およそ8年ぶりの新作となる映画『無頼』を手がけた名匠・井筒和幸監督が、“映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」に登場。 |
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MCを務める映画評論家の森直人にとって、「私にとって、ヒーローの一人」とまで言われる監督が、本作を手がけた真意や、自身の思う“昭和史”、さらには森から見た井筒監督の作家性に至るまで、互いに大いに語り合っている。 冒頭の森の発言に対して、自身のことを「ケチなヒーローでございます」と自虐的に返答する井筒監督。笑いを誘う、軽やかな流れからトークはスタートする。森は監督のキャリアを改めて振り返り、世に出回っている“井筒和幸監督情報”には、誤りが多いことに言及。これには監督も「流言飛語が飛び交っている」と思わず苦笑。さらに森は、なんと井筒監督が期間限定のユーチューバーとして、自身のYouTubeチャンネルを開設していたことなども紹介している。 本作のテーマを「ザッツ昭和史」と語る監督。「昭和というものはいったい何だったのか?とうことを、ヤクザ映画のかたちで語った」と解説。“井筒版『ゴッドファーザー』”ともいえる本作だが、森は「劇中で『ゴッドファーザー』への言及もありますが、井筒監督がここまで直接的に映画へのオマージュをしているのも珍しい」と指摘、「本作はいわば『アイリッシュマン』ですよね。マーティン・スコセッシと井筒和幸が、同時期に同じような発想で戦後史映画を立ち上げた」と続ける。「『アイリッシュマン』は1950年代から80年代までの戦後アメリカの裏面史で、ある象徴的な人物を置いて、3時間半の尺の中にその裏面史を入れ込んでいる。ここの構図が似ている」と森はさらに続ける。そして、スコセッシ監督作における『ミーン・ストリート』が、井筒監督の場合は『ガキ帝国』だとの発言も。 そして森は、「本作を観て、井筒監督のバランス感覚に痺れた」と述べている。これに監督は「バランス感覚なんてものは、ハナからない」と返すが、「商業娯楽映画の中で、ハードコアな作家映画を作ってきた井筒監督は“バランスの人”だ」と森が応酬。ここまで言われるとさすがの監督も「そうなのかなあ……」とこぼしている。この根拠について森は、「今回の『無頼』で言えば、視点がずっとニュートラル。どこにも依らず、真ん中を駆け抜いていっている」と語る。井筒監督自身も「突き放して描こうと思った。(ヤクザ者である彼らを)冷たく見つめることが必要だと思った」と、この作品や、劇中に登場する人物たちに対する姿勢を明言している。 |
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『無頼』はK’s cinemaほか全国にて順次公開中。
公式サイト: 公式ツイッター: 【ストーリー】 |
監督:井筒和幸
出演: 松本利夫(EXILE) 柳ゆり菜 中村達也 ラサール石井 小木茂光 升毅 木下ほうか
2020年/日本/146分/カラー/ビスタサイズ/5.1ch
©2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム R15+