映画製作スタジオであるA24とプランBが、アカデミー賞®作品賞受賞作『ムーンライト』以来となるタッグを組んで贈る最新作『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』が、弊社配給で10月9日(金)より新宿シネマカリテ、シネクイント他にて全国公開となります。 この度、映像プロジェクトChoose Life Projectとの共同企画として本作のオンライントークイベントを実施。 今最も注目を集める映画スタジオであるA24とプランBが、アカデミー賞®作品賞受賞作『ムーンライト』以来のタッグを組んだ最新作『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』が、いよいよ10月9日より新宿シネマカリテ、シネクイントほか全国公開される。それを記念し、テレビの報道番組や映画、ドキュメンタリーを制作している有志で結成された映像プロジェクト「Choose Life Project」と共同企画したオンライントークイベントが9月29日に実施され、臨床心理士でmimosas理事のみたらし加奈が司会を務め、ゲストとしてラッパーのダースレイダー、都市開発研究者の吉江俊が出演しました。 |
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本作の映像の美しさが印象的だったという司会のみたらし氏から、まずは映画の感想を尋ねられると、ダースレイダー氏は「建物が人を見ているという、建物側の視点が描かれていることがこの映画のポイントではないかと思った」と語り、「実際にそこに存在する建物と、そこで醸成されているムードや人々の想いや繋がりといったもの、どちらが本当に必要なものなんだろうとか、何を大切にしなければいかないのだろうということをこの映画を通して感じられた」と本作から受け取ったメッセージを熱く語った。 また、吉江氏ははじめ「先入観で、黒人と白人の対立を描いた作品なのかなと思っていた」そうだが、「都市は他人がたくさん集まっている場所だけれども、(人が)他者として見えたり、あるいは突然理解できるようになったりするといった側面がよく描かれていると思った」と作品を振り返った。 IT産業の急速な発展により地価が高騰。富裕層が多く移り住み、もといた住人たちが居場所を追われてしまうという状況が背景として描かれている本作。サンフランシスコだけではなくいまや世界中で起こっている問題だが、この映画を紐解く上で重要なキーワードとなる“ジェントリフィケーション”について、都市開発の研究を行っている吉江氏が解説。「“ジェントリフィケーション”とは、直訳すると“紳士化”になるんですが、要するに労働者の街に紳士=中流層・上流層の人たちがやってきて、労働者の居場所を奪って転居させてしまうことを指します。日本語だとわかりやすく“高級化”といった言い方をしたりします」と説明。さらにこうした問題は日本でも各地で見られるという。ダースレイダー氏は、「街は誰とともに成長していくものなのか、街は誰のものなのか、というように街をどう考えるかが非常に大事になってくる」といい、「映画でも、書類上あるいは登記上この土地の権利を持っている人は誰々、実際にお金を出しているのは誰々といったやり取りが肝として描かれている」ことに触れ、実際にそこに暮らしているたちの声や意見が果たしてどれだけ反映されているのかの不明瞭さを訴えた。 映画では、主人公ジミーが自分の“居場所”を探し奔走する。今はまさに、単に住む場所ではなくとも「友人」や「家族」「故「SNS」などその人にとっての心の拠り所となる“居場所”を考え直す機会ともいえる。トークの最後にはそれぞれのゲストについての“居場所”について言及。みたらし氏にとっての“居場所”とは、「自分が大切だと思えるパートナーや友人がいる場所。また、自分が育った場所や通学路といった「愛着」を覚えている場所」だと語り、吉江氏は「数年前ドイツで暮らしていた際に、知り合いもいなくて本当に居場所がなかったので家の中に色々貼ったりして頑張って居場所を作っていました」とかつての経験をもとに「自分の生活の拠点となって、自分の手で作った空間が居場所」と語った。一方で、最近はコロナ禍で長く家に居ることで逆に居心地悪く感じてしまうこともあるといい、そんなときに外に出て「普段の仕事や家庭とは離れたところにいる人たちとコミュニケーションを取るということも大事な居場所のひとつ」ではないかと考えているとも明かした。ダースレイダー氏は「最近はコロナの影響でシャットアウトされてしまっているが、HIPHOP出身なのでクラブにはよく行っていて、自分が何者であるか、国籍も性別も年齢も肩書きも一切関係なく居られる場所をどれだけ確保できるかが大事」だといい、そういった場所があるからこそ、それ以外での場所においてや社会生活がうまく回っていくのではないかと思いを述べた。 SNSでも「#僕にはこの街がある」のハッシュタグとともに「居場所って土地とか家のことよりも、関係や記憶じゃないですかね」「わたしにとっては人間関係とか仕事とか関係なく、ふらっとそこにいていい場所」「居場所は、愛のある場所」といった声が寄せられ、映画を通して改めてそれぞれの“居場所”について考えるきっかけとなったようだ。 最後に吉江氏から「最近はSNSが分断や排除といったものを可視化していて、自分に似た人たちを探すことは早いけど、逆に自分とは異質な人を他者として見てしまってどうしても歩み寄れないということが起きている。物理的な都市がまだ必要だとしたら、そういう異質な人たちが出会って、この人たちにはこの人たちの事情があると、肯定ではなく想像を及ぼすことが出来る場所として都市をテーマとしたい」という社会開発研究者としての意見とともに「この映画はそういった複雑さをそのまま出すところに、映画の可能性を見せつけられたように思いました」と改めて作品の感想を、またダースレイダー氏から「映画では住む家を追われてしまった主人公の父や車中で生活する叔父など本当に様々な立場の人が描かれているので、どこかに正解があるという見方ではなくて、こんなに色んな人たちが色んな生き方を同時にしているということをまずは観る」ということ、「また音楽が素晴らしいので劇場の音響でぜひ観てほしい」とそれぞれコメントがあり、イベントを締めくくりました。 |
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今回のトークイベントの様子はYouTubeのアーカイブから確認することが出来ます! 10/9公開の映画とあわせてぜひチェックして! |
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映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
10月9日(金)より、新宿シネマカリテ、シネクイント他全国ロードショー phantom-film.com/lastblackman-movie/ 本作の舞台となるのは、ゴールデン・ゲート・ブリッジや坂道を走る路面電車、優雅に佇むヴィクトリアン様式の家が並ぶ情緒豊かなサンフランシスコ。歴史あるこの街は、急速な発展によって地価が高騰し、富裕層が多く住むようになったことで、代々住んでいた者たちは行き場所を失っていた。主人公を実名で演じた、ジミー・フェイルズもその一人。メガホンを執ったジョー・タルボット監督は、幼なじみであるフェイルズが体験してきた物語を自身初の長編映画として作り上げた。本作は、サンダンス映画祭で監督賞と審査員特別賞をダブル受賞した他、世界各国の映画祭で高い評価を受け、オバマ前米大統領が選ぶベストムービー(2019)にも選出されている。 |
監督・脚本:ジョー・タルボット
共同脚本:ロブ・リチャート
原案:ジョー・タルボット、ジミー・フェイルズ
音楽:エミール・モセリ
出演:ジミー・フェイルズ、ジョナサン・メジャース、ロブ・モーガン、ダニー・グローヴァー
配給:ファントム・フィルム 提供:ファントム・フィルム/TCエンタテインメント
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【原題The Last Black Man in San Francisco/2019年/アメリカ/英語/ビスタサイズ/120分/PG12】
字幕翻訳:稲田嵯裕里