映画情報どっとこむ ralph 8 月 19 日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開となります映画『草原に黄色い花を見つける』。

監督のヴィクター・ヴーが公開に先駆け来日し、ベトナム大使館にて来日記者会見を行いました。

本作は、1980 年代後半、ベトナム中南部の貧しい村に生きる、兄弟と幼馴染みの少女との淡い初恋物語。

ベトナムの人気作家グエン・ニャット・アインのベストセラー小説の映画化。
緑豊かなフーイエン省の自然を背景に、初恋の悩みや嫉妬、別れの痛み、そ して少年から大人になる瞬間を詩情あふれる映像で表現。急成長を遂げるベトナム映画界はジャンルムービー全盛。エモーショナ ルな情感にあふれる人間ドラマである本作の大ヒットは社会現象となりました。

日付:7月31日
会場:ベトナム大使館
登壇:ヴィクター・ヴー監督、落合賢監督

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記者会見でのヴィクター監督のコメントは

<『草原に黄色い花を見つける』を作るに至った経緯>
この作品は自分にとって 11 作目の映画になります。今までは商業映画、ロマンチックコメディやアクション、スリラー、ホラー といった映画を作っていました。 実際にはこの『草原に黄色い花を見つける』を作り始める数年前に、このお話がきたんですが受けなかったんです。自分でも準備 ができていないと思っていました。しばらくして、別のプロデューサーから脚本を渡され、原作も読みたくなって読んでみたんで す。そうしたら自分でもびっくりしたんですけど、とてもエモーショナルで感情に富んだ作品で、心を打たれたんです。 自分はアメリカで、この映画の舞台であるベトナムとは全く別のところで生まれ育ちました。ですけれどもここで描かれているお 話は、二人の兄弟の愛を語っておりまして、兄弟の関係というのは自分にとって非常に訴えるものがありました。それは自分にも 弟がおりまして、自分たちが味わった葛藤というものも思い出しましたし、自分でも弟に対していかに意地悪だったかというのを 思い出したりもしました。大人になってなんであんなことをしたのかと思うわけですけど、自分は子供でしたし、無垢で無邪気で、 感情をコントロールすることもできなかったんです。それがよみがえってきた。自分にとってはこの物語は兄弟の愛が中心で、い ろんなチャレンジをしながら少しづつ大人になっていく物語だと思っています。

<アメリカで生まれ育ち、なぜベトナムで映画を撮るようになったのか?>
僕はアメリカで生まれ育ち、アメリカで映画づくりを勉強していましたが、自分たちのルーツであるベトナムの文化というものに 興味を持っていました。でもアメリカでベトナムについて知ることができるのは歴史の本、映画で描かれる話、ほとんどはベトナ ム戦争に関するものですが。それから両親から聞く話など非常に限られていました。ベトナム人が味わう体験を語りたいとずっと 思っていたんです。1 作目 2 作目はアメリカで、3 作目でベトナムで撮影することができました。実際にベトナムで撮影をしてい るなかで、そこに歴史の本や戦争からは語られなかったベトナムの人々の情熱、熱さ、生き方や暮らしについてより強いつながり を感じたんです。自分が心のつながりを感じないとキャラクターを描けないので自分にとってはベトナムで映画を撮るというのは 自然な流れでした。

<ベトナム映画市場における『草原に黄色い花を見つける』の立ち位置>
今のベトナム映画の市場は急成長を遂げています。僕がベトナムで映画を作り始めたころからは、公開される映画の数も劇場の数 も全く異なるマーケットといえるくらい違います。出資者やプロデューサーもどんどん生まれました。しかし良い面と悪い面があ り、みんな成功の方式ばかりに気が行っているということもあります。脚本の中身やストーリーの大切さが忘れられがちなんです。 この作品では経済的な成功は考えていませんでした。プロデューサー陣も今回は特別な作品ということで、ヒットすることよりも ベトナム人にとって情感に訴える重要な何かを作りたかった。このヒットは私たちにとってもショックでした。スターが出ている とか、かっこいいとかモダンだとかではなくて、物語自体が人の心に訴えることができることによってヒットしたということがと てもうれしく思っています。社会的に文化的に意義のあるものを作ることの大切さを感じています。

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この日は、日本人で初めてベトナム映画を監督し、ベトナムでも大ヒットした『サイゴンボディーガード』 (8 月 5 日よりシネマカリテにて公開)の落合賢監督とヴィクター監督の対談も実現。

落合監督:ベトナムにいたときからトップ監督して噂はかねがね。草原に黄色い花を見つける ヴィクター・ヴ―監督 来日記者会見 “エモーションは万国共通の強さ” 聞いていましたので、まさか東京でお会いできるとは!

と語ると、

ヴィクター監督:『サイゴンボディーガード』を撮られた落 合監督のことはベトナムでも話を聞いていたんですが今回初めてお会いするのでとても楽しみにしていました。

とともに アメリカで映画を学び、ベトナムでの映画製作事情にも詳しい二人の対談は密度の濃いものに。

映画情報どっとこむ ralph 落合監督:まずこの『草原に黄色い花を見つける』を見てノスタルジーを感じました。僕はこの時代のベトナムは知らないし、東京生まれのまったく違う環境だけれども懐かしくとても共感できる作品でした。ヴ―監督は個人的な映画だとおっしゃいましたが、映 画というのは不思議なもので、個人的な作品であればあるほど世界共通であったり文化を問わず共感できる作品になるんじゃない かなと思いました。

ヴィクター監督:ノスタルジーの部分が一番難しかったんです。僕はその時代にベトナムでは暮らしていなかったので。舞台、世代特 有なものというのは確かにあると思うんですけども、この原作を読んだときに強みは“ユニバーサルであること”かなと思ったん ですね。万国共通に訴えるエモーショナルな強さというのがこの原作にあると思いましたので、設定についても本当にたくさんの リサーチをしました。万国共通の強さを離さず持っていることを大切にしたつもりです。ディテールについてもかなりこだわりま した。もしこれを見たベトナムの方から「全然違う!」と言われたくなかったのでかなりナーバスになってリサーチしたんです。 今まではテクニカルに凝ったりひねったりハラハラドキドキしたり、そういった映画を作ってきたんですけど、この映画でシンプ ルに語ることの力強さを学んだ気がします。

落合監督:僕が『サイゴンボディーガード』を作ったときにも製作プロデューサーや配給会社からキャストの注文、アクションシーク エンスを入れたい、コメディにしたいなどたくさんの注文があり、ベトナムの制作事情を垣間見ることができた。この『草原に黄色い花を見つける』は、コマーシャルな作品と一線を画す、ベトナムにおいて文化的な作品で大ヒットし、記録を樹立した作品だと僕は聞いていて、ベトナム映画業界にもたらした文化的効果は非常に大きいのではと思います。ヴ―監督は今後どんな作品をや っていきたいですか?

ヴィクター監督:このような作品を作ることができて幸運だったと思っています。必ずしもベトナムでは芸術作品としてとらえられて いるわけではないんですが、心を揺さぶる感動作品という風にはとらえられていると思っています。こういう作品を作ることがで きたというのは僕にとっても大きな自信になりました。これを撮った後、もっと大きな主題やバラエティに富んだジャンルに挑戦 できるかなと思っています。僕は自分で誇り高いベトナム人だと思っているので、ベトナムにはもっと皆さんにご紹介できること がまだまだあるという思いがあります。

落合監督:アメリカで映画を勉強しているとクラスで日本の映画をよく見るんですね。ヴ―監督は日本の映画で映画製作に影響を受け た作品はありますか?

ヴィクター監督:黒澤明監督です。映画学校で勉強して初めて小津監督や数名の日本の監督も知るようになりましたけれど、自分にと ってヒッチコックと黒澤監督の 2 人が一番影響を受けた映画監督だと思っています。一番感銘が深かったという意味で。黒澤監督 から学んだことは、自分の文化、歴史について映画を作っていいんだということです。それも国内のマーケットだけではなくて世 界のマーケットに向けて語っていいんだということ。世界の映画製作者にとって彼はアイコンだと思います。非常に個人的でパー ソナルで、かつユニバーサルな映画を作った方だと思っています。 落合:正直嬉しさと悲しさと半々あって、やっぱり世界における日本映画って黒澤監督で止まっていると思うんですよ。今の監督 がもっともっと世界にいかなければと思います。ヴィクター監督と切磋琢磨しながら映画を作っていきたいなと思います。

と、イベントを締めました。

映画情報どっとこむ ralph ヴィクター・ヴ―監督プロフィール・・・

1975 年アメリカ・南カリフォルニア州生まれ。ロサンゼルス、ロヨラ・メリーマウント大学で映画制作の学位を取得し、ハリウッ ドで技術者として映画制作に関わる。09 年からは両親の故郷・ベトナムへ拠点を移し、短編映画制作を経て本作を監督。本作がベ トナムで社会現象を巻き起こすヒットなり、ベトナム国内最高賞である金の蓮賞を 2 年連続受賞。人間ドラマからホラー、アクシ ョンまで幅広い作品を手掛けるベトナムの№1 ヒット監督。その活躍はアジアのみならず世界から注目を集めている。

『草原に黄色い花を見つける』
原題:Toi thay hoa vang tren co xanh

物語・・・
ティエウとトゥオンは、いつも一緒に遊んでいる仲の良い兄弟。思春期を迎える 12 才の兄・ティエウは、幼なじみの少女・ ムーンのことが気になっているが、うまく想いを伝えることができない。そんなある日、ムーンが家の不幸からしばらく兄弟の家 に身を寄せることになる。一緒に過ごす時間にティエウの恋心は募るばかり。しかしトゥオンとばかり遊ぶムーンを見て、嫉妬し たティエウは、遂に取返しのつかないことをしてしまって。

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監督:ヴィクター・ヴー
脚本:ヴェエト・リン、ヴィクター・ヴー、ドアン・ニャット・ナム
出演:ティン・ヴィン、チョン・カン、タイン・ミー、マイ・テー・ヒエップ 2015/ベトナム/カラー/103 分
配給:アルゴ・ピクチャーズ
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