映画情報どっとこむ ralph この度、世界の巨匠ホウ・シャオシェン監督を、フランス映画を代表する映画監督のオリヴィエ・アサイヤスが追った伝説のドキュメンタリー映画『HHH:侯孝賢 デジタルリマスター版』が、2021年9月25日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開する運びとなり、初日舞台挨拶が行われました。
『HHH侯孝賢』
劇場トークイベントには映画評論家の宇田川幸洋が登壇し、オリヴィエ・アサイヤス監督より動画メッセージが到着し上映されました。
『HHH:侯孝賢』初日舞台挨拶

『HHH:侯孝賢』初日舞台挨拶

日程:9月25日(土)12:00回
場所:新宿K’s cinema
登壇:宇田川幸洋(うだがわ・こうよう)/映画評論家
動画メッセージ:オリヴィエ・アサイヤス監督

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「これはホウ・シャオシェンとの友情、彼の人間性、本質に迫る作品」

オリヴィエ・アサイヤス監督が「劇場にいる皆、これから観て下さる皆、ありがとうございます。」と挨拶し、動画メッセージの上映がはじまった。「本作は私にとって重要な意味をもつ作品。『イルマ・ヴェップ』の制作後、ホウ・シャオシェンのドキュメンタリーを撮らないかとオファーがあった。ホウ・シャオシェンは映画作家というだけでなく、友人でもあったので、私たちの関係を活かせると思い、この企画に心を惹かれた。」と、制作の経緯について語った。「中華圏で最も偉大な監督であり おそらく映画史に残る巨匠」であったホウ・シャオシェンとアサイヤス監督の出会いは、1984年に遡る。当時、アサイヤス監督は映画誌「カイエ・デュ・シネマ」の批評家として台北を訪れ、ホウ・シャオシェン監督はじめ、エドワード・ヤン、『海辺の一日』の撮影監督クリストファー・ドイル等と出会い、台湾ニューシネマをヨーロッパに紹介した。これをきっかけに友情が芽生え、その後何度も台湾を訪れ、「ホウ・シャオシェンとも親交を深め、本作にもあるように共にカラオケを唄ったり、友人として楽しい時間を過ごした」と、当時を振り返った。そうした友情があったからこそ、本作の制作に際し「彼という人間からどのようなプロセスで作品が生み出されたのか。ひとりの映画作家の存在を様々な角度からとらえるポートレートを撮りたい」と考え、「ひとりのアーティスト、作品全体を捉えるポートレートをめざした。当時、このアプローチでホウ・シャオシェンを撮れるのは台湾にも、世界中どこにも私以外いない」と感じていたという。「無名時代の彼と出会い、その後、友人として芸術論を交わす幸運に恵まれた人間は私以外誰もいなかった。映画についての映画を従来とは異なるアプローチで撮れたのは幸運だった。」とし、ホウ・シャオシェンとの友情があってこその作品が作れたと語った。

そして本作のデジタルリマスター版について「より高いクオリティーの映像と音、より正確でより厳密な字幕に仕上げる」ことができたことで、「新たな作品が出現したと感じている。元のバージョン以上に、私が本来望んでいたことに到達したと言えるかも知れない。今回、一新した自作の発見に心がときめき、修復は非常に有意義だった」と語った。そして「観客の皆にもまるで新作を目にしているような印象を抱かれるのではないか。」と、観客へのメッセージを締めくくった。

「今見ても色あせない、侯孝賢の人間的な魅力が伝わってくる作品」

アサイヤス監督の動画メッセージ上映をご覧になった宇田川幸洋は「批評家でもあるアサイヤス監督らしい、丁寧で鋭いコメント」と感想を述べた。20数年ぶりに映画『HHH:侯孝賢』を観て、「アサイヤス監督も言っていたように、いま観ても色あせない作品で、何よりもホウ・シャオシェン監督のお茶目な人柄がよく伝わってきた」と本作の魅力を語った。
ヨーロッパではアサイヤス監督が台湾ニューシネマを紹介したが、「日本では“台湾ニューシネマ”として一挙に紹介されたわけではなく、ポツポツと台湾映画が入ってきた印象だった。ホウ・シャオシェン監督についてはPFFでリアルタイムに上映されており、『恋恋風塵』で一気に日本でも名前が知れ渡った」と、台湾ニューシネマが日本で紹介された当時を振り返った。
宇田川はホウ・シャオシェン監督との交流の中で感じたのは、「なんといっても小動物のような可愛らしさ」だったという。2015年、『黒衣の刺客』公開で来日した際、「一緒に食事に行ったら、ホウ・シャオシェン監督が枝豆の食べ方がわからず、キョトンとして固まっていた。そういうちょっと小動物みたいな可愛らしさ、お茶目さが魅力。そういう姿は『HHH:侯孝賢』でもよく伝わってくる。是非、人間的な魅力にあふれたホウ・シャオシェン監督を知ってほしい」とホウ・シャオシェン監督、そして本作の魅力について語った。「本作のラストはホウ・シャオシェン監督のカラオケ熱唱で終わるが、実はホウ・シャオシェン監督と一緒にカラオケに行ったことがある」と、宇田川が秘蔵エピソードを披露!「劇中でも歌っているフランク永井はお気に入りのようで、その時も歌ってくれた。ホウ・シャオシェン監督は日本の歌謡曲をよく知っていて、本作のラストで監督が熱唱している、あの意外な選曲に皆驚くと思う。是非劇場に確かめに来てほしい」と締めくくった。

熱気に包まれた会場で登壇者の宇田川、そして動画メッセージを寄せたアサイヤス監督に大きな拍手が送られる中、舞台挨拶は幕を閉じた。

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『HHH:侯孝賢 デジタルリマスター版』

※読み方は「エイチ・エイチ・エイチ ホウシャオシェン」

原題:HHH Portrait de HOU HSIAO-HSIEN

公式HP:hhh-movie.com

世界の巨匠たちに映画監督がインタビューを行う、フランスのTVシリーズ「われらの時代の映画」。

アンドレ・S・ラバルトとジャニーヌ・バザンによるこの伝説的な番組で、台湾ニューシネマをフランスに紹介してきたオリヴィエ・アサイヤス監督が台湾を訪れ、素顔のホウ・シャオシェン監督に迫った。取材当時、ホウ・シャオシェン監督は『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(98)の脚本を執筆中だった。チュウ・ティェンウェン(朱天文)、ウー・ニェンチェン(呉念真)らホウ・シャオシェン監督と共に台湾ニューシネマを牽引した映画人たちへのインタビューを中心に、『童年往事 時の流れ』(85)『冬冬の夏休み』(84)『悲情城市』(89)『戯夢人生』(93)『憂鬱な楽園』(96)の映像と共にホウ・シャオシェン監督とアサイヤス監督が作品にゆかりのある鳳山、九份、金瓜石、平渓、台北をめぐる。ホウ・シャオシェン監督は傍らのアサイヤス監督に、広東省から台湾に移住した家族のこと、少年期の思い出、そして映画に懸ける思い、映画製作のプロセスについて語りかけていく。最後のシーンでカラオケを熱唱するホウ監督の飾らない姿はその選曲とともに必見である。

本作はINA (L’Institut National de l’Audiovisuel)により、オリヴィエ・アサイヤス監督の監修のもと、そしてアンスティチュ・フランセの協力を得て、デジタル修復された。
『HHH侯孝賢』

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◆新宿K’s cinemaトークイベント情報◆

■10/1(金)12:00回『HHH:侯孝賢』上映後
田村志津枝/ノンフィクション作家 ※オンライン登壇

■10/2(土)15:00回『HHH:侯孝賢』上映後
行定勲/映画監督

■10/2(土)17:00回『HHH:侯孝賢』上映後
市山尚三/映画プロデューサー、東京国際映画祭プログラミングディレクター

■10/3(日)15:00回『HHH:侯孝賢』上映後
半野喜弘/音楽家・映画監督

■10/9(土)12:00回『ナイルの娘』上映後
「『ナイルの娘』デジタル修復こぼれ話」
阿部悦明/株式会社IMAGICA エンタテインメントメディアサービス 映像制作部データイメージンググループ カラリスト
中村謙介/株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス アーカイブグループ レストレーションスーパーバイザー

■10/10(日)17:10回『HHH:侯孝賢』上映後
「映画HHHのなかの台湾の風景 —— 町並みから室内まで」
青井哲人/明治大学教授 建築史・建築論

■10/16(土)12:00回『HHH:侯孝賢』上映後
「不易流行ー『HHH』から『侯孝賢の映画講義』へ」
秋山珠子/神奈川大学准教授・「侯孝賢の映画講義」翻訳者
韓燕麗/東京大学教授・映画研究者

■10/17(日)12:00回『HHH:侯孝賢』上映後
「虚/実 ――侯孝賢作品と台湾社会の変化」
明田川聡士/獨協大学専任講師・台湾文学研究者

◆ホウ・シャオシェン&オリヴィエ・アサイヤス監督作品を特別上映◆
新宿K’sシネマにて同時開催!!
『冬冬の夏休み』は本特別上映が日本最終上映となります。詳細は劇場HPをご覧ください。

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監督:オリヴィエ・アサイヤス
撮影監督:エリック・ゴーティエ
編集:マリー・ルクール
出演:ホウ・シャオシェン(侯孝賢)、チュウ・ティェンウェン(朱天文)、ウー・ニェンチェン(呉念真)、チェン・グオフー(陳国富)、ドゥー・ドゥージー(杜篤之)、ガオ・ジエ(高捷)、リン・チャン(林強)
 
(C)TRIGRAM FILMS, All rights reserved
提供:竹書房/オリオフィルムズ 
配給:オリオフィルムズ 
配給・宣伝協力:トラヴィス 
宣伝:大福
フランス・台湾/1997年/DCP/ステレオ/ヴィスタ/92分 
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