映画情報どっとこむ ralph “映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」で取り上げる作品は、“中国第6世代”の一人であるワン・シャオシュアイ監督による『在りし日の歌』。

当番組お馴染みのMC陣である映画評論家・森直人、映画ジャーナリスト・徐昊辰、映画ライター・月永理絵の三者が集い、本作を起点に“中国映画の現在”について語りました。

この収録は、本作公開直後にされたもの。それから新型コロナウイルス感染拡大防止による緊急事態宣言のため、劇場が閉館し、上映が中断となっていた。本作のチラシにコメントを寄稿したという月永は、「壮大かつ重い物語やテーマに対して、撮影が素晴らしい。被写体との絶妙な距離感がこのドラマに相応しく、そこに感動した」とまず感想を語っている。特に、本作における“食事シーン”については絶賛。ホウ・シャオシェンら、“食事シーン”を描く名手の名前も挙がり、これには森も徐も賛同し、盛り上がりをみせている。

中国の激動の時代を背景に、30年に及ぶ夫婦の絆を描いた本作。『薄氷の殺人』のワン・ジンチュンと、『黒衣の刺客』のヨン・メイが、長年連れ添う一組の夫婦のかたちを繊細に演じ、第69回ベルリン国際映画祭では、最優秀男優賞と最優秀女優賞をダブル受賞するなどの快挙を成し遂げた。さらには本作で3度目となる、ベルリン国際映画祭銀熊賞の受賞を果たし、名匠としての地位を確固たるものにしたワン・シャオシュアイ監督だが、中国出身の徐は、「すごく良くできている作品ですが、やや不満なところもある」と述べている。その理由として、「ワン・シャオシュアイ監督は、時代背景を描きながらも、物語の軸となるのは“個人”。でも今回は、大きな“時代性”というものを取り入れた、集大成的な作品となってはいるものの、そこが彼の過去作と違う」と独自の見解を示している。徐の思う“ワン・シャオシュアイ監督イズム”からすると、本作はまた異なる作品ということのようだ。そんな本作は3時間超の大作だが、「観終わってから思うのは、この作品には3時間という長い時間が必要」だと徐は述べている。

森はまず本作について、「原題が『So Long, My Son』ですよね……僕は一人息子がいるんですよ……」と切り出している。森としてはタイトルから受ける印象からして、消極的な姿勢で鑑賞したのだという。ところが、「……わりとグッときましたね(笑)」と森。そして本作に対し、「フォーマットとしては、フォン・シャオガン監督の『芳華-Youth-』やジャ・ジャンクー監督の『帰れない二人』もそうだし、木下惠介監督の“『喜びも悲しみも幾歳月』フォーマット”ですよね(笑)」と続ける。激動の時代に翻弄される人々の過ごす歳月を、丹念に綴った作品たちだ。「一組の夫婦の喪失感と、止まってしまう時間。けれどもそれとは対照的に、大きく流れていく時間。ここで“喪失感”を核にすることで、“時間”や“個と時代”という表現に、複雑なニュアンスが出ている気がしました。その喪失感から生まれた“傷”が癒えていく過程を、確実に必要な3時間という時間をかけて描いている」と論じている。

さらに話題は、ジャッキー・チェンや、ドラマ『傷だらけの天使』にまで及んでいる。そのほか、本作における俳優の演技と魅力、物語の大きな軸として描かれる“一人っ子政策”への言及も。今泉力哉監督やエリック・ロメール監督の名も飛び出し、同じく中国第6世代であるジャ・ジャンクー監督やロウ・イエ監督らの作品との比較もあり、現代の中国映画を知るうえで、非常に重要な収録回となっている。

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『在りし日の歌』

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あらすじ
ヤオジュンとリーユン夫婦は、ひとり息子のシンと中国の地方都市で幸せに暮らしていた。同じ工場の同僚であるインミンとハイイエン夫婦には、偶然にも同じ年の同じ日に生まれた息子ハオがいた。両親たちは、お互いそれぞれの子の義理の父母としての契りを交わし、息子たちは兄弟のように育った。
ある時、リーユンは第二子を妊娠するが “一人っ子政策”に反するため堕胎させられてしまう。さらに、リーユンは手術時の事故で二度と妊娠できない身体になった。
ある日、ハオは「川で遊ぼう」とシンを誘うが、泳げないシンは頑なに嫌がる。怒ったハオはシンを残して一人で仲間たちのもとへ行ってしまった。やがて日が沈みかけた頃、数人の大人たちが必死の様子で川にやってくる。「シンシン! 早く病院へ!」大人たちのその姿を、体を震わせながら真っ青な表情で見ているハオ。
大切なひとり息子シンを事故で失い、乗り越えられない悲しみを抱えたふたりは、住み慣れた故郷を捨て、親しい友と別れ、見知らぬ町へと移り住む。やがて時は流れーー。
『在りし日の歌』
【STORY】喜びも、悲しみも 

一緒に重ねてきた日々は、こんなにも愛おしい。

国有企業の工場に勤めるヤオジュンとリーユン夫婦は、中国の地方都市で幸せに暮らしていた。大切な一人息子シンシンを失うまでは・・・・・・。乗り越えられない悲しみを抱えたふたりは、住み慣れた故郷を捨て、親しい友と別れ、見知らぬ町へと移り住む。やがて時は流れ。

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出演:ワン・ジンチュン、ヨン・メイ、チー・シー、ワン・ユエン、ドゥー・ジャン、アイ・リーヤー

監督:ワン・シャオシュアイ 
脚本:ワン・シャオシュアイ、アー・メイ 

撮影:キム・ヒョンソク 音楽:ドン・インダー
2019年/中国/185分/カラー/1.85:1/英題:SO LONG, MY SON 

原題:地久天長
配給:ビターズ・エンド

©Dongchun Films Production

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