BD書店賞、ACBD 批評グランプリを受賞したバスティアン・ヴィヴェスによる話題のフランス・グラ フィックノベルを映像化した、『ポリーナ、私を踊る』が全国公開中となっております。 本日、大ヒットを記念したトークイベントが開催され、バレエダンサーの首藤康之さんが上映後に登壇されました。
日程:11月22日(水) |
|
映画の上映終了後、聞き手の呼びかけにより登壇した首藤。映画を観終わったばかりで熱気あふれる観客の温かい歓迎を受け た。
はじめに映画についての感想を聞かれると、 首藤さん:最初はポリーナという同じ名前のバレエダンサーのドキュメンタリー映画かと 思いました。フィクション映画だと知ったのですが、ドキュメンタリーばりに“ダンスあるある”が多く、リアルなシーンがたくさんありました。 と率直な感想を述べた。 主人公ポリーナは、コンテンポラリーダンスと出会いロシアから南仏、ベルギーのアントワープへと渡る。 「例えば、ジュリエット・ビノシュ演じるコンテンポラリーダンスカンパニーの振付家が面接でポリーナに、『チョコレート食べる?』っ て板チョコを渡してくるところ。フランス人って本当にみんな板チョコを持ち歩いていて、ああいう風にフランクに渡してくるんですよ。何気ないシーンですけど(笑)、『これ知ってる!』と。そういうリアルなところにぐっときました。 と、自身のフランス生活を思い出ししみじみと語った。 幼い頃からバレリーナになることを夢見ていたポリーナだったが、ある日の衝撃的な出会いにからクラシックバレエではなくコンテンポラリーの道に進む決断をする。そんな人生の大きな転機に対し 首藤さん:映画でも『美しいだけではだめ、真実を見せろ』という先 生のセリフがありましたが、本当に様式美のクラシックバレエとは真逆の考えなんです。ポリーナにとってはバレエとしてのテクニックだけでは収まりきらない、自分自身を思いきり差し出せるものがコンテンポラリーだったんだと思います。 とポリーナの気持ちに共感した。 首藤自身が今まで大きな決断をしたことを問われると、 首藤さん:ダンスの世界って自由はないんですよ。とても厳しい規律がたくさんあって、なかなか自由を見つけられないんです。“自由にいろいろなダンスを踊ってみたい”と考えることもあったけれど、完全に束縛のない場所では何が自由なのか分からなくなってしまうことがあるんです。僕は現存する振付家のもとでダンスを踊ることが好きです。だから積極的に振付家を口説きにいきます。 と話した。 |
|
首藤さん:まずこの映画を見た時に、シディ・ラルビ・シェルカウイというベ ルギー人の振付家と仕事をしたときを思い出しました。以前彼の舞台を見てとても感銘を受けたので、舞台終了後待ち伏せ して彼をつかまえ『あなたと仕事がしたい』と言ってメールアドレスを渡しました。その後、彼からドイツでワークショップがあるという連絡をもらって、即座にチケットをとってドイツへ飛びました。周りは有名ダンスカンパニーのダンサーばかりで緊張したし、慣れない動きをして全身あざだらけになりましたが、必死にレッスンに食らいつきました。ポリーナのように、まさに異世界に飛 び込んだ瞬間でしたね。
と自信の経験を話した。 また、“ダンスの世界に飛び込む”という点でジュリエット・ビノシュにも触れ、 首藤さん:彼女はそれまで主に女優としての活動をしていましたが、アクラム・カーンというコンテンポラリーダンスの振付家と出会って、自分からダンスの世界に飛び込んだんです。日本で行われた公演を見に行きまして、好奇心にあふれた素敵な人だなと感心しましたが、当時はダンサーとしてというよりも “女優として”舞台に立っていらっしゃるな、というイメージでした。でも、この映画では本物のダンサーになっていましたね!立っているだけで存在がダンサーで驚きました!彼女があれ以来ずっとダンスを続けていたことに嬉しくなりましたね。 と、ダンサーとしてのビノ シュに魅了された様子。さらに、 首藤さん:やはりこういう仕事をしている以上、ダンス映画をみるとアラ探しをしてしまうのですが(笑)こ の映画は完璧でしたね。唯一のダンス未経験者であるニールス・シュナイダーでさえ、完璧なダンサーのようですごいなぁと思 いました! と、この映画に出演するためにレッスンを積んだシュナイダーのダンスについても大絶賛した。 首藤さん:ダンスと演技の間に垣根がなくなっているかもしれません。ジャンルをカテゴライズするのはナンセンスだと思っているので、僕は今後もやりたいことをやっていきたいですね。ダンサーとしては、振付家と一緒に稽古場で新しい振付を一緒に作っていきたい。 と今後の目標を明かした。 首藤さん:僕が興味をもったものならやりますよ(笑) と、にこやかに ほほ笑んで会場からは拍手が。終始和やかな雰囲気で、イベントは幕を閉じた。 |
|
『ポリーナ、私を踊る』 原題:POLINA, DANSER SA VIE ボリショイ・バレエ団のバレリーナを目指すロシア人の女の子ポリーナ(アナスタシア・シェフツォワ)は、厳格な恩師ボジンスキー(アレクセイ・グシュコフ)のもとで幼少の頃から鍛えられ、将来有望なバレリーナへと成長 していく。 かの有名なボリショイ・バレエ団への入団を目前にしたある日、コンテンポラリーダンスと出会い、全てを投げ打ってフランスのコンテンポラリーダンスカンパニー行きを決める。新天地で新たに挑戦するなか、練習中 に足に怪我を負い彼女が描く夢が狂い始めていく。 ダンスを通して喜びや悲しみ、成功と挫折を味わい成長 していく少女。彼女が見つけた自分らしい生き方とは…。 |
監督:ヴァレリー・ミュラー&アンジュラン・プレルジョカージュ
脚本:ヴァレリー・ミュラー
出演:アナスタシア・シェフツォワ、ニールス・シュナイダー、 ジュリエット・ビノシュ、ジェレミー・ベランガール、アレクセイ・グシュコフ
原作:バスティアン・ヴィヴェス「ポリーナ」 (訳:原正人 小学館集英社プロダ クション刊)
配給:ポニーキャニオン
2016 年/フランス/108 分/PG12
字幕:古田由紀子
©2016 Everybody on Deck – TF1 Droits Audiovisuels – UCG Images – France 2 Cinema