昨日、東京国際映画祭コンペティション 『未熟な犯罪者』のゲストによる記者会見が行なわれましたのでご報告! ■ 日時場所10月26日(金) |
記者会見内容
カン・イグァン監督とジグの母親役を演じたイ・ジョンヒョンさん、ジグ役を演じたソ・ヨンジュさんに様々な質問にお答えいただきました。
Q: この美しい物語を書いたきっかけを教えてください。
カン・イグァン(監督): 最初に考えていたエンディングは異なるものでした。ジグと母親、そしてジグのガールフレンドのセロンはそれぞれ犯罪を犯した経験がある若者たちなので、弱いものが助け合い家族を成していくというものでした。よってジグが少年院から出てきたところで彼らが一堂に会する、という構成ですでに撮影も行っていました。ですが撮影や編集の段階で何か作為的だと感じました。最初は寂しい思いをしていたジグが母親と会い、そして再び離れ離れになってしまったが、最後は母親が自ら子供に会いに行く意思をもつ、という希望を感じさせるエンディングが良いのではないかと思い撮りなおすことにしたのです。
Q: ラストの後にこの二人はどうなると思うか、監督は役者の2人と話をしましたか?そして俳優のお二人はどうなると思いますか?
監督: 撮影が開始した時点で脚本を書き終えていたわけではなく、撮影しながらその都度、この状況に置かれたら二人はどうするだろう、どんなセリフが相応しいだろう、と演じている彼らと話し合いながら手を加えていきました。最後のシーンもそのようにつくりました。彼らは、今後母と子は一緒に暮らしていくのではないかと言っていました。
ソ・ヨンジュ(俳優): 僕が考えるエンディングですが、少年院に入っている間、母親はしょっちゅう面会に来てくれたのではないかと思います。そして出所の時は誰かに借りた車ではなく自分の車で迎えに来てくれ、家も用意してくれているのではないかと思います。
イ・ジョンヒョン(女優): ヨンジュのエンディングもよいと思いますし、実際の映画のエンディングも好きです。いずれにしてもあの二人は希望をもって一生懸命頑張り、今後は犯罪を犯すことはないと思います。
Q: 母親役はどんな思いで演じましたか?
イ・ジョンヒョンさん: 母親のヒョスンも元々は家出をしたり、素行に問題がある若者でしたので、気性が荒いところがあると考え監督ともそう話し合いました。そんな彼女が母となったことで辛いことがあっても泣き言を言わず、凛々しくたくましく生きている、そんな女性を演じようと思っていました。ただ彼女は極端に悪い状況に追い込まれると、学校にも通えなかったり、盗みを働いていたことや少年院に入ったこと、未婚のまま母親になった悔しい思いや社会に捨てられたという思い、そういった元々もっている激しい部分も出てくる女性だと考えていました。
一番難しかったシーンは私が床を転がりながら叫ぶシーンです。友達の家から出ていけと言われる場面なのですが、自分が置かれている過酷な状況を改めて認識して感情を爆発させるというシーンでしたが、その感情をつくるのが大変でした。テイクは1回ですみましたが、時間がなくリハーサルができず、気持ちをつくっていく5分か10分間を何か月もの時間に感じました。
Q: ジグが家庭裁判所で判決を受けるときに、「罪を軽くしてくださいよ~」と面白い顔をしておどけましたが、あれは監督の指示ですか?それとも自分で考えたものですか?
ソ・ヨンジュ(俳優): 最初に、あのシーンの演技はもっと重かったのです。すると監督が重すぎるのでもう1回やってみようと何度も撮りなおしたので、良いシーンになったのだと思います。
監督: 彼はあんなことを言っていますが、元々とても良い演技をしてくれたんですよ。私は細かい表情までは指示しないのですが、役者たちとはたくさんの話し合いをした上で撮影に臨みます。撮影がいったん始まると役者の自由にさせています。ただテイクは多いと思います。あのシーンは本物の裁判所で撮ったのですが、恐らく彼もそこに実際に身を置いて考えた上で演技をしてくれたのだと思います。
保護観察中の16歳の少年が祖父を失い、天涯孤独の身となろうとするその時、死んだはずの母親が現れる。彼女は17歳の時に彼を産み、逃げたのだった…。未熟すぎる母親と大人になれない少年のせつない関係を、瑞々しさ溢れる役者の魅力を得て繊細に綴った親子の物語。