タナダユキ監督　活弁シネマ倶楽部に3度目登場

番組MCを文筆家の折田侑駿が担当し、監督最新作『マイ・ブロークン・マリコ』の企画の経緯から現場での裏話、そして永野芽郁、奈緒、窪田正孝ら俳優陣の魅力についてたっぷりと語りました。

本作は、平庫ワカによる同名マンガ作品を実写化したもの。「親友の遺骨と旅に出る」という鋭く心に刺さる物語と、圧倒的な熱量や疾走感が多くの読者に支持され、2020年に発表されるやいなや単行本は即重版、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞をはじめ、各賞を総なめにした作品だ。自ら命を絶ってしまった「ダチ」のためにボロボロになりながら旅をする主人公・シイノを永野芽郁が演じ、その親友・マリコを奈緒が演じている。そのほか、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊らがシイノとマリコを取り巻く者たちに扮し、作品の世界に深みを与えている。

「原作マンガを手にしたときに受けた衝撃を、再び受ける映画体験がありました。その体験には、原作に描かれている物語はもちろんのこと、“モーション・ピクチャー”である映画ならではの感動が、この実写化には詰まっているように感じました」と折田が感想を述べるところからトークはスタート。タナダ監督は発売日である2020年1月8日に原作を手にし、衝動的に映画化に向けてのアクションを取ったのだという。「読み終わった瞬間に、これは手を挙げたいと思いました。原作権を取るのは大変です。ダメ元でもいいからとにかく手を挙げなければと。すぐにプロデューサーに連絡をして、翌日には企画書を作成してもらい、そこに添える『映画化したいんです』という気持ちを込めた手紙を書きました。相当なスピード感だったと思います」と企画始動時を振り返るタナダ監督。これに折田は「原作にあるような疾走感を感じます」と反応している。

続いて折田が、本編尺が85分というタイトなものであるものの、長編映画であることと、原作が短編マンガであることに言及。これにタナダ監督は「難しかったです。原作が好きなので、とにかく汚すことだけはしたくないという気持ちがありました。とはいえ原作をそのまんまやってしまうと、尺が1時間くらいのものになっちゃうんです。そうすると、映画としての興行には乗らない。だから、観ていて気持ちのいい尺感と、映画として成立する尺を意識しました」と語る。映画オリジナルのシーンについては「さも原作にありそうな、読み返してみると『あっ、これ違ったんだ』となるような、気づかないくらいのところを目指していました。これはもう感覚的なものでしたね」とタナダ監督。折田自身、原作を読み返してみて映画オリジナルのシーンだと気づくものも多々あったようで、タナダ監督と共同脚本を手がけた向井康介の狙いは成功しているようだ。

折田は本作のキャストに関して、永野芽郁がシイノ役を演じることが意外だったという。「彼女の代表作などから、コミカルなお芝居をされるイメージが強くあったので。でも改めて原作のことを考えると、本作はシリアス一辺倒なものではないですよね。映画が始まってすぐに『なるほど！　ピッタリだ！』と思いました」と自身の印象を述べる。これにタナダ監督は「自分が作品を作るにあたってつねづね目指していることなのですが、それは“重いテーマを軽やかにやる”ということです。この原作の『マイ・ブロークン・マリコ』は、まさにそれをやっていますよね。決して重すぎず、けれども心にズシンとくるものがある。シイノ役に永野芽郁ちゃんの名前が挙がったときに、『合うかも』と思いました。彼女って“陰”か“陽”かでいったら“陽”の雰囲気を持っている方で、それにまずお芝居が上手。努力に裏打ちされた実力を持っている人です。コメディエンヌとしての才能もある方なので、シイノを演じたときに、シリアスな部分は彼女の持つ演技力で大丈夫だと。そして、シイノの持つコミカルな姿には、芽郁ちゃんの持つ“陽”の雰囲気がハマり、きっと作品を重すぎないものにしてくれるだろうなという予感がありました」と、キャスティングの理由を明かしている。

この収録回では、ほかのキャスト陣へのオファー理由や、原作の魅力の深堀り、撮影時の苦労話、作品の持つテーマに至るまで、じっくりとトークを展開している。

■活弁シネマ倶楽部■

活弁シネマ倶楽部 公式HP：
https://katsuben-cinema.com/

活弁シネマ倶楽部 公式ツイッター：
@katsuben_cinema

『マイ・ブロークン・マリコ』

9月30日（金）よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開中

公式サイト：
＠mariko

公式twitter：
＠mariko_movie

先日、カナダ・モントリオールで行われたファンタジア国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞し、益々公開が期待される本作。

物語
鬱屈した日々を送るOL・シイノトモヨは、テレビのニュースで親友・イカガワマリコが亡くなったことを知る。学生時代から父親に虐待を受けていたマリコのために何かできることはないか考えたシイノは、マリコの魂を救うために、その遺骨を奪うことを決心する。「刺し違えたってマリコの遺骨はあたしが連れてく！」。マリコの実家から遺骨を強奪、逃走したシイノは、マリコの遺骨を抱いて“ふたり”で旅に出ることに。マリコとの思い出を胸にシイノが向かった先は・・・