名匠エドワード・ヤン監督が1991年に発表した、傑作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は角川シネマ有楽町公開中、新宿武蔵野館(3/18~)他全国順次公開となります。)
エドワード・ヤン監督の生誕70年、没後10年となる節目の今年、25年ぶりに公開された本作の公開を記念し、映画監督の瀬田なつきさん、ライター・編集者の小柳帝さんが登壇するトークイベントが行われました。 日付:3月10日(金) |
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傑作『牯嶺街少年殺人事件』との出会いについて
小柳さん:公開当時に、劇場で観ることができなかった世代の方たちは、これまでVHSしかなかったので、『牯嶺街少年殺人事件』を観られずにいたのではないでしょうか。 瀬田監督:私は最初にVHSで観ました。エドワード・ヤン監督の作品は、『ヤンヤン 夏の想い出』を観て、すごいぞ!と。 夜の暗闇と光の描き方について 瀬田監督:夜のシーンは、光で見せるところと見せないところが、しっかり描かれている。黒を黒として描いているのは、本当にすごいと思いました。普通、夜のシーンは照明をたかないといけないし、ましてや夜の雨のシーンなんて撮る側からすると二重苦…という感じだけど、 小柳さん:青春映画なのに、夜のシーンが昼のシーンを上回るのでは、というくらいの比率で描かれているのもすごいですよね。闇を闇のまま見せる。照明とのしっかりとした連携があるからこそ、闇が黒味のまましっかりと写るんだと思います。今は、説明過多でテロップが多用される時代ですが、それとは真逆ですね。 青春映画としての『牯嶺街少年殺人事件』とは 小柳さん:この映画は実際に起きた事件をもとにしていて、1940〜60年代頭の台湾の時代の空気感や、時代そのものを感じることができる一方、10代の青春映画としても観ることができると思います。思春期の子供達の普遍的な感情を描いているんですよね。 瀬田監督:あと半年もしたら、変わってしまいそうな年代の役者を使って撮ると、そうしたリアルな変化の表情だったり、一瞬を切り取ることができると思います。私もそこに魅力を感じて、そういったものが撮りたいなと思っています。『牯嶺街少年殺人事件』でも、主人公のチャン・チェンがまさにそうだなと思います。だから、全然古くないし、誰もが理解できるんだと思います。 |
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<『PARKS パークス』と『牯嶺街少年殺人事件』の意外な共通点!!> 小柳さん:『牯嶺街少年殺人事件』は、4時間の尺にしては、比較的ロケーションが限られているわけですが、そのことによって、あれだけの数の登場人物たちやエピソードを交錯させながらも混乱なく見せることに成功しているばかりか、時代の閉塞感と共に、「牯嶺街」という小さなコミュニティ特有の行き場のない感じを見事に表現できているのではないでしょうか。この映画には、そんな演出上のマジックが随所に感じられると思います。私が観たのは、20代最後の歳。20代で観るのも衝撃を受けますが、年代問わず心に刺さる作品だと思うので、是非劇場で観て頂きたいですね。 と、大盛り上がりのイベントとなりました。3月11日より公開となり満席続出の大ヒットスタートを記録。 |
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物語・・・ 1960年代の台湾・台北。夜間中学に通う小四(シャオスー)は不良グループ〝小公園“に属する王茂(ワンマオ)らといつもつるんでいた。小四はある日、小明(シャオミン)という少女と知り合う。彼女は小公園のボス、ハニーの女で、ハニーは対立するグループ〝217”のボスと、小明を奪い合い、相手を殺し、姿を消していた。小明への淡い恋心を抱く小四だったが、ハニーが突然戻ってきたことからグループの対立は激しさを増し、小四たちを巻き込んでいく。 角川シネマ有楽町大ヒット公開中!新宿武蔵野館(3/18~)ほか全国順次公開! |
監督:エドワード・ヤン
出演:チャン・チェン、リサ・ヤン、チャン・クオチュー
1991 年/台湾/236分
(c)1991 Kailidoscope
配給:ビターズ・エンド