも学ぼうとするのか、その本質と意義に迫りました。

この度、公開に先立ち、本作の監督パスカル・プリッソン氏と片道15km2時間かけて学校に通うケニアの兄妹、ジャクソンとサロメが来日。小児科医でもある榊原洋一教授(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科)と共に、子供の生育環境とその発達への影響、何より危険に晒されながらも勉強したいという意欲度の高さがどこから来るものなのか、日本のタダで安全に教育を受けられる環境と対比しながらティーチインを行いました。

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ストーリー
フリーターの姉・葉月と女子高生の妹・呼春は、母の佐和と3人暮らし。14年前に女の人を作って家を出て行ったきりの、父の記憶はほとんどない。ある日、佐和から「離婚したお父さんがもうすぐ死ぬから会いに行って、ついでにその顔を写真に撮って来てほしい」と告げられる。佐和の言葉に困惑しつつ、嫌々ながら出発した姉妹だが、心の底では会いたい気持ちも顔を出す。電車を乗り継ぎ、着いた所は田舎の駅。そこで二人は、父が亡

榊原洋一教授プロフィール
1977年東京大学医学部卒、東大付属病院小児科勤務。国際医療協力への関心が強まり、JICAのネパール、ベトナム、ガーナでの母子保健改善プロジェクトに関わる。現在は、発達障害の臨床的研究、発達障害児の保育、子どもの生育環境とその発達への影響、国際医療協力を主な研究対象としている。

監督:パスカル・プリッソン原題‘Sur le chemin de l’école’
2012/フランス/77分/ビスタ/カラー/5.1ch/英語&日本語字幕/
字幕翻訳:チオキ真理 G指定
製作協力:OCS フランス5 ユネスコ エッド・エ・アクション
© 2013 – Winds – Ymagis – Herodiade

提供:キノフィルムズ、KADOKAWA
協力:ユニフランス・フィルムズ 配給:キノフィルムズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本

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