映画情報どっとこむ ralph 昨年10月に釜山国際映画祭ニューカレンツ部門に正式出品され、そのセレクションが評価されている大阪アジアン映画祭など国内外で絶賛されている佐藤慶紀監督の問題作「HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話」が、満を持して9/9(土)〜10/6(金)まで新宿K’s cinemaで公開されることが決定。

南カリフォルニア大学を卒業した新進気鋭の佐藤慶紀監督が、10年程前、加害者の死刑を止めようとする被害者遺族がいることを知り、理由を深く考えたいと思い、制作した本作。

宗教と出合い、「犯人を許す」と言いながらも、死刑判決は当然のものと考える元夫と違い、死刑を止めることを考え始める被害者の母の心の動きを丁寧に演じた西山諒さんのオフィシャルインタビューです。

映画情報どっとこむ ralph Q1. この作品との出会いを教えてください。

西山さん:佐藤監督の長編映画1作目の『BAD CHILD』で、念願の銀幕デビューをさせていただきました。日本各地でその映画の上映が続いていた中、佐藤監督から電話をいただいたのでその話かな?と思いましたら「新作の主演をやって下さい」との言葉。
その時、名古屋駅の雑踏の中に居て、最初佐藤監督の声を聞き取るのが大変だったのですが、人生最大のニュースを耳にした途端、全ての音が消え、佐藤監督の声しか聞こえなくなった感覚がありました。

Q2. 初めて脚本を読んだ時の感想は?

西山さん:「ズドーン」です。
心と肩にズドーンと、言い表しようのないモノがのし掛かりました。
読み始めてすぐに入り込み、時に涙を流しながら一気に読み終えた時には、やり場のない悲しさ、苦しさで一杯になりました。
それと同時に、この素晴らしい作品の中で、私が母として生きられる事に心震え、絶対に沢山の方々に観て頂ける映画にしなければ、私が足を引っ張らないようにしなければ、と想いました。

Q3. この役を演じるにあたって、何か役作りはされましたか?

西山さん:台本を初めて読んだ時から疑問点や自分との相違点がほぼ無く、身体に落とし込めたので、役作りは特にしていないです。
役作りをすると、何処かのシーンで嘘臭さが出てしまうとも思ったので、ありのままの自分で体当りするしかないと考えました。
一つ、髪の毛を自分でわざとガチャガチャに切った箇所があります。映画をご覧頂いたらその意図は解って頂けるかも知れません。

Q4. この役の、どのような部分を大事に演じましたか?

西山さん:一人娘への愛情です。
寝ても覚めても抜けないように、撮影がない日も胸のど真ん中に娘を置いて生きていました。

Q5.この役を演じるにあたり、一番難しかったシーン・部分はどのようなところですか?

西山さん:娘の秘密を知った時のシーンです。
その文言は台本には書かれておらず、そのシーンの撮影直前に佐藤監督から伝えられましたが、私が勝手に想像していたモノと違い、佐藤監督が求める世界になかなか行けず苦労しました。

映画情報どっとこむ ralph Q6. 佐藤監督は、どのような監督ですか?

西山さん:ニコニコと。飄々と。飾らず、優しく、面白く、心の大きな方です。
撮影中もそこは全く変わらないのですが、やはり、監督をする方というのは…特に佐藤監督は瞬時に心の奥まで見抜く人…とビリビリ感じ、佐藤監督の前では日常も演技上の嘘も一切通用しない!と腹を括って、お釈迦様の掌で踊らされる孫悟空のつもりで、本音で生きさせていただきました。

Q7. 撮影前、撮影中、監督とはどのような話をされましたか?

西山さん:演技に関しては、私の疑問点を聞いて、答えて頂くくらいでした。
日頃は笑いが起こる楽しい会話を。
一つ気になっていた「どうして今回この役を私にオファーして下さったのですか?」と尋ねたら「こんな大変な役、西山しか受けてくれないと思った。というか、西山さんなら断らないと思った」と言って下さって。それが本当に嬉しくて。俄然私は裸一貫、挑ませていただけました。

Q8. 死刑囚役の荒川泰次郎さんとの共演はいかがでしたか?

西山さん:目力が半端なくて、見たら負けると思いました。
その目は、私に刺さるくらいの光線を出していたり、時には抱擁力のある、私を吸い込む様な瞳になったり。
面会のシーンは全て同じ日に撮影したのですが、目と目で語り、お互いに感じるままに闘わせていただきました。二人ともヘトヘトになりましたが、相手が荒川さんじゃなかったら産まれ得ないシーンとなりました。
顔合わせの時、逢った途端にお母さん役の箱木さんに本当のお母さんみたいに接しているのを見て、私達はそれぞれ気を遣い合う俳優じゃない。『HER MOTHER』という背景を借りた、本当に実在する人物達なんだ、と私の覚悟が決まった感じでした。

Q9. 元夫役の西山由希宏さんとの共演はいかがでしたか?

西山さん:兎に角やりやすかったです。
初めましての瞬間からお互い遠慮なし。
同じ西山という姓もプラスになったのかも知れませんが、驚くほどに他人の感じがしませんでした。
この人の前では嘘は通用しない。本気で遠慮なくぶつからせていただきました。

Q10. 弟役の野沢聡さんとの共演はいかがでしたか?

西山さん:野沢さんの隣はとても居心地が良かったです。
姉弟としての愛情。姉弟だからこその気配り。姉弟にしか分からない怒り。最初からそれらがリアルにあって。今でも野沢さんのことは弟のように思っています。

Q11. フランスのヴズール国際アジア映画祭 インターナショナルコンペティション部門でスペシャルメンションを受賞された、死刑囚の母親役の箱木宏美さんとの共演はいかがでしたか?

西山さん:一番顔を合わせたくない方でした。
勝ち負けじゃないですが、この方には勝ち目はない。数少ないシーンでしたが、私は母として気負って気負って挑まなければ心が負けてしまう。私一人だけ”演技をしている人”に映ってしまうと思いました。箱木さんの存在感、リアル感は、私があと100年修行を重ねても取得出来ません。

Q12.海外映画祭での観客の反応はいかがでしたか?

西山さん:上映後のQ&Aで次々に想いや疑問を投げ掛けて下さる。これは本当に嬉しかったです。
私が着いたばかりの夜に開催された釜山国際映画祭のパーティー会場でも、審査員の方がファンタスティック!マーベラス!ファビュラス!と熱く声を掛けて下さって、海外の方の心にもしっかり響く作品だということに安堵と喜びを感じました。

映画情報どっとこむ ralph Q13.読者の方にメッセージをお願いします。

西山さん:観終わった後、決してハッピーな気持ちになる映画ではないですが、観て頂くと色々、本当に色々と考えて頂けます。
「自分がもし誰々の立場になったら…」
自分のこと、自分の大切な人のこと、辛い想いをしている人のこと、色んな心を想って、その先考え続けて頂ける映画です。
是非ご鑑賞下り、新たな一歩を踏み出して頂けたら幸せです。

物語・・・

『娘を殺害した加害者の死刑を止めようとする母。一体なぜ…』

43歳のビジネスウーマン・晴美(西山諒)。
2年前に一人娘のみちよ(岩井七世)が嫁ぎ、現在は夫(西山由希宏)と二人で平凡に暮らしている。そんなある日、みちよが婿の孝司(荒川泰次郎)に殺されてしまう。

孝司は死刑判決を受ける。
当初は死刑判決を当然の事と考えていた晴美だが、ある時から孝司の死刑を止めようと考え始める。そこには、晴美しか知らないみちよのある秘密があった。

公式サイト:hermother-movie.com
Twitter: @mothermovie66

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西山諒  西山由希宏  荒川泰次郎  岩井七世  野沢聡
箱木宏美 木引優子 西田麻耶

●監督・脚本・編集:佐藤慶紀
●撮影:喜多村朋充 
●音楽:ベンジャミン・ベドゥサック 
●制作:カロリーネ・クラツキー
●メイク:桐山雄輔 
衣装:市岡昌顕
●制作プロダクション:Aerial Films  
●配給・宣伝:渋谷プロダクション
●製作:『HER MOTHER』製作委員会(Aerial Films・ラフター・渋谷プロダクション)
2016/95min/DCP/カラー/ステレオ  
©『HER MOTHER』製作委員会

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