長編劇場デビュー作『佐々木、イン、マイマイン』の内山拓也監督が、“映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」に初登場。MCを務める映画評論家の森直人を前に、物語の着想や、映画としてのギミックなど、作品の細部に至るまで語り尽くしている。それになんと今回の収録は、本番組でも異例の2時間超えです。 |
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服飾系の学校に進み、スタイリストのキャリアをスタートさせるかと思いきや、映画の現場に携わりはじめた内山監督。中野量太監督作『湯を沸かすほどの熱い愛』の現場では、サード助監督として参加したという。東京国際映画祭での上映を経て、ついに封切られた『佐々木、イン、マイマイン』のメイン館は新宿武蔵野館。内山監督が20歳頃からアルバイトをやってきた、非常に思い入れ深い場所なのだという。これはいわゆる“凱旋上映”だ。 本作は、新進気鋭の俳優・藤原季節が主演を務めた青春映画で、誰の心の中にもいる“ヒーロー”との愛おしい時間を描いたもの。俳優になるために上京したものの、鳴かず飛ばずの日々を送る27歳の悠二(藤原)は、ある日、高校時代に圧倒的な存在感を放っていた同級生・佐々木(細川岳)と仲間たちとの日々を思い出すようになる。映画は、過去と現在とが交差する構成となっており、青春時代特有のきらめきと、愛おしくも戻らない日々への哀愁がストレートに画面に焼き付けられる。King Gnu の「The hole」のMVなどで注目を集める内山監督を筆頭に、主演の藤原、細川、萩原みのり、村上虹郎ら若手実力派が一堂に会している本作。またタイトルロールである“佐々木”を演じた細川は、企画の段階から携わっている。 「すでに内山監督から、ひとつ負けを食らっているんです」と切り出すMCの森。劇中で、悠二と佐々木がボクシング映画を観ている場面があるのだが、そのシーンを観た森は反射的に「あ、『レイジング・ブル』だ」と思ったのだという。ところがここで引用されている作品は、1949年制作のカーク・ダグラス主演作『チャンピオン』。映し出されるシーンとしては、両作とも非常に似ている。これについて内山監督は、「僕が個人的にボクシングがすごく好きなんです。それに本作では直接的にはボクシングを扱っていませんが、“触れて”はいます。タイトルを含めて、本作に一番しっくりくるのが『チャンピオン』だと思ったんです」と語っている。 映画の作りにおいて、どこか懐かしさを感じさせながら、それでいて新しさも感じさせるのが『佐々木、イン、マイマイン』。「海外の作品で好きなものがあったとして、それをマネするのではなく、僕らなりに置き換えたうえで、アップデートさせて彼らと戦って勝たなければならないと思っています。ある対象を撮るとき、そこには“切実さ”がなければならないと思うんです。それに、切実さを持ってやれる仲間が僕らにはいるはずだと思います。自戒を込めて、“あなたが撮らなければならない理由”というものの重要さを考えなければいけないなと。世代で区切られたりもしたくない。みんなで団結して、これを表明していきたいです」と内山監督は自身のスタンスを明示している。森はこの言葉にしみじみと感動したようだ。 第25回新藤兼人賞において、銀賞に輝いた内山監督。この賞は、日本映画製作者協会に所属するプロデューサーが、「この監督と組んで仕事をしてみたい」「今後この監督に映画を作らせてみたい」という観点から、その年度のうちで最も優れた新人監督を選ぶもの。内山監督はすでに各方面から熱い視線が注がれているのだ。作品本編だけでなく、このトークの内容からもその片鱗がうかがえる。“エンタメとアートの両立”というテーマや、内山監督と森の共通点、“ショットについて”などなど、必見の内容だ。 |
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『佐々木、イン、マイマイン』
https://sasaki-in-my-mind.com/ あらすじ |
藤原季節 細川岳
萩原みのり 遊屋慎太郎 森優作
小西桜子 三河悠冴 河合優実 井口理(King Gnu)
鈴木卓爾 村上虹郎
監督:内山 拓也 脚本:内山 拓也、細川 岳
撮影:四宮 秀俊 照明:秋山 恵二郎
録音:紫藤 佑弥
美術:福島 奈央花
衣裳:松田 稜平
ヘアメイク:藤原 玲子
スチール:木村 和平
助監督:中村 幸貴
制作担当:槇原啓右
アシスタントプロデューサー:小元 咲貴子
プロデューサー:汐田 海平
配給:パルコ