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是枝裕和監督登壇 早稲田大学人気授業「マスターズ・オブ・シネマ」

『箱の中の羊』
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早稲田大学「マスターズ・オブ・シネマ」

日本映画では『万引き家族』以来、8年ぶりのオリジナル脚本となります是枝裕和監督最新作『箱の中の羊』が大ヒット上映中です。

この度、多彩な映像制作者たちをゲストに招き、制作にまつわる様々な事柄を語る早稲田大学の人気授業「マスターズ・オブ・シネマ」に、是枝裕和監督がゲスト登壇。
約250名もの学生たちを前に、本作『箱の中の羊』が生まれた経緯や制作の裏側について語ったほか、創作に対する向き合い方や作品に込めた思いについても言及した。さらに、授業後半には学生から寄せられた作品の核心に迫る質問にも真摯に回答。是枝監督の言葉に、学生たちは熱心に耳を傾け、作品への理解をより一層深める貴重な時間となった。
『箱の中の羊』是枝裕和監督マスターズ・オブ・シネマ」
マスターズ・オブ・シネマ
日付:6月13日(土)
会場:早稲田大学
登壇:是枝裕和(映画監督/早稲田大学客員教授)

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是枝裕和登壇

イベントの前半では、事前に学生から募った質問に監督が一問一答形式で答える形で進行した。映画づくりの哲学から、プライベートに至るまで、その質問の幅は多岐にわたった。最初の質問は、本作も出品された「カンヌ国際映画祭」についての話題からスタート。

これまで8度にわたってレッドカーペットを歩いてきた是枝監督も「毎回作品が違うから、慣れるということはない。やはり緊張しますし、新鮮ですよ」と率直な心境を明かした。
『箱の中の羊』
今年のカンヌについては、日本が「カントリー・オブ・オナー(Country of Honour)」に選ばれ、日本の映画が数多く紹介されたということで、例年以上に日本映画に注目が集まった。だが一方で、映画祭全体としては「例年に比べると、メディアの数も半分くらいでした。それはアメリカの大作映画がなかったからかもしれないし、物価の高騰という事情もあるのかもしれない。そういう意味では、いまカンヌは一つの過渡期にあるのかもしれませんね」と振り返った是枝監督。

世界中の映画祭をまわる是枝監督だが「一番好きな映画祭」はどこなのか。この質問に対し、是枝監督は「サン・セバスティアン国際映画祭ですね」と即答。その理由は「ご飯がおいしいから」と明かし、会場を笑わせると、さらに「もちろんそれだけでなく、三大映画祭(カンヌ・ヴェネツィア・ベルリン)と違って、賞を狙うという空気がなく、リラックスできるんです。取材も入りますが意外に自由時間があって、街をブラブラ散歩していると、他の監督とバッタリ出会ったりする。散歩していても日本とは違う美しい風景に出会えるし、街そのものが好きですね」と返答。

そして海外から帰国して一番食べたいものは、という質問に「おそば」と答えた是枝監督。「赤坂に美味しいおそば屋さんがあって、天ざるが大好きなんです。この前も食べに行こうとしたら、タッチの差で閉まっていて……まだ食べられていないんです」と明かし、会場を沸かせた。

さらに「自身の作品にお風呂や電車がよく出てくることを自覚している?」と指摘された是枝監督は、「意識しているわけではないんですが、ホームドラマを描こうとすると、どうしても“お風呂”と“食事”が大事になってくる。そこを描かずにホームドラマを作る方がかえって難しい。電車がよく出てくるのは、“車”を描くのが難しいから。それは車のない家で育ったからかもしれませんが、移動手段といえばやはり電車になりますね」と明かした。
『箱の中の羊』
さらに映画づくりのプロセスにおいて、「編集だけは絶対に人に渡さないタイプ?」という質問に対して「渡しません」とキッパリ。「脚本を書き、演出をして、それを編集する。それはすべてが繋がっているから手放せない。特に編集は最終的に作品が終えるところなので、そこはどうしても手放せないですね」と自身の制作スタイルについて語り、会場の学生たちは真剣な眼差しで聞き入っていた。

一方で、脚本に関しては「やはり坂元裕二さんに書いてもらった時(映画『怪物』)のように、自分には書けないものを書いてもらうのは本当に楽しい作業。僕なら絶対に書かないセリフがあるのでそれは楽しいですね」と語るなど、柔軟な姿勢を見せるひと幕も。

またキャスティングに関して、「メインキャストとは撮影前に必ず一度はご飯を食べる?」という質問も。それには「家族になる(キャストの)人たちには、事前にそういう時間を過ごしてもらうので、そこについて行って一緒にご飯を食べることもあります。でも必ずではないですね。やった方が良ければ……という感じですね」とコメントした。

さらに子どもの演出において「子役には台本を渡さずに、口伝えでセリフを伝える」というアプローチ方法が有名な是枝監督だが、「実は最近は台本を渡すようにしていて。やり方を変えつつあります」と明かす。今回の現場でも、「里夢くんはそんなにセリフを覚えてなくて。現場で綾瀬さんや大悟さんと一緒にやって掴んでいくタイプでした。それが良かったんですよね。意外と柔軟にニュアンスを変えられる子だったので。撮っていて面白かったです」と明かした。

続いて授業の中盤では、最新作『箱の中の羊』について深掘りするトークセッションに。是枝作品でしばしば舞台となる「鎌倉」について質問を受けると、「鎌倉になったのはたまたまですよ」と笑う是枝監督。「最初は街を限定せずに制作部に探してもらって。建築家が設計していた自分の家を探してくださいとお願いしたんです。そういうのはけっこう建築雑誌に載っているので。埼玉とか吉祥寺とかいろいろ(ロケハンに)行きましたが、鎌倉はどうですか……となり。最初は、鎌倉で綾瀬さんとなると、どうしても『海街Diary』になってしまうので、どうしようかなと思ったんですけど、行ってみたらもうここしかないかという感じになりました。であるならば、この家を撮りつくそうと。鎌倉という土地もうまく活かせるといいなと思いながら脚本を書きました」と明かした。

また、劇中でヒューマノイドの翔がかぶっていた帽子について「あれはドクターイエローですか? 作品では江ノ電への言及はありましたが、JRへの言及は少なかったように思います。そんな中でイエローの帽子をかぶるというのは何かの意味があるように感じました。そもそもドクターイエローは幸運を運ぶ電車だと言われていますし、何か意図があったのでは?」という指摘も。そのユニークな視点からの質問には是枝監督も思わず笑ってしまいながらも、「あれは単純に翔が黄色が好きというところから選びました。ドクターイエローが幸運を運ぶ色ということですが、そう考えると残酷な話ですね……」と少し考え込むような表情で応じた。

また、大悟の歩く後ろ姿がまるで北野武のようだ、という指摘があった、ということに、「大悟さんはもちろんお芝居も良かったんですけど、ただしゃがんだり、歩いたり、走ったりするところがすごく良くて。踏切のシーンでも、翔を先に歩かせて、後ろからついていくというところがあったんですけど、ちょっと足を引きずりながら歩いていく、その背中が本当に良くて。これはずっと見てられるなと思って。どうやら大悟さんは、武さんにも褒められたことがあるそうで。大悟が歩いているのをずっと撮っていたいと言われたそうです」と振り返った。
『箱の中の羊』
さらに本作は母親が読み聞かせる絵本として『星の王子さま』が登場するが、学生からは、この『星の王子さま』に関連した質問が多く寄せられたという。
そんな中で学生からの「『星の王子さま』は目に見えない大切なものを見る想像力を肯定する物語ですが、この映画では『見たいものを見てしまう危うさ』を描いているように感じた」という鋭い考察を交えた質問が寄せられると、監督は「まさに意識しました」と深く頷いた。「でも最初からクリアに見えていたわけではなく、書いているうちにだんだんとハッキリしてきたところもあって。タイトルも含めて『星の王子さま』も後から来たと思うんです。このタイトルも、母親が読み聞かせる絵本を決めようという時に、ヒューマノイドに理解できない話がいいなと思って『星の王子さま』が思いついた。その流れの中でだんだんとテーマと絡んできたんです。そうやって徐々に作品の向かう先とフォーカスが合っていく感じが、映画づくりの楽しいところですね」と付け加えた。

翔がヒューマノイドのリーダーから「君たちは人間の過去じゃない、未来だよ」と告げられる一方で、音々からは「あなたの過去の産物」と表現されることについて、「人間の手を離れた先にどのような世界が待ち受けているのか」という視点からの質問も寄せられた。
これに対し是枝監督は、「“過去の産物”という言葉も、そのままの意味で捉えてほしいわけではない」と前置きしたうえで、本作で描かれる人間とヒューマノイドの共生や、死者と生者の関係性について「人間が考えているほど、その境界ははっきりしたものではないのではないか」と語った。
さらに、ラストシーンで夫婦が見つめる森の存在にも言及し、「あの場所は、どこかで死後の世界ともつながっている」とコメント。森にはヒューマノイドだけでなく人間の子どもたちも残されており、「いろいろなものが一つになっている場所」と表現した。そして、子どもたちを送り出した夫婦は、自宅の庭に植えた木とともに生きていくことを選ぶが、「その庭の木の向こうに、死者の存在を見ていくという想像力の物語にしました」と作品に込めた思いを明かした。

授業後半には学生との質疑応答が行われ、作品のテーマや創作の背景に迫る質問が相次いだ。
まず、「複雑なテーマを作品として描く際に心掛けていることは何か」という質問に、是枝監督は「答えを出すことよりも、問い続けることが大事」と回答。自身の中に生まれた“もやもや”と向き合いながら考え続けること、そして登場人物の気持ちに寄り添いながら問いを重ねていく姿勢を大切にしていると語った。

また、人間の姿をしたヒューマノイドを登場させた意図についての質問も寄せられた。これに対し是枝監督は、「ヒューマノイドそのものではなく、ヒューマノイドを求めてしまう人間を描いている」と説明。「人間らしさとは何か」という問いについては、「曖昧さをどれだけ愛せるか」と言及し、人間ではない存在が現れたときにこそ、人間らしさについて観客とともに考えたいという思いを明かした。
『箱の中の羊』
さらに、「この作品を通して観客にどのような問いを投げかけたいと思ったか」という質問が寄せられると、是枝監督は「撮影している段階では、大きな問いが明確にあったわけではない」と回答。しかし、作品を完成へと導く過程で、「死者は誰のものなのか」という問いが自身の中で次第に浮かび上がってきたことを明かした。その思いはアフレコ段階でのセリフの変更にも反映されたという。さらに、夫婦が葛藤の末に子どもたちを森へ帰し、自分たちは再び家へ戻ることを選択するラストシーンについて触れ、「それが彼らの選んだ生き方。問いでもあり、ある意味では答えでもある」とコメント。作品を通じて、観客一人ひとりにそれぞれの問いや答えを見つけてほしいという思いを語った。

学生たちは、監督の言葉に熱心に耳を傾けていた。創作の裏側にある思考のプロセスから作品に込めた問いまで、率直な言葉で語られた今回の特別講義。答えを提示するのではなく、観客それぞれに問いを託す――そんな是枝監督の創作哲学に触れた時間は、『箱の中の羊』が投げかけるテーマについて改めて考える貴重な機会となった。

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『箱の中の羊』

大ヒット上映中!

公式サイト:
gaga.ne.jp/hakononakanohitsuji

公式X:
@Hakohitsujifilm

公式instagram:
@Hakohitsujifilm

現代社会やそこに生きる人々を鋭く温かい眼差しで描き作品を作り上げてきた是枝監督が、最新作『箱の中の羊』で選んだ舞台は、“少し先の未来”。息子を亡くした夫婦はヒューマノイドを迎え入れ、再び家族としての時間が動き出します。やがて一家を待ち受ける、想像を超えた<未来>とは。
主演は綾瀬はるかと千鳥の大悟。夫婦を演じます。綾瀬は妻で、建築家の甲本音々(こうもとおとね)。大悟は夫で、工務店の二代目社長、甲本健介(こうもとけんすけ)。そして二人の息子、甲本翔(こうもとかける)、その姿をしたヒューマノイドには桒木里夢(くわきりむ)。200名以上のオーディションから抜擢されました。彼らが織り成す新たな“家族のかたち”に、世界中から期待の眼差しが向けられています。
そして本作は、第79回カンヌ国際映画祭【コンペティション部門】にも正式出品。是枝監督作品がカンヌ国際映画祭で【コンペティション部門】に選出されるのは、2023年の『怪物』以来3年ぶり、8回目の選出(本映画祭への出品自体は10回目)。本作は国内に留まらず、早くも世界184の国と地域で配給が決定しており、NEONの配給が決まっている北米ほか、韓国、タイ、台湾などのアジア各国・地域、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス、スペインなどヨーロッパ諸国、南米や豪州など全世界各国・地域で今後劇場の公開が予定されるなど、国際的な舞台においても期待と勢いが高まっています。

物語・・・
息子を亡くして2年、建築家の音々(おとね)と工務店の二代目社長を務める健介の甲本夫婦は、息子・翔の姿をしたヒューマノイドを迎え入れることになる。
彼が到着した日、「おかえり」と駆け寄り喜びを隠さない音々と、戸惑いを隠せない硬い表情の健介。「パパだよね」と問いかけられた健介は、「おじさんでええよ」と答えるのだった。
少しずつ動き始める家族の時間。静かに広がっていく波紋。ほどなく予期せぬ事態が起こり、夫婦がそれぞれに抱く息子の死への想いが露わになっていくのだった。夫婦とは?家族とは?彼らは大きな決断に迫られる。
そんな中、ヒューマノイド翔は密かにヒューマノイドの仲間たちとつながり始める──。
箱の中の羊

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出演:綾瀬はるか 大悟(千鳥)
桒木里夢 清野菜名 寛一郎
柊木陽太 角田晃広 野呂佳代 星野真里 中島歩
余貴美子 田中泯 
監督・脚本・編集: 是枝裕和
音楽:坂東祐大
製作: フジテレビジョン ギャガ 東宝 AOI Pro.
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:東宝 ギャガ
©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.

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