西武鉄道株式会社主催により第4回を迎える≪ちちぶ映画祭2016≫最終日に樹木希林さんが登場しました。
【映画鑑賞】【秩父グルメ】【秩父観光】という、≪秩父が誇る魅惑と良質の三味≫を絶妙にブレンドし、≪鉄道≫で結ばれた地元と沿線からのお客様と一体になりながら、映画を媒介とした地域と季節に根付いた風物詩=≪祭≫としての祝祭的空間を目指す本年度映画祭。 その最終日にふさわしく、第68回カンヌ国際映画祭への正式出品&オープニング上映でも話題を呼んだ『あん』上映に、主演:樹木希林さんがスペシャル・ゲスト登壇し舞台挨拶が行われました。 『あん』上映&樹木希林さん 舞台挨拶トーク |
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樹木さん:今日は雨が降っているので、きっとお客様は3人くらいでは?と思っておりました(場内笑)私は、お一人でも登壇しますけど。それが、こんなに沢山のお客様にお集まり頂き、驚き嬉しく思います。
樹木さん:小学校の頃、住んでいた池袋は当時は焼け野原でした。ただ、母がやり手でして、当時木造2階建ての家を建てそこに住んでおりました。当時、あの界隈で2階建ては2軒だけ、我が家と西武デパートです。今の西武デパートを思うと、まさに隔世の感が致します。ねえ、若林さん(客席の西武鉄道代表取締役社長の若林久さんに話しかける)。私は73歳になり、西武も立派になりました(場内笑)。ちなみに、この後上映の「海よりもまだ深く」(こちらにも樹木希林さんは出演)も舞台が清瀬市でまた西武線よね。(笑) と、挨拶だけで、引き込む希林さん。 |
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MCに主演作『あん』 河瀬直美監督/共演者/撮影について問われ
樹木さん:作品に登場する西武線沿線の久米川(東村山市)の見事な桜並木、私も出演して初めて知ったのですが、あの場所を見つけてきた河瀨直美監督の感性、素晴らしいなと思います。ただ、ちょっと変わった方ですけどね、河瀬監督は(笑)私が言うんだから、ね(場内笑) ※ここで樹木さんの話に相槌を打つMCに対して 樹木さん:歳を取ると、相槌や合の手を入れられると、次に話すことを忘れてしまうのよね(笑)だから、あなたは相槌や合の手無しでそこに座っていれば良いから。キューは私が出します(場内爆笑) 河瀬直美監督が凄いのは60時間以上撮影した作品を2時間弱にまとめる手腕。かなりバッサリCUTしていて、出演した筈なのに完成した作品に出ていない方が沢山いるのよ。市川悦子さんも、凄く長い台詞を必死で覚えて撮影したのに、そのシーンが丸々CUTされててね(笑)さすがに怖くなったのか、河瀬監督は試写にお呼びしなかったみたいだけど、どこかでご覧になってのね。 (市川さんを真似た喋り方で)「観たわ。でも、私、あんまり出てなかったわね。でも良い映画だったわ。」と仰ってました(場内爆笑) 樹木さん:あと、浅田美代子さんからは(これも浅田さんの喋り方を真似ながら)、『年相応の役のオファーが来なくて、このままだと私、バラエティ・タレントになってしまう』って相談を受けたので(笑)、この作品のオーディションを受けること勧めたの。でも、河瀬監督と話してるのを見ていて、これは駄目だわ、と思ったの。そうしたら、美代子さんが監督に呼ばれたって言うから、受かったんだと思ったけど…。でも映画を観たら、彼女が受かったんじゃなくて、多分、一緒に出演している彼女の飼っている犬が必要だったんじゃないかしら(笑)でも、出演出来たんだから、人生、どこにご褒美が転がっているか判らないなと。 永瀬正敏さんは、余り私と話さないようにしていましたね。「小泉今日子さんとは本当にもう駄目なの?」とか何でもかんでも、私は聞いてしまうので(場内爆笑)ただ、元から良い役者でしたけど、年齢と共に益々素晴らしい役者さんになってると感じます。最近は、“子供が欲しい”とかとも口にするので、どなたか良い方がいらしたら是非紹介して下さい(上映爆笑) |
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さらに主演作『あん』についてMCが特に印象に残っているという永瀬さんとのシーンの台詞=「教えない」をお願いすると。
樹木さん:「お・し・え・な・い」?これで良かったかしら?どんな感じで喋った台詞か忘れてしまったわ(笑)この台詞は、高倉健さんがSMAP×SMAPに出演された時、SMAPからの質問に悪戯っぽく答えた台詞=「教えません」を参考にしてます(笑) この作品が描く世界をあらためて振り返ると、<人は本当は自由な筈なのに、自由にしていないのは自分の心ではないか?>そう感じますね(場内拍手)世間の方々は私の体調を皆さん気遣って下さいますが、この作品が描く自由と不自由さ、その心の部分を考えたり、またパラリンピックなんかを拝見していても、私は何一つ愚痴など無い(位に恵まれている)と感じます。 ただ、世の中には色んな方々がいらっしゃいますからね。五体満足でも不倫をする方とか(場内爆笑)でも、私たち、芸の世界に身を置き、芸事に生きる人間は、<観られてナンボ>という部分がありますから。ですから、この10月~11月、歌舞伎の公演は相当盛り上がるんじゃないでしょうか?(場内爆笑) |
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急遽、客席への質問タイムを実施!!
Q:お客様からの<お孫さんも出来て、色々あったでしょうが、今は内田裕也さんとラブラブなのではないですか? 樹木さん:あなた、何を言っているの?内田裕也さんは内田裕也さんで、変わらないんだから(場内爆笑)それは、一時は良い男だな、と想った時期もありましたけど、最近はまるで何かのキャラクターみたいだなと思ってます(笑)あの髪型にしてステッキとかを持ったら、誰でも内田裕也みたいに見えるんじゃないかしら(場内爆笑)電話料金以外は全部私が払ってますし(笑)でも、そんな人でも誰かが受けなければいけませんから。ただ、あの方は、どうも私の方が先に死ぬと思っているらしく、この前は“お前、ハンコの置き場所とはちゃんとしておけよ”と仰ってました(場内爆笑) 最後に、今後の予定について聞かれると・・・ 樹木さん:何もないわよ(場内笑)ただ、人が死ぬ確率は100%ですからね。私は癌になって、それまでは<いつかは死ぬ>だったのが<いつでも死ぬ(可能性が有る)>に変わりました。それは中々に覚悟が要る事でかつ、私は女優はある意味、<意地悪>でなければいけないと思っていますが、他人に対してだけではなく、自分に対しても<意地悪>であること、は意識しています。そんな意識と、そして<死に対する考え方>の覚悟を持って行くこと、それがこれからの私の楽しみであり、生き方です。今日はありがとうございました。 映画祭公式サイト: |
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『あん』 やり残したことはありませんか? たくさんの涙を越えて、生きていく意味を問いかける、限りない美しさを描いた優しき物語! 縁あってどら焼き屋の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎(永瀬正敏)。 そのお店の常連のワカナ(内田伽羅)。ある日、その店の求人をみてそこで働くことを懇願する一人の老女、徳江(樹木希林)が現れ、どらやきの粒あん作りを任せることに。徳江の作った粒あんはあまりに美味しく、みるみるうちに店は繁盛。しかし心ない噂が、彼らの運命を大きく変えていく…。 監督・脚本:河瀬直美 |