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『恋は光』トークイベント

秋★枝氏による同名人気コミックを、神尾楓珠主演、西野七瀬ヒロインで映画化した『恋は光』が全国公開中です。

絶賛公開中の本作ですが、都内劇場にて上映後に小林啓一監督と映画解説者の中井圭氏によるトークショー実施しました。
恋は光イベント
映画『恋は光』トークイベント
日程:7月30日(土)
会場:角川シネマ有楽町
登壇:小林啓一監督、中井圭(映画解説者)

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小林啓一監督、中井圭登壇

この日のトークテーマとして、小林監督と中井氏が掲げたテーマは、「『恋は光』は、誰しもが正しく語れるが、誰しもが正しく語れないものである」。何となく作品の魅力を語れるが、実は本質をとらえるのが難しい作品でもある本作。非常に共感性が高く多くのリピーターを生んでいるが、何故この作品がこれほどまでに観客を惹きつけているのかを探っていった。

まず中井氏から「漫画原作の映画化作品の中で、ここまで上手くいっている作品はないのではというくらい、この作品は上手くいっていると思います。ただ原作を読んだ方々は驚かれる部分もあるのかなと思っています。結構変えていますよね。でも空気感は変わらないイメージでした」。脚色について聞かれると、小林監督は「7巻あるのを2時間の映画に落とし込むには、圧縮して凝縮するような形にしないと原作の雰囲気は作れないと思いました。原作の中で印象的なパートをつまんでいってより強調する形で映画に落とし込んでいくと同時に、それと同じくらいの濃度のものを新しく入れて変えてみたりという作業をしました」と脚本作りを振り返った。原作と結末の違いについて聞かれると、「7巻を圧縮できても、説明しきれない部分がでてきます。ラストだけを説明するためだけの映画にしてしまうと盛り上がりに欠けてしまします。あとは、アナザーストーリー、別世界線のような形で、北代が幸せになってほしいという想いがあって作りました」とラストに込めた想いを語る。中井氏は「漫画原作を映画化するときに、全く同じように作る必要はないと思っていて、どういう解釈をもって作っていくのかということが大事だと思っているのですが、今回結末が変わっているということは、僕はある意味“成仏”だと思っていて、原作を読んだ僕の気持ちはかなり“成仏”された気がします」と映画オリジナルのラストについて称賛した。

さらに中井氏はこの作品の魅力について、「『この世界にいたい』『この世界にずっと身を浸していたい』とTwitterでも多くの声があがっていて、何回もご覧いただいている方々は僕も含めて〈この世界中毒〉だと思うんです。そう思わせる理由は、〈軽妙さ〉と〈誠実さ〉がものすごくバランスよく並存しているというのが、この作品の大きな魅力だと感じています」と話すと、小林監督からは「台詞のリズムは工夫しました。森繁久彌さんが言っていたように、『歌は語るように、台詞は歌うように』というのをベースにしています。現場でもキャストたちにはそれを伝えていて、それを体現してくれました。台本って大体1頁1分なんですが、計算すると130分くらいになってしまうです。初めから想定していたので、これを1頁40秒くらいでやろうと計算してやっていました」と軽妙な会話劇が作られた裏話を披露。中井氏からは「近年ファスト映画や倍速視聴みたいなものが多い中、この映画を倍速で観たらよく分からないというか、魅力が何も伝わらないですよね。作品におけるリズムのコントロール、テンポのコントロールが非常に上手く効いているなと思いました」。

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〈誠実さ〉に関して

〈この世界中毒〉のもうひとつの軸となっている〈誠実さ〉に関して監督は、「それは西条のキャラクターによるところが大きいと思います。西条の性格なんですが、原作だと一見ちょっとふらついたり誠実さが見えきれないところがありますが、それをそのまま映画に落とし込んでしまうと、ただフラフラした嫌な男に見えてしまう可能性があったので、芯が通っていて誠実、そして真面目に恋を考えている男の子と分かりやすくしました」と西条のキャラクター設定を語ると、中井氏からも「一方で、北代も東雲も宿木も、それぞれの立ち場ですごく誠実な振る舞いをしているキャラクターだったと思います。誰かが誠実だからこの世界が保たれているということよりは、全体が誠実さを保っているからこの作品世界がすごく居心地がよくなっているのではと思います」と各キャラクターの誠実さがこの作品の魅力に繋がっていることを分析。
さらに中井氏より、「この作品は恋を定義するというお話なので恋愛物語としての構造もありますが、一方で成長物語として描かれているということもポイントだと思っています」とあると、小林監督からは「皆さんそれぞれ成長はしていますが、一番宿木が一般的な目線で成長しています。宿木は冒頭とラストで『恋ってこんなもんでしょ?』と思っていたものが、『ちゃんと恋したいな』という風に刺激を受けて新たな道を歩み始めます。『ちょっと恋してみたくなった』というのがこの映画のテーマでもあります」。
さらに成長物語に関して中井氏から「西条が東雲に宛てて自分の想いをノートに書きますよね。最初は子供用の交換日記に書こうとするけど、思い立って新しい大学ノートに書くという行動をとっている。西条が自分の意思で決定するということ、その決意みたいなものが、子供用の交換日記ではなく、大人用の大学ノートで書いた、と僕は感じたのですが」と質問されると、小林監督は「まさにその通りで、『敢えて子供用』という台詞を前のシーンで入れています。そこから予備の子供用交換日記を使うことを止め、ちゃんと自分の想いを存分に書ける大人な大学ノートを使用しています」とキャラクターの細かな設定を披露した。

そして中井氏より「もちろん可愛らしいとか居心地が良いみたいなことは当然あると思いますが、この作品の魅力とは、失われたコミュニケーションへの信頼性みたいなものがこの作品全体を包んでいるとことが、現代批評になっていると思います。特に最近SNSでもそうですが世の中をみても、極論を言いがちになっている、自分の話しかしない、人の話を聞かないという状況の中で、この作品はみんな人の話を聞く人ばかりで構成されているというのがすごく重要なことではないかと思います。この作品では、同じひとりの男性を好きになり競い合いながらも、パジャマパーティーを一緒にしたり、連帯していきます。そのあたりが、恋の話でありながら、コミュニケーションの話にもなっていると思いました」と批評的観点からの感想が述べられると、小林監督も「原作がもともとそういう感じだったので、僕もそこに魅力を感じました」と同意した。
さらに中井氏より「映画は常に社会性を前提とする必要性はないと思っていますが、いい映画というのは結果的に社会性がたちのぼってくると思います。なぜこれだけ多くの方がリピートしてこの作品を観るのか。今私たちが内心で感じているコミュニケーションの問題などがこの世界の中で、丁寧に描かれ、しかも登場人物が迷いながら答えをすぐに出さないというところが、ひとつポイントなのかなと思いました。それから、この映画は〈文系アクション映画〉だと思います。というのは、冒頭の西条と東雲のやり取りは〈書く〉と〈読む〉で始まり、ラストも〈書く〉と〈読む〉で終わっている。よくある青春映画って、泣く、叫ぶ、走るっていうのが基本原則になっていると思いますが、そこにいかなくても物語れるんだということ、書いた内容を映像化しなくとも静的にアクションが撮られてるという部分がこの作品の魅力だと思います。北代と西条に関しては、〈話す〉から始まり〈話す〉で終わるように、宿木から始まって宿木で終わるように、またShe&Himの曲で始まりShe&Himの曲で終わるように、始めと終わりの閉じ方がすごく理路整然と作られているなと感じました」と、この作品が持つ魅力の分析が次々に繰り広げられた。

最後に小林監督より「まだまだ上映は続きますので、是非また観に来ていただければと思います」とメッセージが送られた。

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映画『恋は光』

公式サイト:
@koihahikari/

Twitter:
@koihahikarimv

Instagram:
@koihahikarimv

#恋は光 #こいひか
映画『恋は光』
ストーリー
“恋の光が視える”
その特異体質ゆえに恋を遠ざけていた男が、ついに恋を知る―!?
“恋する女性が光って視える”特異な体質を持つ大学生・西条。恋愛とは無縁の学生生活を送っていたある日、「恋というものを知りたい」と言う文学少女・東雲と出会い一目惚れ、“恋の定義”を語り合う交換日記を始めることに。そんな2人の様子は、西条にずっと片想いをしている幼なじみの北代の心をざわつかせる。さらに、他人の恋人を略奪してばかりの宿木は、西条を北代の彼氏と勘違いし、猛アプローチを開始。いつの間にか4人で”恋とはなんぞや?”を考えはじめ、やがて不思議な四角関係に…。
『恋は光』ポスター

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神尾楓珠
西野七瀬
平祐奈 馬場ふみか
伊東蒼 宮下咲 花岡咲 森日菜美 山田愛奈 田中壮太郎

脚本・監督:小林啓一
原作:秋★枝「恋は光」(集英社ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ刊)
音楽:野村卓史 
劇中歌:She & Him 「Sentimental Heart」(Merge Records/Bank Robber Music)
エグゼクティブプロデューサー:小西啓介  コー・エグゼクティブプロデューサー:堀内大示
プロデューサー:滝田和人 青木真代 松嶋翔  共同プロデューサー:岡本圭三  協力プロデューサー:大杉真美
撮影:野村昌平  録音:日高成幸  プロダクションデザイナー:竹渕絢子 齋藤しおり  装飾:田中悠希  持ち道具・絵画制作:市川知美  衣裳:阿部公美  ヘアメイク:夏海  VFXスーパーバイザー:桑本祥一  助監督:中田博之  
音楽プロデューサー:和田亨 キャスティングディレクター:杉野剛  
制作プロダクション:グラスホッパー/NeedyGreedy  
製作:映画「恋は光」製作委員会 製作幹事:ハピネットファントム・スタジオ  
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ/KADOKAWA
©秋★枝/集英社・2022 映画「恋は光」製作委員会
2021年/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/111分

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