映画情報どっとこむ ralph この度、現在開催中の「カリコレ2019」にて、11月22日(金)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開する映画『テルアビブ・オン・ファイア』の先行上映後に、ユダヤ学者・根本豪さんのトークショー行ないました。
『テルアビブ・オン・ファイア』根本豪

日 時  8月2日(金)
場所:新宿シネマカリテ(東京・新宿)
登壇:根本豪(ユダヤ学者) 

映画情報どっとこむ ralph 今回、イスラエル・エルサレムのヘブライ大学に在学経験のあるユダヤ学者・根本豪氏が映画上映後に、トークショーを行い、映画の舞台であるイスラエルとパレスチナの背景や、現地での実際の体験談などを語り、客席を大いに盛り上げた!

「フムスは日本のラーメンみたいなもの。皆、行きつけの美味しいフムス店を知っている。」

イスラエルとパレスチナの検問所について

根本先生:私は現地に6年半ぐらい住んでいて、検問所も行き来したことがあります。日本人ということもあるかもしれませんが、映画のように呼び止められた経験はなかったです。映画に登場する検問所のアッシは、イスラエル人のキャラクタそのものでしたね。(場内爆笑) 自分のルールを持っていて、アッシは“俺の検問所”だとも言っています。イスラエルは事務仕事でも、その人の裁量権、さじ加減で物事が決定してしまうことが多いです。ビザとかもいい人だとスムーズに通るけど、イヤな人だとやたらと時間がかかってしまうことがあります。

根本先生:主人公のサラームがエルサレムから検問所を通って、北側に位置するパレスチナのラマッラーに通勤しますが、車で1時間ぐらいかと思います。おそらく検問所はカランディア検問所ですね。土曜日の夜とかひどく渋滞して、検問所の通過だけで1時間ぐらいかかることもあります。

『テルアビブ・オン・ファイア』根本豪

イスラエル人(ユダヤ)とパレスチナ人(アラブ)について

根本先生:ヘブライ大学には、アラブ人もいましたし、私の住んでいた地域も、アラブ人が多かったです。ユダヤの安息日のときには、イスラエル側は公共交通機関がストップして、お店も閉まってしまうのですが、そういう時は、お店が開いているアラブ側の地区に足を運んで、買い物をしていました。あと、イスラエルよりもパレスチナの方が多少物価が安いので、オーソドックス(正統派)のイスラエル人でもアラブ人のお店に車の修理にきたりします。また普通のイスラエル人もアラブ人の村で果物などの買い物をしていました。生活レベルでは、イスラエルとパレスチナは交流しているんです。

パレスチナ人とヘブライ語について

根本先生:主人公のサラームのように東エルサレムに住んでいるパレスチナ人は、だいたいヘブライ語ができます。イスラエル側にいるので、ヘブライ語ができないと生活ができないですし、仕事もできないので。イスラエルには、「ウルパン」というヘブライ語学校があって、私もそこに通っていました。そこで、アレフという一番簡単なレベルがあるのですが、アラブ人の人は普段ヘブライ語を聞いているので、すらすら読めてしまうし、簡単な会話は普通にできます。それは、似ている単語も多くあり、比較的アラビア語に近いということもあります。また、マリアムのように、イスラエルの大学で専門性の高い教育を受けるパレスチナ人もいます。

イスラエルの人がパレスチナのドラマを見ることはあるのですか?

根本先生:最近の事例でいうと、「ファウダ」というNetflixのイスラエルドラマがあります。イスラエル人でアラビア語のできる人がパレスチナ側に潜入してという話で、75%がアラビア語、字幕がヘブライ語のドラマです。ガザ地区のハマスとかは、「これはイスラエルのプロパガンダ!」と言っているみたいなんですが、そのWebページにもYouTubeのリンクが貼っていて、彼らも観ているのかもしれません。(笑) このドラマを見たイスラエル右派の人たちのなかには、「はじめてパレスチナ人の気持ちがわかった」という反応もあったみたいです。

アッシがパレスチナのフムスを異常に食べたがるのはなぜですか?

根本先生:フムスは、日本でいうラーメンみたいな食べ物で、イスラエルのアラブ人に聞くと、どこどこのフムスが美味いとすぐ出てくるぐらいなんです。イスラエルには、様々なルーツを持っている人がいるんですが、そのなかでアラブ圏から来た人をミズラヒームと呼びます。アッシもそうだと思うんです。顔が濃くてアラブ人っぽい。アラブ圏ではフムスはよく食べられていて、だからアラブ側のパレスチナの本物のフムスを食べたいと思ったのだと思います。

イスラエルの世代間の意識の違いについて

根本先生:映画の中でも93年のイスラエルとパレスチナが和平を結んだオスロ合意というのがキーワードになっていて、その経験で違うようです。オスロ合意後、当時学生だった私のイスラエル人の友人は、平和になると思いアラビア語を勉強したぐらいです。結局、和平は上手くいかず、失望していました。オスロ合意を知らないパレスチナ人の若い世代は、そういった希望があった時代も知らなくて、イスラエルは敵だという意識になっています。

最後に、本作の見どころについて

根本先生:コメディというタッチを取りながらも、権力関係が描かれていることによって、政治的なものが残響のように残る点が、この映画は面白いと感じました。

映画情報どっとこむ ralph テルアビブ・オン・ファイア
11/22(金)、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
テルアビブ・オン・ファイア
エルサレムに住むパレスチナ人青年のサラームは、 パレスチナの人気メロドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」の制作現場で出演者の言語指導として働いている。撮影所に通うため、毎日面倒な検問所を通らなくてはならない。ある日、サラームは検問所のイスラエル軍司令官アッシに呼び止められ、咄嗟にドラマの脚本家だと嘘をついてしまう。アッシはドラマの熱烈なファンである妻に自慢するため、毎日サラームを呼び止め、脚本に強引にアイデアを出し始める。困りながらも、アッシのアイデアが採用されたことで、偶然にも脚本家に出世することになったサラーム。
しかし、ドラマが終盤に近付くにつれ、イスラエル側を良く見せたいアッシ、リアリティを求める制作陣とパレスチナ側のドラマのスポンサー。結末の脚本をめぐって対立するイスラエルとパレスチナの間で、サラームは窮地に立たされるー。果たして、彼が最後に振り絞った“笑撃”のエンディングとは!?

映画情報どっとこむ ralph 「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション®2019」

開催期間:7/13(土)〜8/9(金) 4週間!
開催場所:新宿シネマカリテ
〒160-0022 東京都新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F
入場料金:新作 1,500円均一(リピート割で1,200円)、旧作 1,000均一

映画祭HP:
quali-colle2019/

シネマカリテtwitter:
@cinema_qualite

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監督:サメフ・ゾアビ
脚本:サメフ・ゾアビ、ダン・クラインマン
出演:カイス・ナシェフ、ルブナ・アザバル、ヤニブ・ビトン
2018年/97分/ルクセンブルク・仏・イスラエル・ベルギー/カラー/アラビア語=ヘブライ語
配給:アット エンタテインメント 
© Samsa Film – TS Productions – Lama Films – Films From There – Artémis Productions C623

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