2012年1月に公開され大ヒットを記録した『しあわせのパン』のスタッフが、北海道を舞台にしてお贈りする

映画『ぶどうのなみだ』が現在公開中・・・。

そんな中、2作品のフードコーディネートを担当した石森いづみさんとプロデューサーの岩浪泰幸によるトークショーつき『しあわせのパン』上映会が開催されました。

ぶどうの涙

日 時:11月4日(火)
会 場:横浜そごう
登 壇:フードスタイリスト:石森いづみ、プロデューサー:岩浪泰幸

Q:映画の仕事をするきっかけ、伊丹作品について

石森:昔、フードコーディネーションの仕事は映画の世界にはありませんでした。最初にフードコーディネーターが映画に参加したのは私が担当した伊丹十三監督の『たんぽぽ』でした。昔はいわゆる“消えもの”として装飾部の方がやっていました。『たんぽぽ』はラーメンの映画だったので伊丹監督やスタッフの方が「それではだめだ」となり現場に呼んでくれました。それから映画の仕事をするようになりました。

Q:『しあわせのパン』について

岩浪:『しあわせのパン』は夏・秋・冬の3つの季節を描いた作品です。北海道洞爺湖の月浦のパンカフェに集まる人々がそこを訪れることによって心のわだかまりがほどけていくという内容の映画です。

石森:お話をいただいたとき迷ったのですが、私自身が洞爺湖に1軒家を持っていたのでご縁を感じてやることにしました。カフェ・マーニで原田知世さん演じるリエさんが毎朝コーヒーを入れます。ネルドリップという晒しの木綿を使ってドリップする方法なんですがとってもコーヒーが美味しくなります。今公開されている吉永小百合さんの『不思議な岬の物語』でもこの入れ方でやっています。私たちの方がずいぶん早くからやっていたんです(笑)

岩浪:マー二のモデルになった実際のカフェでもこのやり方でやっていたんです。カフェの奥様からやり方を習いました。現場もコーヒーのいい香りが漂っていました。

Q:『しあわせのパン』の撮影現場に関して

石森:私はとても楽しくしていたんですが、映画の撮影現場はとても過酷なんです。みんな合宿生活で。冒頭の大泉さんがパンをこねているシーンはとてもきれいですが、そういう画を撮るためには役者・監督・スタッフ・食材のすべての息が合わないとダメなんです。パンはとりおきができないですし料理も1番温かい状態で出さないといけません。映画に登場するパンは北海道の小麦で作られているのですが、次の日のスケジュールが出たらそれに合わせて毎日パン生地をこねるという感じでした。あと劇中に石の窯で焼いたトマトが出てきてとても印象的なシーンになっています。そのあとパン生地に載せてやいてフォカッチャというパンにするんですがこれがとってもヘルシーで。料理をするリエさんのキャラクターを考えると美味しいだけじゃなくて清楚でヘルシーな料理がいいなと思いました。具体的には油分や糖分を控えた料理にしました。

岩浪:本編内でキャストは本当に食べていますし、撮影後はキャストだけでなくスタッフも美味しくいただきました。

石森:料理を画面を通して美味しく見せるという意味では“油でジューっとあげる”“甘いものをとろーっと見せる”というシーンが分かりやすいです。ですが、この映画ではそちらの方向性をおさえています。みんなで分け合って食べる料理、喜んでもらえる料理はどんなものか考えて献立を考えました。誕生日ケーキでも生クリームのケーキではなくろうそくを1本立てたクグロフの方が合うな、と考えていくのがフードコディネイトという仕事です。美味しさを求めるのは簡単ですがそれだけではないんです。

岩浪:劇中に登場する料理の食材も北海道産にこだわっています。秋のシーンでコロッケが出てくるんですが、最初石森さんからは里芋のコロッケをご提案いただいたのですが北海道では里芋をあまり食べないことが分かり、現場で相談してユリ根のコロッケにしました。とても美味しかったです。また、余談ですが劇中に出てくるワインは月浦ワインです。このワインに出会ったことで第2弾はワインをテーマにしようということになりました。それが今公開されている『ぶどうのなみだ』です。

石森:『ぶどうのなみだ』ではワインに合う料理ということでしたが、難しかったですね。料理をするのがキャンピングカーで旅をしているエリカ(安藤裕子)なので、ボヘミアンチックな料理を考えました。東欧っぽいというか、肉は焼くだけ、野菜もシンプルに調理をするだけでおいしくて力強い料理になっています。調理するという意味でも『ぶどうのなみだ』の方が大変でしたね。『しあわせのパン』はカフェの中なので温めて出すのは簡単でしたが『ぶどうのなみだ』は外での撮影だったんでキッチンがなかったんです。日本の映画でここまでワインと向き合った映画はないと思うのでぜひ見ていただきたいです。この先もワインと料理という分野を突き進んでいきたいです。

Q:『しあわせのパン』と料理

石森:真冬の老夫婦が出てくるシーンでまめのパンが出てきます。白いパンという監督からのオーダーがあったので、北海道らしいまめをこっくり煮たパンを作りました。もう1つ印象的なのがオリーブの木をくりぬいた木のボールです。三島監督が好きで『しあわせのパン』にも『ぶどうのなみだ』にも登場します。実は伊丹監督も好きで『静かな生活』で宮本信子さんがパンをこねて怒りを発散させるシーンで登場します。イギリスで見つけて、結構重いんですけど飛行機に乗せて抱えて持ってきました。ぜひどこに出てくるか見てください。『しあわせのパン』や『ぶどうのなみだ』では直接的ではない、心で噛み砕いた後にふっと感じる味わいを表現しました。映画を見たらパンが食べたくなってコーヒーやワインを飲みたくなると思います。私は江戸っ子だけど北海道も大好きです。

岩浪:『しあわせのパン』は新しい北海道を作るつもりで作った映画です。カニやイクラだけではない北海道の魅力を伝えたいと思っています。北海道産の小麦・食材・小道具を使っていてそれらを作った人たちの思いが詰まった映画なんです。

『ぶどうのなみだ』

公式サイト: budo-namida.asmik-ace.co.jp

大ヒット公開中!

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フードスタイリスト:石森いづみ
林忠デザイン事務所でデザインの基礎を学び、フランス、パリにてファッション特派員のアシスタントを経験。帰国後、フリー編集者を経て「きょうの料理」のフードスタイリストに。故・伊丹十三監督『タンポポ』(85)にも参加。『しあわせのパン』(11/三島有紀子監督)に続き、フードスタイリストを担当。

ストーリー・・・
北海道・空知。父親が残した葡萄の樹と小麦畑のそばで、兄のアオはワインをつくり、ひとまわり年の離れた弟のロクは小麦を育てている。アオは“黒いダイヤ”と呼ばれる葡萄ピノ・ノワールの醸造に励んでいるが、なかなか理想のワインはできない。そんなある日、キャンピングカーに乗ったひとりの旅人が、突然ふたりの目の前に現れた。エリカと名乗る不思議な輝きを放つ彼女は、アオとロクの静かな生活に、新しい風を吹き込んでいく・・・。

監督・脚本:三島有紀子『しあわせのパン』
出演:大泉洋 安藤裕子 染谷将太 / 田口トモロヲ 前野朋 りりィ きたろう / 大杉漣・江波杏子

音楽:安川午朗  
(C)2014『ぶどうのなみだ』製作委員会
 

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