僕は一体どこへ歩き出せばいいナチズムの足音迫る1931年のベルリン、僕は一体どこへ歩き出せばいい——? ベルリン国際映画祭で絶賛され、ドイツ映画賞で最多10部門ノミネート主要3部門を受賞したドイツ映画『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』が今週6月10日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開となります。 1931年。 そしてこのたび、ドミニク・グラフ監督のインタビューが到着。本作が日本初公開となるドイツの名匠が、ファビアン(トム・シリング)とコルネリア(ザスキア・ローゼンダール)のラブストーリーについて、「現代」と1930年代ドイツとのつながりについて、そしてスーパー8などを使用した刺激的な映像表現についてなどを語ってくれてます。 |
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ドミニク・グラフ監督インタビュー
ドミニク・グラフ(以下DG):現代とのつながりを作りたかったのです。僕はこの映画をドキュメンタリー風に始めたら素晴らしいだろうと考えました。僕たちはカメラを構えてトンネルを通り抜け、過去の時代に至ります。そこには光が降りそそいでいますが、同時にドイツの最も暗い時代——これからどこまで暗くなっていくのかさえ分からないような時代でもあるのです。 Q:ケストナーの原作「ファビアン あるモラリストの物語」をどのように脚本にしていったのでしょうか? DG:僕がこの小説を初めて読んだのは、1979年の西ドイツでのことでした。魅力的な、素晴らしい文学だと思いました。何にもましてラブストーリーであり、対話であり、叙事的な観察記録であり……。僕は、“これはファビアンとコルネリアのラブストーリーにできる”と直感しました。街路やカフェを舞台にした、エピソードの集積からなるラブストーリー。そしてそれをめぐる時代性を、構造化を排した手法で捉えようと思ったのです。小説「ファビアン あるモラリストの物語」は、単なる状況や感情、考えの奔放な叙述として素晴らしい作例です。ある瞬間における、何人かの人物について記述したもの。その場面はほとんど全てケストナー的です。それはジャズのよう、終わることのない即興演奏のようだといえますね。 Q:トム・シリングを本作の主役に据えようと思った理由はなんですか? DG:トム・シリングがこの役を演じたくないと言ったなら、僕はこの映画を撮らなかったでしょう。僕にとって彼は、この複雑な主人公を演じる上で理想的な俳優でした。 Q:この映画は部分的にスーパー8で撮られていますね。どのくらいデジタルで撮られているのですか? DG:80%くらいはデジタルで撮られていて、スーパー8の映像やベルリンを映したモノクロのアーカイブ映像を組み込みながら編集しました。とても音楽的な作業でした。 Q:ドイツでは近年、この時代を背景にした映画やテレビ作品が多く、それは「現代が当時の社会状況に似ているから」だという声を聞きましたが、どう感じますか? DG:はい、その通りです。危機的な政治状況のために、ドイツでは今再び、あの時代への関心が急激に高まっています。私は間違いなく2022年のドイツ社会を当時と重ね合わせています。あのポーランドや右翼・左翼の間で引き裂かれ、政治が麻痺した共和国と。しかし今、ドイツだけではなく、世界中のほとんど全ての場所が同じ状況にあると言えるのではないでしょうか? |
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本編映像の一部到着また、それに合わせ、本編映像の一部を特別に公開。 |
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『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』英題:Fabian – Going to the Dogs公式サイト: ストーリー |
原作:エーリヒ・ケストナー「ファビアン あるモラリストの物語」(みすず書房)
監督:ドミニク・グラフ
出演:トム・シリング(『コーヒーをめぐる冒険』『ピエロがお前を嘲笑う』『ある画家の数奇な運命』)、ザスキア・ローゼンダール(『さよなら、アドルフ』『ある画家の数奇な運命』)
2021年 ドイツ 178分 スタンダード PG12
字幕:吉川美奈子
配給:ムヴィオラ
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