映画『心と体と』日本最速試写会と映画美学校のマスタークラスが1月31日、アテネ・フランセ文化センターにて行われ、初来日中のイルディ コー・エニェディ監督と、最新作『勝手にふるえてろ』が大ヒット公開中 の大九明子監督が講師として登壇。
矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラ ミング・ディレクター)氏の司会のもと、映画制作を志す学生など約 100 名に向け講義を行った。 2017 年ベルリン国際映画祭では審査員長をつとめたポー ル・ヴァーホーヴェンから絶賛され金熊賞(最高賞)など 4 冠を獲得したほか、本年度アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされている。 と挨拶。 お互いの最新作の感想を求められると、 大九監督:私が 20 年間、映画を撮るときに意識的に・無意識的にやってきたことがすべて詰まっている作品で、あらゆるところに共感する気持ちで拝見しました。 と語り、 エニェディ監督:とても素晴らしかったです。主演の方(松岡茉優)の演技も素晴らしい。どんなに才能がある俳優がいても、演出家 がきちんと演出しなければまったく意味を成しません。ユーモアも深さもあって、パワフル。ちょっとアニメーション的なところもあって、ダイレクトに伝わってくる、爽やかな風のような作品でした。 と述べ称えあった。 |
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司会の矢田部氏より、講義の前に日本最速上映が行われた『心と体と』の着想について聞かれ
エニェディ監督:春先の美しい日に散歩をしていた時、私もすれ違う人も、表には全く見せないのに、心の中にはものすごくパッションがあるように感じて(このフィーリングを映画にしたら素敵だと思い)、すぐに家に帰って脚本を書き始めたんです。 と述懐。 と、いつもと異なるスタイルで制作がスタートしたと語った。 矢田部氏が、エニェディ監督作には『心と体と』以外にも動物が出演する作品があると紹介し、本作で登場する鹿の撮影についての話題に。大九監督はその演出方法に興味津々の様子。本作については、何十頭もの候補から二頭選び数か月かけてトレーニングを行ったうえ、人間らしく見えるよう撮影方法に気を遣ったという。 大九監督:(頭 の中にあったイメージ通りに)『三歩あるいて首を上げて…』と鹿が動くように、動物トレーナーさんにお願いしたん ですか? と尋ねると、 エニェディ監督:実はあれは脚本通りに撮れたんです。ものすごくラッキーでした。夕暮れのすごく短い時間の美しい光の中で、しかも雪が降ってきたりして。 と明かし場内を驚かせた。 最後に、来場者より「映画制作のパッションの源は?」という質問が出ると、 とにこやかに語った。 |
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『心と体と』 原題:Testről és lélekről/英題:On Body and Soul 4 月 14 日(土) 新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサほか全国順次ロードショー ハンガリー、ブダペスト郊外の食肉処理場。代理職員として働くマーリアはコミュニケーションが苦手で職場になじめない。片手が不自由な上司のエンドレは彼女を気に掛けるが、うまく噛み合わず…。そんな不器用な 二人が急接近するきっかけは「同じ夢を見た」ことだった。恋からはほど遠い孤独な男女の少し不思議で刺激 的なラブストーリー。 監督は長編デビュー作『私の 20 世紀』(89)がカンヌ国際映画祭でカメラドール(最優秀新人賞)を受賞した、ハ ンガリーの鬼才イルディコー・エニェディ。18 年ぶりに発表した長編映画である本作は見事ベルリンを制し、 アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるなど、賞レースで快進撃をつづける。本作でヨーロッパ映画賞 最優秀女優賞を獲得した新星アレクサンドラ・ボルベーイの熱演と透明感のある美しさからも目が離せない。 |
監督・脚本:イルディコー・エニェディ
出演:アレクサンドラ・ボルベーイ、ゲーザ・モルチャーニ、レー カ・テンキ、エルヴィン・ナジ
2017 年/ハンガリー/ハンガリー語/116 分/カラー/DCP/後援・協賛:駐日ハンガリー大使館
配給・宣伝:サンリス
2017© INFORG – M&M FILM