監督・高橋伴明(66)、主演・奥田瑛二(65)で、人生の半分を過ぎようとする男たちが探し続けている“不確かなもの、”人間が誰しも経験する“老い”が“性”にも追いつく時間を葛藤と焦燥感に苛まれ、それでも求め続けるしかない人生を描いた映画『赤い玉、』。
その初日舞台挨拶が行われ、主演の奥田瑛二さんの他、不二子さん、村上由規乃さん、土居志央梨さん、花岡翔太さん、上川周作さん、柄本佑さん、高橋伴明監督が登壇しました。 9月12日(土) |
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MC:高橋監督、初日を迎えられて、どのような想いでいらっしゃいますか?
高橋監督:常に映画は観て頂く方に届いて完成すると言っているんですけれど、まさにその映画の完成に向かう初日だなと思っています。だから見て頂く方がどう感じるかで映画ってこれからも変わっていくと思うんですね。それが楽しみです。 MC:高橋監督、この映画を撮ろうと思ったきっかけについてお教えください。 高橋監督:大学の教員になって長いんですけれど、学生が作る映画を随分見てきて、どうも性表現から逃げているなとずっと感じていました。ちょっと授業で煽ったんですけれど、シナリオはできてくるんですけれど、シナリオに書いてあるんだけれど、それを撮らない。だったらこっちでこういう現場を作って、スタッフキャスト共に、学生をそういう現場に呼びたいなと思ったのがきっかけです。 MC:今の日本でこういう映画を作る意義について、どう思われましたか? 奥田さん:伴明(監督)と『どうだ今の日本の映画界は?』『エロスが足りない』『なぜ足りないんだ?』という話を延々と話し、『こういう企画がある、やってくれないか?やるならば奥田で当て書きをするぞ』ということだったので、そこまで前段で『日本映画、外国映画のエロスは日常的なことを話していたら、世界に冠たる日本映画としては全く途絶えてしまった、恥ずかしながらエロスがないという現状を、同世代として打破しようではないか』という想いで参加しました。 不二子さん:エロス作品があるということは、私が出演できる作品があるということなので、私にとってはすごく嬉しいです。65になる奥田さんが体当たりでやっていらっしゃって、私も負けないように、60過ぎまで頑張ります。 柄本さん:意義っていうのは僕はあれなんですが、不自然にお乳を出さないようにしていると、作品を観て思ったりすることはあったりします。それはエロスとは違うかもしれないんですけれど。ベッドシーンの時に隠れていると、観客として僕もがっかりしてしまうので、そういう作品もあって、爽やかな作品もあってということだと思います。あまりにそういった作品が少ないと思います。むしろ『赤い玉、』の方が爽やかな作品に見えてしまう、というのがあります。 |
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MC:では、オーディションに受かってキャスティングされた、学生側のキャストの皆さんから、この企画を聞いた時の反応や、現場でのエピソード、この映画の製作を経て学生の間で変わったことなどお聞かせ頂ければと思います。
村上さん:初めて脚本を読んだときは、『大学でこんな作品をやるんだ。でもぜひやりたいな』と思って、多分学生でかかわったスタッフとかも、映画を作る上での不自由さもありながら、自分のしたい表現や自由な表現をする過程を受け止めているんじゃないかと思っています。お乳の出るシーンの撮影の時、奥田さんが学生スタッフたちに、『こういう時は男性スタッフは下手には立たないんだよ』とか教えていらっしゃいました。すごく楽しく撮影ができました。 MC:土居さんはいかがですか? 土居さん:先ほどの舞台挨拶で”つちい”さんと紹介されてしまって、役者としてもっと頑張ろうと思いました。(笑) お乳の出るというか、大画面で肌色が映ると結構ドキドキしますよね。豊かだなと思います。そういう映画に学生が大勢参加できたというのは、すごくいいなと思いましたし、そういうところにいれて、すごく幸せな撮影期間中でした。 高橋さん:本音だったんじゃないの?(笑)(会場爆笑) 土居さん:和気藹々と撮影して、とても楽しかったです。 花岡さん:僕は監督のゼミを取っていまして、学生の中で一番最初に脚本を読んでいたと思うんですけれど、この脚本を見て、自分のやっている役(学生映画の監督をやる草食系男子)を見た時に、『これ、自分だ』と思いました。自分が一番合っているというか、この役は自分がやって、役と一緒に成長できるであろうと感じて、演じさせて頂きました。 奥田さん:前貼りをするとそういう風になるんですね。僕はすっぽんぽんで出ているんですけれど、デビュー作の『もっとしなやかに もっとしたたかに』で前貼りをしました。撮影が終わって、夜の11時頃に一人で控室で取るんですけれど、当時はガムテープだったので、こびりついて、半分しか取れなくて、はさみで切った。前張りを取っている時は涙が出ました。空しくて。ですから、今後は、そういう仕事がきたら、前貼りはしない方がいいと思います。(会場爆笑) 上川さん:実は初日なのに既にクレームが入っておりまして、予告編で、いきなり濡れ場から始まっちゃうんです。僕はその濡れ場を演じさせて頂いていまして、ある方が電車の中で予告編をスマートフォンで観ていて、電車の中で喘ぎ声が響いてしまったというクレームがきました。映画の中では劇中の監督に濡れ場を止められてしまうんですけれど、実際はもっと濡れ場できますということだけはここで言っておきたいです。 |
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MC:ありがとうございます。柄本佑さんは、実生活では義理のお父様である奥田瑛二さん演じる”新作を何年も撮っていない映画監督”の持ち込み企画をはねつける、若手映画プロデューサー役を演じられています。実はお2人は2013年の奥田さんの監督作品『今日子と修一の場合』でも、監督と俳優という形でタッグを組まれていました。奥田さん、せっかく持ち込んだ脚本を無碍にも捨ててしまう、映画プロデューサー役での柄本さんとの共演はいかがでしたか?
奥田さん:うちで一緒にご飯を食べたり酒を呑んだりするんです。『今度伴明の映画に出るんだよ』『えっ、伴明さんの作品、僕、大好きです。』と言ったので、『そうか。じゃあ出るか?』『えーっ、いいんですかね?!』ということがあって、伴明に、『佑が出たいと言っているんだけどどう?』と言ったら、『それは嬉しいな』ということで、最初スケジュールが無理っぽかったんですが、どうにか調整がとれて、私の書いた台本を映画の中でゴミ箱にぽんと捨てる役だったんです。面と向かって芝居をした後にあの台本を捨てられた時は、本当に切なくて空しい想いをしたんですけれど、そう思う芝居をしたってことは、逆に言うととてもとても嬉しかったです。いい緊張のある現場でした。 柄本さん:僕は高橋監督の映画、元々好きで、見せて頂いていて、『火々』なんて何十回も観させて頂いているんですが、その伴明監督の作品に出させて頂けるとのことで、『やった!』と思っていたら、奥田さんとのシーンしかなくて、奥田さんとは一番最初に監督として現場でご一緒したので、僕としては(『赤い玉、』の)現場に入っても監督奥田瑛二というのがどこか拭い去れないところがありました。 |
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MC:高橋監督、本作は、第39回モントリオール世界映画祭に招待され、先日モントリオールに行かれたそうですが、現地の方の反応はいかがでしたか?
高橋監督:結構笑うんですよ、映画観ながら。ここで笑うかというようなところで笑うんですよね。やっぱり映画の質そのものが、観る側によって変化していくんだなという感じは受けました。あと、『7万円ってカナダドルでいくらだ?』と聞かれました。映画を観るとわかるんですけれど、『それだったら、出していい』という風に言っていました。 MC:「ぜひ7万円はどう劇中で出てくるか注目してください。上川さんも、自費でモントリオールに行かれたということなんですけれど、現地の方の反応はどのように映りましたか?」 上川さん:僕は、隣に監督が座っていたんで、笑いが起こるたびに、気にするんですよ。チラってみたら、伴明さんがどしっと構えて座っていたんで、俺も構えて味わいました。終わった後は、一回り成長できた感じでした。(会場笑い) MC:監督、どうなんですかね? 高橋監督:その後の仕事を観ていないんで、今度またちょっとだけ仕事をするんで、どうなったか楽しみにしています。 MC:さて、皆さん、既にお気づきかもしれませんが、あちらの布の下には、実は奥田さんが、本作のために描いて下さった絵があるんです。不二子さん、布を取っていただけますか?奥田さん、どのような思いで、この絵を描かれたのでしょうか? 奥田さん:二人で寄り添っているポスターがあって、もう一個、作ってくれってことで、軽く『わかった、わかった』って言ったんですけれど、いざ描くとなると、絵描きでもある私としては、プロ根性が湧いてきて、職人というか、白い紙に立ち向かった『赤い玉、』の絵でございます。これがイメージポスターとして、またできあがっております。 不二子さんが布を取り、会場拍手。 奥田さん:プロデューサーが『奥田さんは女の裸の絵も得意だから、一つよろしく』って言われたんですけれど、女の裸の絵って最近描かなくなったので、もう1ランク階段をのぼった感じで、木を女体にと思い、男を感じさせるものをなぞらえて描いたんです。ポスターも出来上がりましたが、この絵は高橋伴明監督が描く前に『描きあがったら俺欲しいな』って言っていて、『おう、わかった、わかった』って言ったんですが、描きあがってみたら、あげるのがもったいないなと思う今日この頃ですが、これは伴明監督の家のどっかの壁に飾ると決まっております。(現在原画はテアトル新宿のロビーに飾ってあります。) 高橋監督:ベッドルームに飾ります。 MC:こちらの絵をポスターにして、30枚限定で3000円で、テアトル新宿のみで販売しています。ぜひお買い求め下さい。通常のポスターは500円、奥田さん、高橋監督、不二子さん、村上さん、土居さんのインタビューや奥田さんと高橋監督の対談も載ったパンフレットは800円で販売しておりますので、ぜひお買い求めください。 高橋監督、最後に、これから映画を観られる方々に、一言メッセージをお願いします。」 高橋監督:最初から言っていますけれど、エロスと向き合う映画が少なくなってきているんで、こういう映画をぜひ支持して頂きたいと思うんです。もっともっと広めて頂けると、逆にこういう映画が増えてくるんじゃないかと思いますんで。それと、できたら3回観て欲しいんですよ。回を重ねて観るごとに、違う映画になってくると思います。よろしくお願い致します。 |
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撮影の入っていた柄本以外は、その後、テアトル新宿から、横浜のシネマ・ジャック&ベティに移動。その間に奥田と監督が話し、ジャック&ベティでの舞台挨拶は、急遽、奥田さんがMCを担当!!! 村上さん:たまたま入学前に大学に行ったら、今度1回生(1年生)になる人に向けて、オーディションの募集をしていて、直接連絡して脚本をもらって読んだんですけど、『私が今から入学する大学は、こんな作品をやるんだ』と思って。でもそういうことってあまりないと思って、すごくやりたいなと思って、応募しました。
なお、テアトル新宿の今週水曜16日21:00~の回上映後に、高橋伴明監督×周防正行監督(『Shall we ダンス?』監督/元・高橋伴明監督の助監督)のトークショーが決定!(23:10まで。) テアトル新宿は水曜日、男女共に1,100円で、web予約も可能!是非ものです。 http://theatre-shinjuku.ttcgreserve.jp/ttsj/schedule/ 『赤い玉、 』 2015年9月12日よりテアトル新宿他にて全国順次公開中 公式サイト:http://akaitama.com/ |
あらすじ
大学で映画撮影の教鞭をとりながら、自らは新作映画の撮影に入れないでいる映画監督・時田修次。映画とは自らの経験が投影される、そう考えている時田は、まるで自分が映画の登場人物ででもあるかのように人生を流浪しているようにも見える。新作の脚本にとりかかる時田の私生活には、30代の、理解のある美しい女・唯がいるが、その現実から虚構(映画)の世界に誘うように時田の前に現れる一人の女子高生・律子。世界の境界さえも喪失していくように、いつしか律子の存在が時田自身の人生を狂わせていく……。
出演:奥田瑛二
不二子 村上由規乃 花岡翔太
土居志央梨 上川周作 ・ 柄本佑 高橋惠子
監督・脚本:高橋伴明
製作:高橋惠子・小林良二・塩月隆史
プロデューサー:大日方教史
音楽:安川午朗
撮影監督:小川真司 編集:鈴木歓
宣伝・配給:渋谷プロダクション 制作プロダクション:北白川派
製作:「赤い玉、」製作委員会(ブロウアップ・渋谷プロダクション・ラフター)