要注目の大大大大大傑作『由宇子の天秤』 劇場デビュー作『かぞくへ』が高い評価を得た春本雄二郎監督が、“映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」に初登場。番組MCを映画評論家の森直人が務め、監督の新作である『由宇子の天秤』について、2時間以上に及ぶ熱いトークを繰り広げている。 この収録回を「非常に重要な回」と口にする森。まず『由宇子の天秤』について、「要注目の大大大大大傑作」と紹介している。 「ベルリンのコンペティション部門でグランプリでも納得の作品だと思います」とまで大絶賛する。いつもであれば当番組は基本として“完全ネタバレ”のトークをするものとなっているが、今回は前半に“ネタバレなし”のトークを、後半に“ネタバレあり”のトークを展開する構成となっている。 本作は、超情報化社会を迎えた現代社会が抱える問題や矛盾を、真正面から炙り出した衝撃作。女子高生いじめ自殺事件の真相を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子が、父から“衝撃の事実”を聞かされ、究極の選択を迫られることになるというものだ。練り上げられた脚本に、俳優たちの魂のぶつかり合い、そして映画のラストが観客に突きつける問いが、べルリン国際映画祭をはじめ世界中の映画祭を席巻しているところ。『火口のふたり』などの瀧内公美が主人公の由宇子を演じ、その父役に光石研、物語のゆくえを左右する重要なポジションに『佐々木、イン、マイマイン』の河合優実や、『かぞくへ』の梅田誠弘が配されている。また、長編アニメーション『この世界の片隅に』の片渕須直監督がプロデューサーとして参加。大きな注目を集める座組となっている。 この『由宇子の天秤』の脚本執筆を開始したのは2014年のことで、本作をデビュー作にしたいと考えていたのだという春本監督。実際に起こった事件から着想を得て企画を立ち上げたらしい。その事件というのが、「ある小学校のいじめ自殺事件です。加害者の父親の方と同姓同名のまったく無関係の方が、名前が一緒というだけで間違ってインターネット上に名前を上げられてしまい、ネットリンチされてしまうということがありました。そうやって一般の人の日常を一瞬にして破壊してしまう人たちの無邪気さに怖さを感じたんです。そこで逆に、情報を扱うプロフェッショナルが、自分の正義を疑わない者たちの代表であるドキュメンタリーディレクターが、もし石を投げられる立場になったらどうなるだろう?というところから始まりました」と、物語の発想の原点を春本監督は語っている。 テレビ業界でも活動経験のある春本監督。自身の経験が由宇子というキャラクターには反映されているようだ。「フィクションとノンフィクションの違いはあれど、自分たちが番組を通して社会的に訴えたいことがあっても、『それでは成立しない』『番組的にはこういうことを言って欲しい』だとか、表現が歪んだり削られてしまうことをフィクションの世界でさえ体感してきました。これはノンフィクションの世界でもあるんじゃないかと。取材をしていたら見えてきたましたね」と監督は語る。続けて、主人公を女性にした理由に関しても、多少のネタバレを含みながら明かしている。監督の話に森は、「パズルのような本当に緻密な脚本なので、一つのことがズレると、ほかのどこかがズレてしまうという作りになっていますよね」などと言葉を添えている。 映画本編の密度が高いからこそ、このトークも非常に内容の濃いものとなっている。 |
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『由宇子の天秤』9月17日(金)渋谷ユーロスペース他全国順次ロードショー! “正しさ”とは何なのか? |
瀧内公美 河合優実 梅田誠弘 川瀬陽太 丘みつ子 光石研
脚本・監督・編集:春本雄二郎 プロデューサー:春本雄二郎、松島哲也、片渕須直
キャスティング:藤村駿 ラインプロデューサー:深澤知
撮影:野口健司 照明:根本伸一 録音・整音:小黒健太郎 音響効果:松浦大樹 美術:相馬直樹 装飾:中島明日香 小道具:福田弥生 衣裳:星野和美 ヘアメイク:原田ゆかり
製作:映画「由宇子の天秤」製作委員会 製作協力:高崎フィルム・コミッション
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
配給:ビターズ・エンド
2020/日本/152分/カラー/5.1ch/1:2.35/DCP
©️2020 映画工房春組 合同会社