1月18日(金)21:00から、“映画を語る”番組「活弁シネマ倶楽部」第9回が放送されました。
ゲストは『生きているだけで、愛。』と『太陽の塔』で監督デビューを飾った関根光才監督 過去に手がけた『恋するフォーチュンクッキー』MVなども取り上げて、“これを見れば関根光才がわかる”と言えるような濃密なトークが展開された。“オーディションには手ぶらで行った”といったものから“恋するフォーチュンクッキーはかなりふざけて作った”など、終始、制作者からしか聞くことのできない必見の内容となった。
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番組冒頭で、元々広告業界で作品を発表していた関根監督が、“映画監督をイメージした時期”について語られた。
友人の紹介で『生きてるだけで、愛。』の原作に出会ったという関根監督は“自分のスタイルではないかもしれないが、こうやったら面白くなるんじゃないかというものが、(本作プロデューサーの)甲斐さんと一致。普通この原作を読んでこうは捉えないだろうなと思っていたので、意見が一致してビックリしたし、希望を感じた”と語った。 この一致に希望を感じると同時に、色々な歯車が急に集まり始めて、2016年頃から制作が走り出したという。これは、ほぼ同時公開となった『太陽の塔』の制作時期と重なっている。 『生きてるだけで、愛。』は、原作小説が主人公の女性・寧子(趣里)の一人称視点で描かれているが、関根監督はこれを逆手に取り、津奈木(菅田将暉)の演出を膨らませている。関根監督は、“男性目線も気になる。原作にはないからこそ津奈木のキャラクターは自由に造形できる”とコメントし、森氏からも“映画だとこの2人が惹かれ合う理由がわかる”と原作からの変換について語った。 また、主演を務めた女優・趣里について、“趣里さんがこの映画に賭けてくれたことが好運で、すごくありがたい”と感謝を表した。趣里をキャスティングするにあたって関根監督は、“演技力は全く問題なく、問題は寧子というキャラクターとシンクロできるかどうかだけだった。趣里さんは自分の人生で感じたことを寧子に投影して、人生を全部肥やしにしてぶつけてくれた”と、趣里の女優としての力量を絶賛した。 |
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映画『太陽の塔』は、太陽の塔を設計した岡本太郎の元アトリエ岡本太郎記念館の企画から始まっており、総勢29名へのインタビューを経たドキュメンタリー映画。制作にあたっては、監督をオーディションで公募するという非常に珍しい方法がとられた。 関根監督は、本作の監督でありながら、“岡本太郎について詳しくなかった”と発言すると、MCの森氏は「意外!」と驚きの表情を見せた。一方で、“太陽の塔は好きだった。太陽の塔の裏にある真っ黒い月のような顔、これがめちゃくちゃ怖い。なんで、家族連れで見るようなところに、こんな禍々しいものを作ったのか、興味があった”と独自の視点も披露した。 また、オーディション当日について“普通の人はパソコンとかでプレゼンするんですけど、失礼だと思いつつ、手ぶらでいった”と語り、さらにスタジオを驚かせた。 その真意について“(映画『太陽の塔』の)プロデュース側がどういうつもりで企画をしたのかがわからなかった。太陽の塔に興味はあるけど、それだけで終わるのはもったいないという予感があった。自分の意思表明はするけど、プロデュース側がどういうつもりでつくろうとしているのかを感じながら対話をしないと、まずいと思った。なので、あえて何も持たずに相手の目を見て話したかった”と振り返った。 また、森氏から“岡本太郎は本来、アンチ万博の立場だった。 70年代以降の日本人が思考を停止し、ヒツジ化していったことを危惧する関根監督に対して、森氏は、関根監督にとっての潜在的な主題を“システムと人間”だと語る。続けて、“システムに飼い慣らされたヒツジの中にも人間性があり、それをどう見つめるかこそが関根光才的な主題”だと鮮やかに分析した。
関根監督も“広くバズるだけでは片手落ちで、深く本質の部分に手を伸ばす”意識があったことを語った。 ■関根光才 監督プロフィール ■ |
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■活弁シネマ倶楽部■ “映画を語る”楽しさを提供し、映画業界を新たな側面から盛り上げていくことをテーマに、映画作品に携わる様々な方がざっくばらんに喋り倒すものであり、制作の裏側や作り手のこだわりについてほぼノーカットでトーク展開されている。 「活弁シネマ倶楽部」 |
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■『生きてるだけで、愛。』■ 2018年11月9日[金]より全国ロードショー http://ikiai.jp/ 出演者 趣里 菅田将暉 田中哲司 西田尚美 松重豊 石橋静河 織田梨沙 仲里依紗 原作 本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮文庫刊) 監督・脚本 関根光才 あらすじ 同棲して三年になる寧子(趣里)と津奈木(菅田将暉)。もともとメンタルに問題を抱えていた寧子は鬱状態に入り、バイトも満足に続かない。おまけに過眠症のため、家にいても家事ひとつするわけでなく、敷きっぱなしの布団の上で寝てばかり。姉との電話やメールでのやり取りだけが世間との唯一のつながりだった。 一方の津奈木も、文学に夢を抱いて出版社に入ったものの、週刊誌の編集部でゴシップ記事の執筆に甘んじる日々。仕事にやり甲斐を感じることもできず、職場での人間関係にも期待しなくなっていた。それでも毎日会社に通い、家から出ることもほとんどない寧子のためにお弁当を買って帰る。 津奈木は寧子がどんなに理不尽な感情をぶつけても静かにやり過ごし、怒りもしなければ喧嘩にすらならない。それは優しさであるかに見えて、何事にも正面から向き合うことを避けているような態度がむしろ寧子を苛立たせるが、お互いに自分の思いを言葉にして相手に伝える術は持っていなかった。 ある日、いつものように寧子が一人で寝ていると、部屋に安堂(仲里依紗)が訪ねてくる。かつて津奈木とつき合っていた安堂は彼に未練を残しており、寧子と別れさせて彼を取り戻したいと言う。まるで納得のいかない話ではあったが、寧子が津奈木から離れても生きていけるように、なぜか安堂は寧子の社会復帰と自立を手助けすることに。こうして寧子は安堂の紹介で半ば強制的にカフェバーのバイトを始めることになるが…。 ■『太陽の塔』■ イントロダクション |