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辰巳芳子100歳記念上映

 
料理研究家・辰巳芳子の料理哲学を描いたドキュメンタリーを作りたいと河邑厚徳監督にオファーして完成したドキュメンタリー『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』。
再度映画館で観たいという要望に応え、辰巳芳子の100歳記念上映としてアップリンク吉祥寺にて、2月7日(金)公開となりました。
 
2月8日(土)には、河邑厚徳監督と辰巳が監修した絵本『まほうのおまめ だいずのたび』の作者である松本春野(絵本作家・イラストレーター)が上映後トークイベントに登壇しました。
『天のしずく』
 
トークイベント
日付:2月8日(土) 
場所:アップリンク吉祥寺
武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1パルコ地下2F
登壇:河邑厚徳監督、松本春野(絵本作家・イラストレーター)

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河邑厚徳監督×松本春野登壇

 

辰巳との最初の出会い

辰巳との最初の出会いを聞かれた松本は、「編集者から本を作ると依頼を受けて辰巳邸に行ったので、合意が取れている状況だと思ったら、ちゃんとした本物のものが作れるかどうかを聞かれたんです。『この話、まだ企画段階なの?』と、試されるような対面でした。辰巳さんは、最初のラフから、『そんなものなら出さなくていい』くらいの気持ちでいらっしゃるんです。対話を通して、何を伝えたいのかというのを確かめていきました」と苦労を話した。
『天のしずく』
河邑監督は当時も辰巳邸でカメラを回していた。松本は、「この間河邑監督に当時の映像を見せてもらったら、すごい緊張感でした。30冊弱絵本を作ってきましたが、あんなに人として対面する時に、真剣に全てを注ぎながらコミュニケーションをしなくてはいけなかったのは辰巳先生だけです。たくさん怒られながら、『あなたたちが表現したいのは何か』を徹底的に問い詰められた時間を繰り返し持ちました」と話すと、河邑監督は、「『映画を作りたい』という話をした時とほとんど同じ」と共感。
 
河邑監督は、「『この人はどんなものか』とまず試されるんです。当時、辰巳先生は80代半ばで、『きょうの料理』を中心にテレビの番組に出たり、たくさんの本を書かれていたんですが、辰巳さんの転機だったようで、『「きょうの料理」に哲学を導入したい。レシピだけでは無思想なものになってしまう。24分の中で表現することと違うことを映画ならできるんではないか?』と言われました」と当時を振り返った。
『天のしずく』
 

辰巳が映画で描きたいこと

河邑監督は、辰巳はその頃「『いのち』の目指すところは、『ヒト』が『人』になること」という言葉をずっと言っていたと話し、「『ヒト』が『人』になるのは愛だとおっしゃっるんですが、『それを映画にするって難しくない?』と始まったんです」、とこちらも企画の立ち上げ当初の苦労について述懐。「スープを柱として構成したいと思っていたんですが、辰巳さんに、『スープの湯気の向こうに見える実存的使命を描いてください』と言われました。カメラは目に見えるものしか撮れないので、人の中は撮れない。けれど、ドキュメンタリーというのは、その時その時に頭の中で考えているものじゃないものが力になる。“実存的使命”というのは、岡山(のハンセン病の女性)からきた手紙が象徴的でした」と宮﨑かづゑさんとの奇跡的な出会いを挙げた。
松本も、「あのシーンは、この映画の中でも胸を鷲掴みにされたシーン。宮﨑さんと辰巳先生が少女かのように心から笑い合って出会いを喜んでいるシーンを観た時に、この方達は人というものを愛しているんだなと思いました。愛をスープ・料理という形で受け渡していくのがこの映画で描かれているのを観て感動しました」と本作の見どころとしました。
 

最後に・・

司会を務めた矢内プロデューサーが、「本作のテーマは、12年経ってもみなさんに観ていただける普遍的なテーマです。辰巳先生は現在100歳2ヶ月で、みなさんの前にお出になることはできませんけれど、画面を通じて辰巳さんのメッセージをみなさんのお子さん、お孫さん、次の世代に伝えられるのが、映像・映画・本というメディア」と本作や松本の本の意義を訴え、トークイベントは終了しました。
 

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『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』

 
2月7日(金)〜アップリンク吉祥寺にて公開
 
公式X:
@lumiere_plus
 
公式Facebook:
@tennoshizuku
 
「愛することは生きること」という辰巳の哲学を描き、日本のみならず、スペインのサン・セバスティアン国際映画祭などで海外の観客も魅了した本作は、2012年の作品ながら、Facebookのページにはいまだに4900人以上もフォロワーがいるなど、辰巳が公開当時に「この作品は『ところ』を得れば時代を超えられるのではございませんでしょうか」と予想した通り、令和の私達の心も捉える内容で、2024年敬老週間に東京都写真美術館ホールで上映された際も、数々のメディアに取り上げられ、大きな反響を呼んだ。
 
辰巳の言葉の朗読は、辰巳から観客への手紙を読むように読んでもらいたいと監督がオファーした草笛光子が、本作の語りは、6人の子持ちで、「とにかく食で自分の気持ちを伝えたい」と毎日料理をするという谷原章介が担当している。

 
 
あらすじ
嚥下障がいでとろみのあるスープのみ喉を通った父に作っていたスープを、父の死の直後からは訪問看護のボランティアで隣人に配り、そしてスープ教室で伝授してきた料理研究家・辰巳芳子。1口2口がなくなると、数日で天国に逝かれる患者を目の当たりにしてきた医師は、病院の緩和ケア病棟でスープを配り、「辰巳さんのスープは素材を感じるので、引き出しが開いて思い出が出てくる」と1口の大切さを実感。ある日、辰巳の元に、親友が癌になり、「何かしてあげられることはないか」とスープを作ったというハンセン病の女性から手紙が届き…。
天のしずく

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監督・脚本:河邑厚徳 
出演:辰巳芳子 
朗読:草笛光子 
語り:谷原章介2012年/113分/カラー/デジタル 
配給:ルミエール・プラス
©2012年 天のしずく製作委員会

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