この度、世界23カ国で翻訳されたベストセラーを第86回アカデミー賞作品賞受賞『それでも夜は明ける』主演のキウェテル・イジョフォーが初監督した『風をつかまえた少年』が、8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて全国公開となります。
この度、作家、ミュージシャン、映画監督として、パリを拠点に創作活動を続け、シングルファザーとして息子の子育てに取り組む姿も注目を浴びる辻仁成さんをゲストに迎え、トークイベントを実施。先日も息子さんの中学校の卒業報告が話題となるなど、お子さんとともに人生を歩み、その成長を日々あたたかく支える辻さんに、本作で描かれる親子の絆と、父として観た本作の14歳の少年の姿について感じたものを語りました。 『風をつかまえた少年』公開記念特別試写会&トークイベント |
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大きな拍手に迎えられながら、辻仁成さんが登場。 本作の感想について一言、 辻さん:これから皆さんが観るので、あまり言えませんが、いい映画でした。 としみじみと語り、会場からは笑い声が。続けて 辻さん:全編を通して映像がとっても綺麗で、実話の元になった方も最後に出てきて、二度感動する。電気がない場所で、学ぶことを知った少年が、自家発電で風車をつくり上げることの大変さや、人間の限りない力、ひたむきに努力する姿に心が洗われました。感動し、映画の力を改めて感じた。 と本作への熱い感想からイベントがスタート。 本作は2001年にマラウイで起こった出来事。何の予備知識もなく作品を鑑賞したと言う辻さん、 とコメント。 |
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本作は貧困で、中学で学費が払えなくなってしまった14歳のウィリアム・カムクワンバが物語の主人公。 先日15歳になったばかりという、同じ世代の息子を持つ親としてどう感じたか聞かれると、 辻さん:子供が親の反対を押し切っても、人のために行動を起こすことに、何が彼をそうさせたのかが映画から伝わってくる。ただ、映画として描いている部分はあると思うので、実際にはもっと大変で過酷な状況のなか、彼が困難を克服したんだろうなと見ていて感じました。 と映画から感じさせられる現実の過酷な状況、そして、それを現実に乗り越えた少年の苦難に思いを馳せるコメントも。 また、息子さんに本作を観て欲しいと感じましたか?という質問では、 辻さん:彼(息子)は皮肉屋だから、僕が観ろといって観るタイプではない。さっき2分ほど電話で話したけど、2分間つかまえるのもやっとで。パリから日本にも1人でくるし、九州や親戚のところまでも、親の手を借りないで1人で行動するタイプで、たくましい。自宅にスタジオを作って音楽家活動をしたり、友達たちと映画づくりの話もしていて、僕も今福岡で新作を撮っているけど、そこにも参加してエキストラの整理とかも頼まれて勝手にやっている。 と。すでに自立した息子さんの姿に会場からは驚きの声も。続けて 辻さん:この映画のすごいところは、父親の反対を押し切ってやり遂げたこと。それがうちにはないんですよね。うちは子どもに反対せず、何でもやらせてきた。バレーボールで優勝したり、成績も優秀で9月には志望校の高校に入れたり、フランス語も彼のほうができるから今では、親としても文句言えないというところもあるけど(笑)。でも本作のウィリアムは、厳しい環境というだけでなく、親にも反対されていた。それを乗り越えて成し遂げたことはすごいと思った。 と話し、また最近息子さんが恋人ができた記念に、一緒に曲作りをもちかけられたという話題になると 辻さん:息子は自分の部屋の半分にスタジオを持っていて、スピーカーやレコーディング機材、マイクや映像編集のソフトまである。彼のスタジオでつくったその曲を僕が歌った。すごくいい曲で、自分たち大人にはつくれないことをやるんだと感じた。今の14歳、15歳の子たちしかつくれない世界観。でも、映画でのウィリアムは、機材など何もないところから、作り上げたことが、さらにすごいところ。息子にも観せたい! と主人公が0からものを生み出したことの素晴らしさを熱く語り、息子さんとの関係を語りながらも、映画では全く逆の環境で風車をつくりあげたことに感心した様子で話した。 |
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さらに逆の立場で、辻さんの子ども時代に父親とはどんな存在だったと尋ねられると、
辻さん:僕の父親はすごい怖い人で、厳しい人だった。父親に抱かれて遊んだ記憶がなく、モーレツ社員だった。そのかわり、母親が哲学的なことを言う人だった。いたずらっ子で、親戚にいたずらをして、怒られていたりしたけれど、母親は怒らなかった。僕を叱ることよりも、何か光るものがあるから、ユーモアで人を感動させるようにと言われた。詩を作ったときに、母親に見せて、褒められて嬉しかった。だから、自分も同様に息子には怒らないし、息子も出来た作品を僕に送って聴かせてきてくれる。 と子供の頃の経験が、今の子育てにいかされていると振り返る。 本作のテーマである学ぶことについて、 辻さん:生涯学習で100年の時代に入った。定年が65歳であれば、残りは35年ほどあるなかで、学ぶことが大切だと思う。人生、老いないために続けることで脳は活性化するし、未来も開けていくと思う。ウィリアムが風車をつくりあげたことで、電力が供給されたし、一番いいことはウィリアムの周りの人たちも、風車について知り、学ぶことができた。いつまでも、いくつになっても学ぶことができることを、この映画は教えてくれる。 と独自の視点で学ぶことの大切さや、それが周囲を変えていくことの素晴らしさについて語り、現在、アメリカに在住しマラウイに貢献するべくビジネスをてがけているウイリアム氏に触れ、 辻さん:息子もウィリアムのように、将来日本とフランスを繋ぐ仕事をすることが夢だと言っている。未来に絶望せず自分たちが生きる環境をつくっていきたいんだと話している。若い世代は絶望や悲観的な視点ではなく、常に希望を持っていると思う。 と、息子さんや映画のウィリアムと同じ若い世代に向けた思いで締めくくり、イベントは大盛況のもとに幕を閉じた。
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『風をつかまえた少年』
8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館 他全国順次公開 公式サイト: 【ストーリー】 |
監督・脚本・出演:キウェテル・イジョフォー 『それでも夜は明ける』
出演:マックスウェル・シンバ、アイサ・マイガ
原作:「風をつかまえた少年」ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー著(文藝春秋刊)
提供:アスミック・エース、ロングライド
配給:ロングライド
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