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河合健監督インタビュー到着『なんのちゃんの第二次世界大戦』公開中

非常事態宣言下、東京の映画館が休業もしくは限定的な営業を強いられる中で、初日を迎え満足に宣伝活動ができないながらも、コツコツと動員を続けて、そのお客に媚びない自由な作風が話題を呼んでリピーターも増え始めている作品『なんのちゃんの第二次世界大戦』。
吹越満『なんのちゃんの第二次世界大戦』
その監督・脚本・プロデューサーの河合健に、映画・ミニシアター好きのためにオンラインコミュニティ<ミニシアタークラブ>がインタビューを実施。作品の製作過程から、現在の逆風の中での上映について話したものが到着しましたのでご紹介。
ユーロスペース前・河合健監督
ゲスト:河合健(『なんのちゃんの第二次世界大戦』監督・脚本・プロデューサー)
インタビュアー:青木基晃(ミニシアタークラブ)
取材実施日:2021年5月19日(水)

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河合健 x 青木基晃インタービュー開始

−本作の製作から公開までの経緯

青木「助監督をしながら、いつかは自分も監督作を!という方は多いですが、なかなか成立させるまでが大変ですよね。」

河合「元々この作品の企画はかなり前から温めてました。ですが、企画内容が内容なのでなかなかお金が集まらなくて。このまま待ってても奇跡は起こらないので、一度地元の大阪に戻って地元のメリットを生かして映画を作ろうと思いました。その時は、地元のお祭りをテーマにした企画だったんですが、これも賛同を得られず頓挫しました。そうゆう状況の中で、制作プロダクションのウィルコさんに声をかけてもらい助監督や演出補助の仕事をいただくようになり、その中のある現場で知り合った地元の方と意気投合する出会いがありました。その方も映画製作を考えてらして。そこから本作の企画が本格的に始動しました。」

−若松孝二監督の現場で本作に取り組むきっかけが生まれた

青木「本作のテーマについてなんですがこれはどうゆう考えから発想されたんでしょうか。」
河合「2011年に、若松組に参加していました。(『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』)。その時に三島由紀夫について色々調べてたんですが、いろんな人の色々な見解・解釈があって「本当のこと」というのは埋もれているということを意識しました。(それで今回の、戦犯の遺族と戦争に反対したと言われている人物の家族、そして平和記念館の設立にまつわる様々な出来事を盛り込んでみたくなった。)

−攻めたタイトルと企画に主演吹越満も驚き

青木「インタビューを拝見したんですが、吹越満さんが当初オファーを受けた時、ちょっと驚いたが、企画の内容を理解されてその後は、前のめりに取り組まれたとか」

河合「そうなんですよ。撮影が終わった後の本当に初期のラッシュにもお越しいただき、あるアイディアを提案いただきそのまま採用させていただきました!」

−ロケ地淡路島。閉館されていた映画館の復活と映画撮影

青木「なぜ全淡路島ロケだったんでしょうか?」

河合「当初、大阪か東京で色々検討していたんですが、なかなか条件に合わず、もう少し候補の範囲を広げた結果、淡路島に決まりました。淡路島には通常稼働している映画館がなくて、たまにイベント的に使われている映画館があるだけでした。淡路島で撮影することが決まり、エキストラさんの募集や撮影での地元との関係が強くなる中で、唯一の映画館が新作を定期上映しよう!という「キャロットシネマプロジェクト」という動きが発足して、映画の撮影と連動するようになりました。今年の1月には先行のお披露目上映もやりました。」

青木「観た方々の感想はいかがでした?」

河合「それが、、賛否というか評価が真っ二つでして。。というのも、それまで映画館がなかったので、こうゆう「ザ・ミニシアター映画!」のような作品をあまりに慣れてない方が多くて。自分も2ヶ月間、キャロットシネマに張り付いて、DIYで作ったのカフェのカウンターに入ってコーヒーをお出ししてたりしました。そんな中、みていると、なぜかリピーターがどんどん増えてきました。1度見ただけでは納得できずに2回3回観に来られる方が増えていったのは驚きでした!目の前で映画ファンがどんどん生まれているような喜びを味わいました。感覚ですが淡路島の方の1/3はご覧いただいたのではないかなと。」

−人生をかけた渋谷ユーロスペースでの初日と「緊急事態宣言」

青木「そしていよいよ東京での興行に入りますが、なぜユーロスペースだったんでしょうか?」

河合「ユーロスペースは、『東京裁判』やカウリスマキ作品などを積極的に上映する劇場で自分もお客として頻繁に通ってます。そんな中たまたま北條支配人に自分の過去作をご覧いただく機会があり、面白かったとおっしゃってたと耳にしたので本作をご相談しました。」

青木「そして、晴れて初日も決まりいよいよという時に、緊急事態宣言が発令されました。こればかりはもう判断を待つしかないという苦しい状況になりました。」

河合「元々、宣伝費もない状況で、チラシやポスターなどの宣伝物を制作しています。もし上映延期になったら新たな告知をデザインし直して、印刷し直しで無駄になってしまいます。せっかく仕込んだメディアのインタビューなども調整が大変なことになります。なんとか制約付きで公開はできましたが、本当に厳しいです。座席数は50%、舞台登壇のトークイベントも実施はできない。公開はされたがどうやってお客さんに伝えたらいいか分からず、現状の制約の中でできることをやっています。劇場の入り口では、ポスター看板を持って、チラシをお渡ししたり、毎日SNSを投稿したり。でも本当に、何をご覧になって劇場にいらしていただいてるのは正直自分でもわかってません。」

−逆風の中の応援団

青木「ですが、河合さんが毎日劇場にいることで、ちょっとした変化は起きつつありますよね。実際、自分(青木)もこうして偶然劇場で河合さんと再会してインタビューをしてますし、私の前にもTV局の方が取材にいらしてましたよね。」

河合「そうなんです。これは本当は一番最初に言いたかったんですが、劇場でチラシを配っているのを知って、映画アドバイザーのミヤザキタケルさんが来て一緒に配ってくれたり、今泉力哉監督がリツートしてくださったり、『街の上で』の髭野純プロデューサーがいつの間にか「なんのちゃん、満席スタート!」と呟いてくれたり、本当に感謝しきれません!また、TAMA映画祭のスタッフの方にも映画を紹介していただいたり。」

−今後について

河合「ユーロスペースでの上映が5/28までなのでラストスパート、できることをやっていきつつ、早く次の企画に取り組んでいければと思ってます。」

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映画『なんのちゃんの第二次世界大戦』

公式HP:
http://nannochan.com/

渋谷ユーロスペースにて絶賛公開中!
5月22日(土)より名古屋シネマテーク
7月3日(土)より長野相生座ロキシー
7月10日(土)より元町映画館
7月10日(土)より大阪シネヌーヴォ
7月16日(金)より京都みなみ会館
他全国順次公開!
なんのちゃんの第二次世界大戦_ビジュアル

河合健監督

河合健

1989年生まれ、大阪府出身。映画監督、緒方明を師事。 日本映画学校(現・日本映画大学)卒業後、 助監督として、瀧本智行、熊切和嘉、入江悠などの監督作品に携わる。 また、その合間に自主映画を二本製作。 一作目の自主映画『極私的ランナウェイ』がぴあフィルムフェスティバル2012、 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013のコンペティションに入選する。 二作目の自主映画『ひつじものがたり』がドイツの第16回Nippon ConnectionのNIPPON VISIONS部門、 オランダのCAMERA JAPAN2016で上映される。

本作では、企画発案から出資集め、プロデューサー・脚本・監督を兼務する。
『僕が戦争に対して切実に感じること。それは戦争の悲惨さよりも前に、語り手によって事実が簡単に崩れ落ちてしまう恐ろしさだ。何があったのか、誰が悪いのか、人に聞けば聞くほど、もうわけが分からなくなってくる。この混乱、何かと似ているなと思ったら、今の政治に対しても同じだった。その感覚をそのまま映画で表現しようと思った。平成生まれの僕と太平洋戦争との不透明な距離感。どうか、実感してほしい。』

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キャスト
吹越満 大方斐紗子 北香那 西めぐみ 西山真来 髙橋睦子 藤森三千雄 きみふい細川佳央 河合透真

監督脚本:河合健プロデューサー:河合健 
ラインプロデューサー:大村義宏 
撮影:向山英司 照明:加藤あやこ 美術:野々垣聡 助監督:塩﨑竜朗 録音:村原孝麿 スタイリスト:冨田しおり ヘアメイク:原田珠里/源田稚奈 音楽:今村左悶 編集:小林由加子 スーパーバイザー:橋本直樹製作:敷島総研株式会社/第一工芸株式会社/株式会社グリッター/河合健

製作プロダクション:株式会社ウィルコ 
特別協力:淡路市、洲本市、南あわじ市、(一財)淡路島くにうみ協会、淡路島フィルムオフィス、洲本オリオン
配給・宣伝:なんのちゃんフィルム(2020/112 分/カラー/日本/ビスタ/5.1ch/DCP)
©なんのちゃんフィルム

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