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トークイベント付き試写会
フランスで若者を中心に異例のヒットを記録したフランス映画『コンセント/同意』(原題:LE CONSENTEMENT)が8月2日(金)より、シネマート新宿ほかにて全国ロードショー公開となります。
上映に先駆けて7月24日に都内某所で、コンセントエデュケーターの森田真帆を迎えてのトークイベント付き試写会が行われ、レポートが到着しました。
フランス中を震撼させたベストセラー・ノンフィクションを完全映画化。
それは当時14歳の少女と、小児性愛者として知られた50歳の有名作家のいびつな関係。
2020年1月、1冊の本が出版されフランス中が騒然となった。『同意』と題されたその著書は、芸術文化勲章まで受賞した有名作家ガブリエル・マツネフと14歳で性的関係を持っていた女性ヴァネッサ・スプリンゴラからの、いわば告発だった。そこに記されていたのは、マツネフが彼女を含む多数の少女たちとの関係を作品の題材として利用した生粋の小児性愛者にも関わらず、その歪んだ行為さえ文学として消費され礼賛すらされてきたという驚くべき実態。
その反響は凄まじく、マツネフの著書を出版してきた老舗のガリマール社を始め多くの出版社が彼の書籍の販売を中止、国からマツネフへ支払われていた文学者手当も打ち切りが決定されるなど、文字通り国中を揺るがす事態に発展した。本作はその衝撃の実話を元に映画化され、公開されるやいなやこちらも大きな話題を呼んだ。
トークイベント付き試写会
日付:7月24日
登壇:コンセントエデュケーター森田真帆
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コンセントエデュケーター:森田真帆解説
14歳の少女ヴァネッサの「同意」が意味するものとは?
『コンセント/同意』というタイトルの本作(フランス語の原題「LE CONSENTEMENT」も同じ意味)。少女ヴァネッサは確かに男との関係に「同意」していた。しかし、その「同意」が何を意味するのか?映画上映後に、映画コラムニストでコンセントエデュケーターの森田真帆さんにトークで解説いただいた。
昨年アメリカでコンセントエデュケーターの資格を取得した森田さん。資格を取得したきっかけについて「息子が大学生だった頃、キャンパスで酔っ払った女子学生に男子学生が同意のない性交をしてしまったというような話を耳にする機会が増えて、親として何ができるのか、子どもたちが自分の身や周りの人たちをどういうふうに守っていけるのか、考えさせられることがあった」と語った。コンセントエデュケーターの役割にについては「学校や職場などで、子どもから大人まで、スポーツ選手や、俳優さん、監督さんや、さまざまな方たちに【コンセント=同意】をどのように取るべきなのかということを導く専門家」だと説明。そして同意について学ぶ前に必要な概念は「境界線=バウンダリー」だという。「自分の中の境界線、自分の体で大事なところ、体で触ってほしくないところや、人にやってほしくないところなど、自分の体と心にちゃんと聞いて、自分の境界線を知ること。これがすごく大事で、腕を触られるのはいいけれど、腕を掴まれるのは嫌だとか、人それぞれ境界線というものがあるんです」
「FRIES」について解説
森田さんはアメリカにおける「同意」の取り方の5つのルール「FRIES」について解説。「FRIESのFはFreelyGiven=自由な意思。プレッシャーや強要もなく、力関係が働くことなく【はい】も【いいえ】も自由に言える環境にあること。二つ目のRはReversible=柔軟な意思変更。【はい】と言っても、いつでも【いいえ】に変えることができる。三つ目IはInformed=情報。相手に正しい情報を与える。四つ目は映画に関わる項目なので最後に説明します。五つ目のSはSpecific=具体的に伝える。注意深く相手の態度を見て曖昧に同意している状態ではないかをきちんと見ること。」
小児性愛者の巧妙な罠にハマった少女。
興奮状態での「同意」は同意ではない
そして、最後に、実は問題となっている四つ目のルールについて本作の事例を当てはめながら次のように語った。「EはEnthusiastic=積極的で情熱的な同意。これをルールの中に入れるのか入れないのか議論となっています。積極的な同意って実はNOだったりすることがあります。この映画を見ていただいたらわかると思いますが、彼が有名な作家で、権威を利用して、正しい判断能力がまだつかない少女ヴァネッサに、彼が甘い言葉で自分を信用させて、大人への憧れを強く抱かせた上で、YESと言わせている。彼女は確かにYESと言っているが、少女の積極性の中に彼がすごく巧みにまいた罠があって、そこに思春期ならではの年上の男性や有名人への憧れがあり、YESと言うけれども、同時に不安もあった。不安があるのに、彼が強引に【大丈夫】と言って、無理やりに同意を取られてしまう。これは同意ではありません。」
こういった事例は日本でも多いという。「例えば、有名な方がSNSなどで14歳、15歳ぐらいの子に【僕はYouTuberで有名人だよ】などとメッセージを送って、言葉巧みに彼女たちの興奮状態を巻き起こす。声をかけられた子は自分は特別なんだと思って言われるがままに行動してしまう。その【同意】は利用された上での同意。これは、最近日本でも耳にする機会がある【グルーミング】です。」
最後に
森田さんは「主人公ヴァネッサは大人になってもずっと消えない傷を抱えている。そういう人を少しでも減らすためにも、子どもの頃から家族や、友人同士で【同意】についてお話をしてもらってて、大人と二人きりになるという空間を作らないようにするとか、私たち大人が少しずつ意識を変えていくことが大切。私は、知識が行動を変えていくと思っているので、この知識が皆さんの行動や周りの人とのコミュニケーションにつながればいいと思っています」と締めくくり、イベントは終了した。
観客によるアンケート結果
映画好きはもちろん、子どもを持つ親に薦めたい作品という回答が目立った。また「一見紳士的で無理強いはしていないが、やはり50歳男性が14歳少女を手懐け、性的搾取をしていたに過ぎない。」「ここまで衝撃作だとは思わなかった。この告発の勇気、少女の叫びを無視することはできない。1人でも多くの大人に観てほしいと思った。」「真綿で首を絞められるように取り込まれていく少女に、この問題の難しさを感じました。」といった感想が寄せられた。
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『コンセント/同意』
原題:LE CONSENTEMENT
英題:CONSENT
8月2日(金)よりシネマート新宿ほかにて全国公開となる。
公式サイト:
@consent/
Instagram:
@klockworxinfo
X:
@klockworxinfo
物語・・・
文学を愛する13歳の少女ヴァネッサは、50歳の有名作家ガブリエル・マツネフと出会う。彼は自身の小児性愛嗜好を隠すことなくスキャンダラスな文学作品に仕立て上げ、既存の道徳や倫理への反逆者として時代の寵児となった著名人だった。やがて14歳になったヴァネッサは彼と<同意>のうえで性的関係を結び、そのいびつな関係にのめり込んでゆく。それが彼女の人生に長く暗い影を落とす、忌むべきものになるとも知らず……。
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監督・脚本:ヴァネッサ・フィロ
脚本協力・原作:ヴァネッサ・スプリンゴラ(『同意』内山奈緒美:訳/中央公論新社刊)
脚本協力:フランソワ・フィロ 撮影:ギヨーム・シフマン
出演:キム・イジュラン、ジャン=ポール・ルーヴ、レティシア・カスタ、エロディ・ブシェーズ
2023年、フランス、ベルギー、フランス語、118分、シネマスコープ、5.1ch、字幕翻訳:横井和子
原題:LE CONSENTEMENT(英題:CONSENT)、R15+、配給:クロックワークス
© 2023 MOANA FILMS – WINDY PRODUCTION – PANACHE PRODUCTIONS – LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE – FRANCE 2 CINEMA – LES FILMS DU MONSIEUR
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