本日10月28日(土)東京国際映画祭にて『萌えの朱雀』(97)でカンヌ国際映画祭カメラドールを最年少で受賞して 以来、同映画祭で数々の賞を受賞し、2017 年には『光』がエキュメニュカル審査員賞を受賞した河瀨直美監督がTIFF マスタークラスに登場。
同イベントでは河瀨監督がエグゼクティブ・プロデューサーを務めた『東の狼』(2018 年 2 月 3 日(土)公開)も上映。主演の藤竜也がゲスト登壇し、スペシャル対談を行いました。 TIFF マスタークラス 河瀨直美スペシャルトークイベント 『東の狼』特別上映&主演藤竜也 対談 |
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二人が登壇すると会場から大きな拍手が起こった。 早速トークセッションへ移ると 河瀨監督:東吉野という場所で撮 影したのですが、(『東の狼』監督の)カルロスが書いた完璧ではないプロットと私の手紙を藤竜也さんにお渡ししまし た。新横浜でお会いした時に、ご出演お願いできますでしょうか?と聞きましら、出演しないのであれば会いません と藤さんがお答えになったのを覚えております。 と出演オファーのエピソードを語ると会場から笑いが起きた。 河瀨監督:いつもこういうスタンスで映画の出演は決められるのですか? と尋ねると 藤さん:そうですね。ですから、出ないのであれば監督とお会いしません。 ときっぱりと応え再び笑いを誘った。 河瀨さん:カルロス監督は、日本人にはわからないような感覚で藤さんにディレクションし、 (藤さんは)それに応え、 猟師会長という立場として迎えるわけですが、すごい経験の一か月だったと思います。主人公アキラは船に乗っていたが、山に登る人に代わっていったとコメントを出していますけど、藤さんは映画に描かれていない背景もキャッチ して、アキラを作り上げてから東吉野に入られたのですよね? と尋ねると 藤さん:言葉の違うカルロス監督の感情や想いがわからないから、きちんと猟師としての役に徹しようと撮影に臨みました。 と演じる心構えを語った。 |
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河瀨さん:日本で最後にオオカミが確認されたのが東吉野村。それが実際にいるのか、幻か現実かわからないけどアキラはそれを信じている。それを殺すのか、殺さないのかがこの映画の大きなテーマになります。オオカミの存在はなんですかね?
との河瀨さんの疑問に対し、 藤さん:監督に『オオカミは監督にとってなんなのか?』と訊ねると『オオカミ は“愛”』だと。ますます分からなくなりました。(笑) と監督とのエピソードを披露し会場の笑いを誘った。 続けて 藤さん:(撮影中)カメラマンの後ろにいるカルロス監督の顔、目が泣きたくなるような、何とも言えない切ない表情をしていて、胸がいっぱいになってしまって。説明は難しいですが苦しみながら映画を撮ったのではないかと思います。 と監督の心をくみ取った。 河瀨監督:東吉野の印象は? とが尋ねると 藤さん:夜になると鹿は走っているし、僕が借りた村営住宅は鹿の一家がうろうろ歩いています。 と鹿との遭遇エピソードを披露。劇中に登場する鹿の解体シーンについては 藤さん:スクラッチからずっとカメラを回されて、全部やってくれって言われて。もう終わるだろうと思っても、なかなか終わらないんですね。四肢を切って、と細部まで撮る彼の中で鹿は希望なのでしょうね。 と撮影の苦労を語りながら 藤さん:魚はさばいたことある けど、鹿はなかったですね(笑) と会場をにぎわせた。 河瀨さん:最初と最後で女性が出てきますが、映画の設定としてはアキラとかつて愛した女性。興味のある方は『キュー バの恋人』を見てみてください。日本で公開されたけどキューバでは未公開のこの映画をカルロス監督が知り作品の一部を使って映画を作りたいと言ったのが最初です。映画の中では 40 年くらい前に愛した女性の亡霊を追っかけるの がアキラです。 と映画ファンの集まる国際映画祭ならではの作品の楽しみ方を語った。さらに 河瀨監督:オオカミは“狼” と書きますが、”大神”と書いて、山を守る存在だったという説も聞いたことがあります。オオカミは実は人間に対して 凶暴でなく共存していたのかもしれません。アキラは漠然とそれを感じ自然との関係性のバランスを取ろうとしていたのかもしれません。 と止まらない本作への深い愛情を滲ませた。 |
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最後に
藤竜也さん素晴らしい時間を頂き、東京国際映画祭でも上映させて頂き感謝しています。最後に一つだけ、 藤さんが言ってくださって心に残っている言葉が“今年の桜は吉野で見ることにします”と出演を決めてくれた言葉でした。 と締めくくり大きな拍手につつまれた。 『東の狼』 物語・・・ 第30回東京国際映画祭 ~11月3日(金・祝)まで開催中! |