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戦場ジャーナリスト特別授業
2024 年のベルリン国際映画祭アムネスティ国際映画賞受賞をはじめ、数々の世界的な映画祭で41 冠の快挙を成し遂げた群像ヒューマンドラマ『アイ・ワズ・ア・ストレンジャー』が6月19 日(金)より全国公開となります。
シリア内戦によって生まれた1,400 万人もの難民、避難民の実話に着想を得た映画『アイ・ワズ・ア・ストレンジャー』。
戦争や難民問題を真正面から描いた本作を題材に、東京都立西高等学校にて、特別授業を開催。講師には、紛争地の取材を続ける戦場ジャーナリスト・須賀川拓を迎え、6 月20 日「世界難民の日」を前に、生徒たちとともに戦争や難民、報道のあり方について考えた。

戦場ジャーナリスト特別授業
日時:6月12 日(金)
会場:東京都立西高等学校
登壇:須賀川拓(戦場ジャーナリスト)
参加:東京都立西高校生徒(20 名)
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戦場ジャーナリストの声を聴く
授業の冒頭、須賀川氏は生徒たちに「今朝、一番最後に家族とどんな言葉を交わしましたか?」と問いかけた。生徒から「行ってきます」だったという声が上がると、ガザで出会った4 人の子どもを育てる母親のエピソードを紹介。空爆によって家族全員が命を落とす事態を避けるため、あえて家族が別々の場所で眠る現実に触れ、「何気ない日常の言葉が、最後の会話になってしまう人たちがいる」と語った。

さらに、ガザやレバノンでの取材映像や写真を交えながら、戦争や紛争の中で暮らす人々の現状を説明。「平和ボケという言葉は否定的に使われることもあるが、地獄を知らずに生きられることは幸せなこと。平和ボケでいられることの尊さを知ってほしい」と呼びかけた。
また、紙を丸めたボールを教壇の須賀川氏に向かって投げるゲームを実施。座る位置によって有利・不利が生まれる状況から、「格差は自分が不利益を受けて初めて実感することが
多い」と指摘し、「知らない世界には、自分よりも苦しい状況に置かれ、大切な権利を奪われている人がいるかもしれないと想像することが大切」と語った。
後半では、戦争報道における中立性についても言及。「正義の反対は悪ではなく、別の正義」としたうえで、「公平・公正は幻想であり、あらゆる報道には取材者の視点が含まれる」と説明した。ニュースは切り取り方によって見え方が変わるからこそ、誰がどのような視点で伝えているのかを意識しながら情報に触れてほしいと訴えた。
最後に須賀川氏は、報道で伝えられるエピソードは数え切れないほど存在する苦難のほんの一部に過ぎないと語り、「難民という言葉が政治的に語られることもあるが、その背景にいる一人ひとりの人生に思いを馳せられる人になってほしい」と生徒たちにメッセージを送った。
続いて行われたディスカッションでは、「印象に残った登場人物」をテーマに意見交換を実施。生徒たちからは、「理不尽な戦争によって子どもたちが犠牲になっていることが印象的だった」「兵士も密航業者も単純な善悪では語れず、それぞれに事情や信念があった」などの意見が挙がった。また、「一人の登場人物だけに注目すると善悪の構図で捉えてしまいがちだが、この作品では複数の視点がもたらされ、誰もが紛争や内戦の被害者として描かれていた」「密航業者は難民を利用して利益を得る一方で、家族を想う父親としての一面も持っていた」など、多面的な人物描写に着目する声も見られた。
さらに、「戦争によって人間性がゆがめられていく様子と、それでも守ろうとする信念や家族への愛情の両方が描かれていた」といった意見も共有され、生徒たちは登場人物それぞれの立場や葛藤について理解を深めていた。
全体共有を受けて須賀川氏は、「戦争は善悪だけで割り切れるものではない。その中で最も大きな被害を受けるのは子どもたちや民間人の日常です」とコメント。「この作品が善悪で単純に分類しない描き方をしているのは、難民や戦争の問題がいかに複雑なものであるかを示しているからだと思います」と総括した。
続いて、「タイトル『I was a stranger』の意味とは何か」をテーマにディスカッションを実施。生徒たちからは、「あえて単数形が使われているのは、難民を一括りの存在としてではなく、一人ひとりの人生を持つ個人として見つめることを表しているのではないか」という意見が挙がった。
また、「“I”は難民だけでなく鑑賞者自身を指しているとも考えられる。
映画を観る前は遠い存在だった人々に思いを馳せることで、“見知らぬ人”ではなくなっていく」という解釈も共有された。
一方で、「タイトルは過去形になっているが、本当に“Stranger ではなくなった”と言えるのだろうか」「他人の人生や戦争の現実を完全に理解することはできず、私たちは常に一定の距離を持った存在でもある」といった意見も出され、生徒たちは“見知らぬ人”という言葉の意味について多角的な議論を展開した。
さらに、劇中に登場する詩人に着目し、「言葉しか武器を持たない詩人が弾圧される姿は、戦争の中で言葉の力が失われていく現実や、一般市民の立場を象徴しているのではないか」といった考察も発表された。議論を受けて須賀川氏は、「“Stranger”のさらに先にあるのは無関心です」とコメント。「無関心でいることは簡単ですが、世界で起きている出来事や見知らぬ誰かに関心を持ち続けることが大切だと思っています」と語り、生徒たちへメッセージを送った。
映画をきっかけに、遠く離れた場所で起きている出来事を“自分とは関係のない話”としてではなく、一人ひとりの人生の物語として捉え直す――。生徒たちは難民や戦争をめぐる問題への理解を深めるとともに、見知らぬ誰かに関心を持ち続けることの大切さについて考えを巡らせる機会となった。

その後も生徒たちからは次々と質問が寄せられ、難民問題や報道のあり方、世界情勢について活発な意見交換が行われた。予定時間を超えてもなお対話は続き、大きな盛り上がりを見せるなか、特別授業は幕を閉じた。
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『アイ・ワズ・ア・ストレンジャー』
原題:I WAS A STRANGER
2026年6月19日(金)よりTOHO シネマズシャンテほかにて全国順次公開
アサド大統領による長期独裁政権への不満を発端に、シリア政府軍と反体制派の間に勃発したシリア内戦。2011年から2024 年まで続いた戦禍から逃れるため、国外避難を余儀なくされた市民の数は1,400 万人にのぼる。本作の監督・脚本・製作を一手に務めたのは、『ローン・サバイバー』(14)やマーティン・スコセッシ監督作『沈黙 -サイレンス-』(17)など超大作のエグゼクティブ・プロデューサーとしてキャリアを築いてきたブラント・アンダーセン。
人道支援活動家でもあるアンダーセンは、本作の原点となる短編映画『Refugee』(20)でアカデミー賞実写短編映画賞のショートリストに選出された。そして、シリア、トルコ、ギリシャ、アメリカの 4 か国を舞台に、紛争下を生きる5 つの家族の人生が交差する物語を、5 章構成の群像劇として再構築。本作で待望の長編デビューを果たし、世界初公開となった第74 回ベルリン国際映画祭のスペシャル・ガラでのアムネスティ国際映画賞受賞を皮切りに、数々の世界的映画祭で 41 冠の快挙を成し遂げた。キャストには、国境を超えて活躍する実力派俳優が集結した。初出演映画『キャラメル』(07)で脚光を浴びたレバノン出身の国際的女優ヤスミン・アル・マスリーが、危機的状況下でも冷静さを失わない医師を熱演。
『最強のふたり』(11)で東京国際映画祭やセザール賞の主演男優賞に輝いたフランスの俳優オマール・シーは、悪辣な密航業者でありながら愛情深い父でもある複雑な人物像を好演。2 人は短編『Refugee』にも出演しており、本作で再びその役柄に挑んだ。さらに、沿岸警備隊の船長役で印象深い存在感を放つギリシャ人俳優コンスタンティン・マルクーラキス、過酷な現実に直面し悩むシリア人兵士を演じる『皮膚を売った男』(20)のシリア人俳優ヤヤ・マヘイニ、家族のために希望を捨てない父親に扮したパレスチナ出身のジアド・バクリが魂の競演を見せ、本作を真にグローバルなヒューマンドラマへと昇華させた。
物語・・・
独裁政権が続くシリアで、政府軍と反政府組織との内戦が激化。シリアの医師アミラは娘と共に安全な国へ逃れるため危険な国境越えを決意する。国境を守るシリア兵ムスタファは、残虐な政府軍に不信感を抱き、命令に従う兵士であるべきか、心ある人間でいるべきか苦悩する。一方、トルコの密航業者マルワンは病弱な息子とアメリカで暮らすため、難民をギリシャ行きのボートに乗せて荒稼ぎしようとする。ファティは妻子を連れてそのボートに乗り込むが、死の危機に直面。そして嵐の海を航行する難民を発見したギリシャ沿岸警備隊のスタヴロスは、人命救助に全力を尽くすのだが──。
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監督:ブラント・アンダーセン 出演:オマール・シー、ヤスミン・アル・マスリー、ジアド・バクリ、ヤヤ・マヘイニ、コンスタンティン・マルクーラキス
配給:ハーク 配給協力:フリック
原題:I WAS A STRANGER、2024、アメリカ・ヨルダン・パレスチナ、英語・アラビア語、104 分、カラー、映倫G
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