映画情報どっとこむ ralph ミニシアター、映画好きのためのオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」では毎回様々なゲストをお迎えして映画、映画館にまつわる様々なお話をしていただいております。

今回のゲストは、『偶然と想像』(濱口竜介監督)、『春原さんのうた』(杉田協士監督)、『三度目の、正直』(野原位監督/北川喜雄・飯岡幸子共同撮影)など話題作の撮影カメラマンとして携わり作品、監督を支える飯岡幸子をゲストに迎えての対談が行われました。
『偶然と想像』飯岡カメラマン×北條支配人(ユーロスペース)対談
ミニシアタークラブ対談 飯岡幸子(カメラマン)×北條誠人(ユーロスペース支配人)
取材実施日:2021年12月2日(木)
場所:ユーロスペース事務所
対談動画は、ミニシアタークラブに入会後、閲覧可能です。
https://basic.motion-gallery.net/community/minitheater/

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対談レポート

−映画制作についてのスタートは映画美学校からですね
飯岡「そうですね。映画美学校の1期生で佐藤真さんに教わりました。」
北條「その前は何を学ばれてたんですか?」
飯岡「大学でプロダクトデザインを学んでいました。」
北條「その時から撮影カメラマン志望だったんですか?」
飯岡「いえ、全然。ただ映画を撮りたいなとぼやっとした感じで(笑)。映画美学校は知らないことだらけでしたけど楽しかったですね。」
北條「もしかしたら佐藤さんは、それまで書き物はしていたけど、人を集めてものづくりを教えるというのは初めてだったかもしれませんね?」
飯岡「もしかしたらそうだったのかもしれません。佐藤さんはフィクション、ドキュメンタリーと分けずに映画について考える講座にしようとされていて、その時の講師は、佐藤さんの他に是枝裕和監督、諏訪敦彦監督、というとても贅沢な環境でした。」
北條「その後に東京藝大の大学院に進まれてますね?その時はカメラマンコースですか?」
飯岡「そうですね。自分が監督をやって誰かにカメラを回してもらうというのが全く想像できなかったので。やっぱりカメラを回していたいと思って。」
『偶然と想像』飯岡カメラマン×北條支配人(ユーロスペース)対談

−濱口竜介監督との出会い、『偶然と想像』について
『偶然と想像』
飯岡「濱口監督とは藝大で年次が1学年違いで、実習とかで一緒になったりしてました。その後、『親密さ』や『ハッピーアワー』や東北の『うたうひと』とかをお手伝いしてたりしました。
北條「『偶然と想像』ではどのようにオファーが来たんですか?」
飯岡「メールをいただきました。短編を撮りたいという。それからお茶をしてお話を聞いてから、ではよろしくお願いします、という感じです。小さい撮影チームで時間をかけて撮りたいということでした。そしてそれを3つ作って1つの映画にしたいと。完成した後どうなるかという予定は何も決まってなかったと思います。」
北條「今回は、照明部がなかったと聞いたんですが。」
飯岡「はい。一般的なことは分からないんですが、時間をかけて少人数でやるという中で、リハーサルをたくさんして、撮影現場でもリハーサルをすごくした後に通して撮影をするので、カットごとに画のために照明をいろいろ調整するというのは考えにくい撮り方でしたね。今、思い返すと。」
北條「何か今回の撮影で気をつけたことはありますか?」
飯岡「気をつけたこと。。。うーん、そうですね。。。私たちスタッフが入らない状態で一週間とかリハーサルをして、さらに撮影の現場でもリハーサルがあって、その「監督と俳優さんたちが作って来た流れ」があるわけです。
その流れのまま撮れるようにということですかね。俳優さんのお芝居ができてから「じゃあ撮りましょう!」という感じで。段取りやスタンドインが入っての打ち合わせとかも全くないです。そんな感じなので、確かにスタッフが大勢いたらそうゆう撮り方は難しいですよね。そうゆうことを監督は試したんじゃないですね。」

−『春原さんのうた』について
poster_『春原さんのうた』
北條「『春原さんのうた』杉田監督の現場はどうゆう現場でしたか?」
飯岡「俳優さんのことでいうと脚本があってそれのためにキャスティングをするというよりも、もともと杉田監督のお知り合いから始まっていて、その人のために役が出来る、という順番でした。
ロケハンもこの脚本で撮るためにその場所を探すんじゃなくて、この場所を撮りたいからそこでシーンが出来る、という順番なんですね。」
北條「リアリティが自然と醸し出されてくる感じですかね。」
飯岡「それはあると思います。」
北條「作られた場所に行ってということではなくてこうゆう物語をやってみよう、というようなテイストですかね。自然体な。今回はスタンダードサイズですか?」
飯岡「そうです。スタンダードサイズです。撮影は、安心できる家、場所に週末とかに集まって撮る、そんな感じでした。感覚的には。いわゆる「現場ぽい」感じはなかったですね。まずは現場に集合して、「じゃあ、ご飯食べようか?」という感じで(笑)そんな雰囲気です。」
北條「飯岡さん世代の周りは、特にインディペンデントの作品の作り方が変わってきている気がします。フレキシブルな作り方に。映画そのものの存在とか役者さんと映画の関係を、ゆっくり考えながら作るという作り手が、世に出てきていると思います。そうゆう意味ではデジタルではできるけど(ゆっくり独自のペースで撮影する)、フィルム撮影だとそうゆうことはなかなか許されないですもんね。もちろんフィルム撮影の良さはあるしそうゆうものはきちんと残した方がいいと思いますけど。みなさん、‘私の語法’を持ってる人たちですよね。飯岡さんが今一緒に仕事をされている人たちは。」
飯岡「本当にそうですね。<自分のことをしている人たち、試みている人たち>ですね。それを手伝わせていただいているという感じです。」
北條「少し上の世代に遡っていくとカメラマンの近藤龍人さんが熊切監督と一緒やられていて撮影上手いなと思いました。『海炭市叙景』とか。作品を撮るごとにどんどん高みに上がっていって、そうゆうのを追っかけていくのは映画を上映する劇場の立場としては楽しいです。ちなみに監督とのコミュニケーションはどうされてますか?撮影プランとか。」
飯岡「そうですね。。こうゆう画を撮りたい!というのが私自身あまりなくて、現場に入ってなにかこうシーンが起きたら、今起きたことを撮るんですね、という感じで。現場で監督がこんなシーンを撮りたいです、となったらいいところにカメラを置くという感じですね。」

―今後の展望などありましたら
飯岡「ないです(笑)」
北條「ありがとうございました。(笑)」

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<撮影カメラマン・飯岡幸子/いいおか・ゆきこプロファイル>

映画美学校にて佐藤真(さとうまこと)氏に師事、映像制作を始める。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。監督作品に『オイディプス王/ク・ナウカ』(2000年)、『ヒノサト』(2002年)。『偶然と想像』は、撮影監督の創造性に捧げられる映画祭である第42回マナキ・ブラザーズ国際撮影監督映画祭コンペティション部門に選出された。ほか撮影作品に『春原さんのうた』(2021年/杉田協士監督/第32回マルセイユ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門グランプリほか3冠受賞)、『ひかりの歌』(2017年/杉田協士監督)、『三度目の、正直』(2022年/野原位監督 北川喜雄・飯岡幸子共同撮影)など。

<作品情報>

『偶然と想像』12/17(金) Bunkamuraル・シネマほかロードショー
第71回ベルリン国際映画祭審査員グランプリ受賞 濱口竜介監督最新作!第1話「魔法(よりもっと不確か)」古川琴音 中島歩 玄理 第2話「扉は開けたままで」渋川清彦 森郁月 甲斐翔真 第3話「もう一度」占部房子 河井青葉

『春原さんのうた』2022年1月8日よりポレポレ東中野ほかロードショー
マルセイユ国際映画祭グランプリ、俳優賞、観客賞受賞/マンハイム=ハイデルベルク国際映画祭ファスビンダー賞特別賞受賞/サン・セバスティアン、ニューヨーク、釜山、東京フィルメックス、ウィーン、サンパウロ国際映画祭正式出品。原作短歌:東直子/脚本・監督:杉田協士/主演:荒木知佳

『三度目の、正直』
2022年1月下旬よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開!第34回東京国際映画祭コンペティション部門正式出品 黒沢清監督『スパイの妻』(20)、濱口竜介監督『ハッピーアワー』(15)の共同脚本、野原位が監督を務めた劇場デビュー作!

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