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ミニシアタークラブ

ミニシアター、映画好きのためのオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」では毎回様々なゲストをお迎えして映画、映画館にまつわる様々なお話をしていただいています。

今回は、昨年の第34階東京国際映画祭「アジアの未来」部門正式出品作品である『よだかの片想い』の監督である安川有果をお招きして、制作の経緯から作品に込めた想いまでお話をお伺いいたしました。
『よだかの片想い』安川有果監督×北條誠人対談
ミニシアタークラブ対談 
対談:安川有果監督×北條誠人(ユーロスペース)
取材実施日:2022年9月某日
収録場所:ユーロスペース事務所

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当日トークレポート

本作『よだかの片想い』の制作経緯をお聞かせください。

安川監督「元々は、主演の松井玲奈さんが、原作者の島本理生さんが好きで、島本さんの作品の中でも、最も気にいられていたのが「よだかの片想い」なんです。アザのある女性を扱った映画ということで躊躇する会社も多い中、なんとか固まってきた時に、お声がけをいただきました。」

北條支配人「原作は結構ドロドロしてるんですか?」
安川「顔にアザのある女性の話なのですが、彼女を可哀想だったり、悲劇的には描いてなくて、私の印象ではあくまでも青春ドラマというか割とポップな印象を受けました。もちろんドロドロとした部分もありますが。彼女がイキイキと描かれているのがいいなと思いました。」

飛坂という映画監督のキャラクターが難しいと思ったワケ
北條「キャスティングは、すでに松井さんが決まっていたと思うんですが、それ以外の方の配役についてお聞かせください。」
安川「松井さん演じる主人公が憧れる映画監督(飛坂)の描き方が難しいと思いました。アイコの初恋の相手として魅力的な人でありつつ、同じ映画監督としては、つい疑いの目で見てしまいます。」
北條「疑いの目!?」
安川「小説では、映画監督が「憧れの人」「向こう側の人」として扱われていましたが、自分からしてみたら【こっち側】の人じゃないですか。人の人生をフィクションで扱うことへの自覚がどれくらいあるのかとか、つい飛坂を問いただしたい気持ちにかられてしまって。そうゆうところはきちんと描きつつも、魅力的な人物になるようにバランスを意識しました。そのバランスが崩れるとものすごく気持ち悪い人物にもなるし、、、、と思っていたところに中島歩さんが登場してくれて!スタッフ内でも絶対、中島さんがいいと盛り上がりました。物語は、主人公のアイコの手記を映画化したいと中島さん演じる飛坂という映画監督が申し出るんですが、その設定はなかなか際どいなと。映画化したいというお仕事の話と男女の恋愛の話がオーバラップしていくので。」
北條「あ〜、なるほど・・・」
安川「なんだかスレスレのことを扱ってるんだなとものすごく怖かったです。イノセントな二人の恋愛ものでありつつも、それだけではないと言いますか」
ミニシアタークラブ運営「そうゆう意味では、飛坂は結局は恋愛よりも映画が恋人だったってことでしょうか!?」
安川「そのことすら、映画監督の飛坂はわかってなさそうなところも面白い部分だとは思うんですが。」

脚本・城定秀夫とのコラボレーション
安川「ご一緒できて本当に勉強になりました。小説を映画にする構成の力だったり、一人称で語られている内容を映像に置き換える力だったり。城定さんのお力を借りてやってみたかったことにもチャレンジでき、感謝しています。」

作品の反響について
ミニシアタークラブ運営「マスコミ試写などの反響はいかがですか?」
安川「恋愛映画と謳っているんですが、映画内で扱われている様々なテーマを敏感に感じ取って見てくださる方が多いと感じています。大人の女性の方から良かったと声をかけてもらえることが多いことに手応えを感じています。大人の女性が見て満足できる日本映画は少ないんじゃないかと思っていたので」

制作中のエピソード、別れ際のパワーのあるセリフ
安川「作中で、アイコが飛坂との別れ際にあるセリフを言うんですが、このタイミングでなぜそれを言うのかがわからなくて、躊躇しました。同時に、わからないんだけど鬼気迫るような迫力を感じたので、えいっと採用したら、とてもいいシーンになって」
北條「それは、本編見てからのお楽しみですね。」

公開に向けてのメッセージをお願いします
安川「初めはアザの設定に注目をして見られると思いますが、映画を見ていくうちにそれが気にならなくなっていることに気づくんじゃないかなと思います。顔は一番最初に目につく場所ですが、深くその人を知っていくと、顔に意識がいくことってほとんどなくなるんですよね。

初恋によって生まれる葛藤だったり、人の実人生をフィクションで扱うことの危険性であったり、女同士の連帯とは違うリスペクトの仕方だったり、色々なテーマが入り込みつつ、青春映画として楽しめる映画になっているので、ぜひ何か一つでも引っ掛かるものがありましたら、劇場に足をお運びいただけたら嬉しいです。」

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監督:安川有果

1986年生まれ、奈良県出身。2012年、CO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪)の企画募集で選出され、『DressingUp』を監督。第14回TAMA NEW WAVE にてグランプリと最優秀主演女優賞を獲得した後、2015年に全国の劇場で上映され、第25回日本映画プロフェッショナル大賞の新人監督賞を受賞した。その後はオムニバス映画への参加や舞台作品などを経て、長編第2作『よだかの片想い』(2021)を監督。東京国際映画祭のアジアの未来部門に選出される。

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『よだかの片想い』

2022年9月16日(金)より新宿武蔵野館ほかにて全国公開

公式HP:
https://notheroinemovies.com/

公式Twitter:
@NotHeroineM

公式Instagram:
@notheroinem/
『よだかの片想い』
主演を務めるのは、松井玲奈。初主演映画『笑う招き猫』やNHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』への出演を経て、その唯一無二の輝きにさらに磨きがかかっている。本作は、そんな松井本人が原作に惚れ込み、長年熱望していた映像化がついに実現した意欲作。飛坂を演じた中島歩は、『いとみち』、『偶然と想像』、『愛なのに』にといった話題作に出演を重ねてきた。一見、身勝手に見えてしまいそうなキャラクターを、自然体で愛嬌があり、何故か好感を持ってしまう好青年として演じる中島の演技力は、若手俳優陣の中でも際立った存在感を放っている。他にも、出版社に勤務するアイコの友人役に織田梨沙、研究室の仲間役に藤井美菜、青木柚など、急速に注目度を高めている若手俳優が集まった。

監督を務めるのは、安川有果。これまで、長編映画『Dressing Up』などの作品を手掛けてきた。
長編劇映画としては本作が2作品目となる。

近年も、短編オムニバス映画『21世紀の女の子』や、4人の若手監督による連作長編『蒲田前奏曲』にも参加するなど、活動の幅を広げている。脚本は、100本を超える劇場公開映画、映像作品を監督してきた城定秀夫。監督と共に脚本を手掛けることも多く、脚本家としても高い評価を受けている。二人のタッグが、原作本来の魅力を、映画作品としてさらに引き立てる。

あらすじ
物語の主人公は、理系女子大生の前田アイコ(松井玲奈)。彼女の顔の左側にはアザがある。幼い頃から、からかいや畏怖の対象にされ、恋や遊びはあきらめていた。大学院でも研究一筋の生活を送っていたが、「顔にアザや怪我を負った人」のルポルタージュ本の取材を受けて話題となってから、状況は一変。本が映画化されることになり、友人の編集者・まりえ(織田梨沙)の紹介で、監督の飛坂逢太(中島歩)と会う。話をするうちに彼の人柄に惹かれ、作品にも感動するアイコ。飛坂への片想いを自覚してから、不器用に距離を縮めていくが、相手は仕事が第一で、女性にも不自由しないタイプ。アイコは飛坂への想いを募らせながら、自分のコンプレックスとも正面から向き合うことになる・・・。

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(not)HEROINE moviesとは

 
『勝手にふるえてろ』『寝ても覚めても』『愛がなんだ』『本気のしるし』を手掛けたメ〜テレと、制作会社ダブがタッグを組み、“へたくそだけど私らしく生きる”、等身大の女性のリアルをつむぐ映画シリーズであり、次世代を担う映画監督と俳優たちを組み合わせ、それぞれの感覚と才能を思う存分発揮できる場を生み出し、輩出するプロジェクトです。

何ドンもされない。
胸キュンもしない。
恋とか愛とか生きるとか自意識とか、考えすぎてこんがらがって。
それでももがいて生きている“ヒロイン”になりきれない“ヒロイン”たちの物語です。
現在、その第一弾作品『わたし達はおとな』が公開中。『よだかの片想い』は第2弾作品となる。

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原作:島本理生『よだかの片想い』(集英社文庫刊)
監督:安川有果
脚本:城定秀夫
主題歌:角銅真実「夜だか」(ユニバーサル ミュージック)
音楽:AMIKO
出演:松井玲奈、中島歩
藤井美菜、織田梨沙、青木柚、手島実優、池田良、中澤梓佐
三宅弘城
企画協力:グリック、SPOTTED PRODUCTIONS
制作プロダクション:ダブ / 配給:ラビットハウス
©島本理生/集英社 ©2021映画「よだかの片想い」製作委員会
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